表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
88/88

88話 奏でる楓

 あれから何ヶ月か経ったけれど、辰弥くんから連絡とかはないとしても、この静けさというのはどうも落ち着かなかった。牛倉さんと美麗さんでトランプしようとしたら、鈴翔くんが慌てて来て、牛倉さんは鈴翔くんと一緒に行ってしまう。義臣はまた今度だねと美麗さんは言っていた。

 そしたら一番最年少の亀須兎ちゃんがやりたいと言い出して、ババ抜きで遊んでいる。


 今も思うことがあった。霊とこうして遊んでいる自分が、思ってもみなかったことだったから。想兄たちに会えたらどんなに嬉しいんだろうと少し気持ちが揺らぐ。

 なぜならその一線を越えさせないように、獣柱さんたちがいるような感じだ。


 結局私が勝ってしまって、負けたと悔しそうにしている兎ちゃんがいて、もう一回やろうかと伝えようとしたら、二人が険しい顔をして、外の方を見始める。


「兎、行ける?」

「うん。姫ちゃん、またやろう」


 兎ちゃんは一瞬でいなくなり、黒い物体が現れたのかなと思ってしまった。


「予定より早く動き出したようね。一応、龍桜家の結界が貼られてあるから大丈夫だとは思うの」

「爽を呼んどいたほうがいいですか?」

「平気よ。ただりよたちが不在だとわかったから動き出したのかもしれない」

「あの、黒い物体が来てるってことでいいんですよね?」


 美麗さんは少し考えて黒い物体ではないことが、なんとなくわかった。だとすると一体誰がと私も考えていたら、大きな爆発音が近くで響く。

 するとインターホンが鳴って、美麗さんが代わりに見に行ってもらった。鳴り止まないインターホンの音で、外の様子を少し覗いてみようと窓に近づいたら、こんにちはと少年の声が聞こえる。

 恐る恐る振り向くと寅のポシェットをつけている可愛らしい少年が微笑んでた。


「あなたが龍ノ姫で間違いはない?」

「…誰?」

「警戒しなくていいです。僕は想心さんの弟である寅萩奏介とらはぎそうすけ。あなたを迎えに来ました」

「私は行かない」


 告げると奏介くんの後ろに立っているのは、お父さんとお母さん。芽森、行こうとお父さんが手を差し伸べて、ついお父さんの手を掴もうとしたら、美麗さんが傷だらけで戻って来る。


「この化け物」

「化け物はあなたたちじゃありませんか。僕は生きてる人間。あなたたちを祓える術は身についている。また痛い目に遭いたくなかったら引っ込んでもらえませんか?」

「りよたちが留守の間に狙うだなんて卑怯すぎる!」

「君たちの番犬のおかげで迎えに来られた。それだけです。どのみち、あの儀式が整うまで芽森さんを家にいさせてるだけでしょ」


 奏介くんの言葉で言い返せないような表情を出す美麗さん。その間にお父さんが行こうと手を掴んで、家を出てしまう。そこには見たくもない光景を見てしまった。

 ここに残ってくれていた獣柱のみんなが傷だらけで、倒れ込んでいる。本当にこれでいいのと思っていても、車に乗り出発する。


「遅くなってすまなかった」

「お父さん…」

「傷つけたのは僕です。芽森さんのご両親がやったわけではありません。僕はあの人たちが大嫌いです。両親から言われてた。想心さんを迎えに行けば、こうはならなかったって。だからせめて想心さんを育ててくれたご両親と、芽森さんを守ると誓ったんです。すぐに信じてくださいとは言いません。ですがもう時期、一度大きな地震が起きる。防ぎたくても防ぎれないほどの」


 奏介くんはまだ小さいのにこんなに詳しいのはなんでだろうか。どういう教育を受けたらこうなるんだろう。それからと奏介くんが言い出した。


「それから一番上のお兄さん、生きてます」

「えっ…?」


 混乱していると助手席に座っているお母さんが、私に告げた。


「黙っててごめんなさいね。龍桜家に仕える者として伏せていたことがあったの。本当に亡くなったのは、颯楽の双子の弟、凪嬉。凪嬉は想心を受け入れられなくて、叔父さんと一緒に暮らしてたの」

「じゃあ颯楽兄は生きてるの?」

「えぇ。ただ颯楽は今も凪嬉として動いて、獣柱と繋がっているから会わせられない」

「でもよかったっ。生きててくれてたっ」


 颯楽兄が生きててくれてて、本当に嬉しいと涙が出てしまった。凪嬉兄がどんな人かわからなくても、一度は逢いたかったな。


「凪嬉兄はどんな人だったの?」

「颯楽と似てるから判別しづらいだろうけど、颯楽が言ってたの。たまに入れ替わって一緒に過ごしていたそうよ」


 嘘でしょと衝撃な事実で私全然知らずに、凪嬉兄のこと颯楽兄と呼んでいただなんて私馬鹿。もしわかってたら一緒に暮らせていたのかな。


「話は変わりますが、芽森さん。今から行く場所は結界はありません。多少の時間稼ぎにはなりますが、芽森さんの力を必要としている人がいる。その人を助けてください」

「私にできるの?」

「さあ。ただあっちにいる姫君が覚醒したら、芽森さんも覚醒するのは確実です」


 まだ納得していない部分はあるものの、着くまで凪嬉兄の昔話をお母さんから聞いていった。



 冰春を落ち着かせて戻って来たと思えば、美麗たちが傷だらけでいた。何があったんですと起きていた美麗に確認をしたら、寅萩家が芽森さんを連れて行ったと報告を受ける。

 情報になかったことで、想定外のことが起きるとは思いもよらなかった。お札は寅のような爪痕が残っていて、結界は破られている。それを知られた以上、あの人たちは黙っちゃいないだろう。


「一度、私だけで行ってきます。おそらく直々に迎えに行くかもしれない。鈴翔が戻って来たら、あっちにいる珺たちもこっちに来るよう伝えてください。義臣はそのまま冰春のそばにいるようにと」

「はい。守りきれず申し訳ありません」

「いいのです。頼みますよ、美麗」


 美麗に伝言を伝え、すぐさま龍桜神社へと訪れると龍に囲まれる。今でも襲いかかって来そうな勢いの中、龍真様が現れた。


「龍真様、申し訳ございません」

「期待していたのですが、やはり弱点を知っているようですね。まあいいでしょう。今は動かなくていいですが、また逃がそうと行動をしたら、違う者に変わっていただきます。いいですね?」


 承知いたしましたと告げた後、戻って構いませんと言われたもので、一度戻ることに。



 到着したのはまさかの思ーちゃんのご自宅で、玄関には思ーちゃんのご両親が待っていてくれた。車から降りてお父さんは駐車場に止めてくるみたい。


「奏介様、お帰りなさいませ。芽森ちゃんもご無事でよかった」

「おそらく両方の魂たちが動き出すだろうから急ぐ」


 さあ早くと言われたから家の中へと入り、ある一室へ案内してもらった。そこには魘されている青年であり、思ーちゃんが青年になったら、こういう姿だったのかなと思ってしまうほどだ。


「僕の兄です。長年と祓い続けていたのはもちろん、呪いを受けてしまった」

「呪い?」

「龍桜家に呪われた。寅萩家は神社も失っている以上、お札で結界も作ることもできないぐらい弱まっている。兄が復活すれば結界ぐらいは作れる」

「えーとつまり、お兄さんが当主だからってことでいい?」


 その通りと言われても私はどうすればいいのだろうか。とにかく奏介くんのお兄さんが寝ているベットのそばにより、手を握る。けれどなにも起きる気配はなく、どうしたらいいのかなと戸惑っていると、声が聞こえた。


〝芽森、聞こえますか?私は龍桜咲と申します。前世の時、あなたは私の娘だったと言えばいいかな。今、寅萩家の子たちといる気配を感じています。いいですか?呪いを解くには、こちら側にいる雫ちゃんと共鳴しなければならない〟


 共鳴と言われても雫ちゃんと一度夢出会ったぐらいだし、どうやって雫ちゃんと接触すればいいのと思っていたら映像が一瞬で流れた。

 雫ちゃん、想兄と一緒にいるんだねと少し焼きもちをしてしまいそうでも、私は想兄が大好きだった想いを思い出す。


 きたと奏介くんが言った同時に、なにこの光と凝視してしまった。想兄のことを想っただけなのにこんな光が出るだなんてびっくりだ。

 光が徐々に消えると奏介くんのお兄さんは落ち着きを見せる。


「まだまだって感じはあるけど、毎日その光を当ててほしい」

「これで呪いは解けるの?」

「書いてはあったけど、本当かどうかは僕もわからない。ただとにかく急いでるから、そばにいてあげて」

「わかったよ」


 返事をするとよろしくと言われ、思ーちゃんのご両親と行こうとするから、待ってくださいと思ーちゃんのご両親に伝える。


「思ーちゃんにお線香、あげてもいいですか?」


 その言葉で思ーちゃんのお父さんはあぁと案内してもらい、お線香を立て目を瞑った。


 思ーちゃん、お元気ですか?こっちは色々ありすぎて、お線香あげるの遅くなってしまってごめんなさい。思ーちゃんが亡くなった理由は、いまだにわかりません。ただ関係してるのだとしたら、そのせいで自殺を考えてしまったんじゃないかと思っています。

 いまあった出来事で、小さな男の子に助けられました。名は寅萩奏介くんと言って、思ーちゃんのご両親は奏介くんのこと、奏介様と呼んでいます。

 もしその光景を見てしまったことで、自殺をしてしまったのなら、間違ってたよ。だって仏壇の周りには、思ーちゃんが好きだった物がたくさんあるってことを伝えておきます。

 だからもしこっちに来れそうな時、お家に帰ってあげてね。きっと思ーちゃんのご両親は、嬉しいと思うから。それから想兄のこと頼みます。


 ゆっくり目を開けて、ありがとうございますと伝えると、こちらこそと言われ、奏介くんのお兄さんの元へ戻った。まだ伝えたいことはいっぱいあったけど、また伝えればいいよね。

 獣柱のみんなは大丈夫かなと思いながらも、苦しそうにしている時、想兄のことを想いながら光を出した。


 いつの間にか寝てしまった私は、目を開けると、奏介くんのお兄さんが上半身を起こして、窓のほうを見ていた。ずっと手を握っていたから、慌てて手を離すとぐっすり眠れたかなと微笑む。

 思ーちゃんに似てるから、なんか照れちゃって目線を合わせられない。


「ありがとう。少しは楽になれたよ、芽森ちゃん」

「いえ。あの」

「僕は寅萩楓とはらぎかえでで、想心の実の兄だよ」


 そう言われて頭が混乱してしまっていると、兄様と飛びつく奏介くんだ。なにがどうなっているのと思っていたら、楓さんは奏介くんを撫でながら言う。


「僕と奏介は実際に血は繋がっていないんだ。奏介は緋土家の子で、優れた能力を持っているから養子として育てている」


 緋土家って確か颯楽兄と仲がよかった人だ。それに楓さんが当主なら、ご両親はいない。だからさっき奏介くんは妙なことを言っていたんだ。両親が言っていたと。つまり颯楽兄さんと仲がよかった人の弟になる。


「それで想心が生まれる前から、弱まっていたから育てることもできなかったんだよ。そこで葉桜さんが手を貸してくれてね」

「そうだったんですね。それでなぜ呪いに?」

「昔から龍桜家と仲が悪いのは知ってるよね?僕は両親に言われた通りに動いていた。だけど思うようにいかなくてね、いつの間にか呪いをかけられてしまった」


 お腹をみせてくれて、左側が紫のような色が出ていた。


「本当に情けないぐらいだよ。それに想心があの魂だということに気づいたのも最近なんだ」

「えっと汀春さんの生まれ変わりが想兄なんでしたっけ?」

「そう。だから早く命を落としてしまった。もっと早く気づけば、まだ想心は生きていた。だけど邪魔させないよう想心はあっちに行ってしまったようなもの。それがなんだか、芽森ちゃんはわかってるよね?」


 はいと告げると楓さんは咳き込んでしまい、背中を摩ってあげる。少し横になったほうがいいんじゃないのかなと思っていると、奏介くんがベッドから降りる。


「芽森ちゃんがわかってくれているのなら話は早い。芽森ちゃんが覚醒をすれば、龍桜家はなにがなんでも儀式を行う。それを防ぐために、僕たちがいるんだ」

「ただ地震はどうするんですか?地震を止めるために」

「そうだけど、人を生贄にしてまでする必要がないと証明されてるんだよ。あれは龍桜家がただ単に昔の行いを守り続けているだけ。やらなくても時期に落ち着く」

 それじゃあ私を龍桜けの人たちにしか関わらせないように、永遠に閉じ込める儀式をするってことなの。世界を守らせるためとか言ってたのにこんなの嫌だよ。

 落ち込んでいると大丈夫と楓さんの手が私の手に触れる。


「大丈夫、そのために凪嬉と約束したんだよ」

「凪嬉兄が?」

「もちろん。本当に凪嬉は正真正銘、兄バカだよ。想心のことや芽森ちゃんのこと話している表情はもう呆れるほどデレデレだった。まさかこんな形で想心を追いかける羽目になるだなんて思わなかったよ。おそらく凪嬉は芽森ちゃんが颯楽しかいないと認識していたから、あんな術で入れ替わったんだと思う」

「お父さんが言ってました。本当は颯楽兄が亡くなるはずだったと。凪嬉兄は私のために入れ替わってくれたんですね」


 そうだと思うよと楓さんは優しく私の頭を撫でてくれる。凪嬉兄に会いたかったなと、あれと涙を拭う。そしたら楓さんが包んでくれて、凪嬉の分まで守らせてねと言われた瞬間、涙が止まらなかった。


 ◆


 兄様は芽森さんを抱きしめては、芽森さんは会いたかった想いを露わにした。しばらくは泣き止まそうとそっと扉を閉めると、到着したらしい松風爽がいる。


「芽森が泣いてるって風龍が言ってて、入っていい?」

「いや、駄目。今兄様が慰めているから、絶対に駄目」


 罰点を手で作って爽は入りたそうにしていたとしても、入ることはしないようだ。どれくらい時間を保てるか予想できないけれど、阻止しなければならない。

 僕が動くと爽が後ろからついて来て、僕の考えを聞くのだろう。


 客室で待機をしている葉桜さん夫婦は、芽森が泣いていることで心を痛まれている。仕方がないことだ。片方は龍桜家に仕えるよう命じられていたのだから。


「どれくらい持つかはわからないけど、あと何時間で両方が動く。そうだとしても僕たちは所詮生身の人間に過ぎない。僕は霊を祓える術はある。葉桜さんと紅葉川さんはどうしますか?あなたたちは僕の望みを叶えてくれたようなもの」


 すぐ答えを出したのは葉桜さんだ。


「私たちは娘のそばにいるつもりだ」


 そして紅葉川さんは


「私たちも残ろう。楓様と奏介様をお守りするのが私たちの役目でもあるからな」


 息子を自殺に追い込んだ僕を守るというのは、こっちも縛りにこだわっているのは目に見えていた。あの時、僕は兄様のお使いで紅葉川さん夫婦と一緒に出かけた。買い物をしていたら、気配を感じて気配がある方へ向けると絶望していた思穏を見た。

 声を掛けたくても友達なのか同じ制服を着た人たちと一緒に行く姿を追いかければ、思穏はまだ生きていた。


 いや、どうだったんだろう。思穏の両親は僕の機嫌を伺っているように接していたし、その一方息子には厳しくしていたのは兄様から聞いてたから。だからいつも仏壇の前にきてはしゃべることができなくて兄様に甘えてる。

 すでに思穏は僕の存在を知っているのだろうかと悩んでいたら、あのーと爽が言い出す。


「俺はどっちもどっちなんですけど、芽森がそばにいてほしいと言われたら、獣柱であろうとも、追い払うつもりです」


 すると芽森の母親が爽を心配する。


「気持ちは嬉しいけれど、危険かもしれないのよ。昔と違って龍真の威力と息子の辰弥くんの威力は」

「わかってます。この目で実際に見たんで。それに俺の両親にも許可は得てます。なので守らせてください」


 爽が葉桜さんに頭を下げていて、風龍使いがこっち側の人間だとしれば、何かしらしてくるはずだ。そこは避けたい部分でもあるけれど、芽森さんを守りたい想いは誰よりも強いこと。


「頭を上げてくれ、爽くん。以前も言ったように、私たちは爽くんを巻き込ませたくなくて、避けるようなことをしてしまった。それが間違いだったと実感している。こちらこそ頼みたい。芽森を守ってやってほしい」

「もちろんです。そのために風龍使いになったんで」


 本当はそれ以外の龍使いもいてくれたほうが好都合なのだが、探すことが不可能だった。もしかするとすでに先手を打たれている可能性も高い。

 とにかく今は、芽森の覚醒を待つしかないかもしれないと思いながら、今後について詳しく話し合っていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ