78話 大きな樹木③
「ダークグレーノ団に入っているわけは、他でもない。ブラックノ団長である濡羽玖朗と取引をしている。我々がカステクライン使いになった時、すぐデステクライン使いに戻れるようにな」
「どうして?カステクライン使いになれば天の世界へと行けるんじゃ?」
俺が質問すると首を横に振って悲しそうな瞳をする結さんだった。叶さんは一度セブラを見て俺に伝える。
「寅萩家は地の神と言われていて、そして龍桜家は天の神とも呼ばれている。龍は空がイメージつくだろう?虎は地をイメージするように、昔から仲が悪かったと言われている」
「そのせいで寅萩家は獄の世界でしか住めない。だから私たちは何度も玖朗に頼んで、ここに滞在しているの。セブラもその一人。カステクライン使いになった瞬間に、玖朗のところへと行く」
「俺のことはいいから」
「照れちゃって。なら早く透過の紅葉を持つ子のところに戻ればいいのに」
結さんが言うとわかったが余計なこと言うなよと圧をかけて、セブラは退散をした。結さんは揶揄い上手なのか、なぜか楽しんでいる。その様子を見ながら叶さんが話を進めた。
「話を進めるが想心の魂は千年前に封印された魂であり、セブラの息子の魂だったそうだ」
魂がそんな長く封印されることがあるのかと衝撃が走るかのようだ。だからセブラはやたらと想心を気にしていた。頭がついていけてる状況じゃないけど、結さんに聞かれる。
「想心に妹がいるのは知ってるわよね?」
「はい」
「妹はね、龍ノ姫の魂であるから、想心は奪われたようなものなの。千年前に起きた出来事によって、想心の魂と妹の魂が共鳴し合ってるから」
「共鳴?」
どういうことだと思っていると、和装本を取り出す叶さんであり、それを見させてもらう。そこに描かれていたものは男に挟まれている女が赤い糸で結ばれている絵だった。
「左がセブラの長男であった汀春、そして右が紅葉川照秋よ。二人はね、実は言うと龍ノ姫のことが好きだった。もちろん、龍ノ姫は二人のことを愛していたと汀春の母君が仰っていたの」
「まさか…嘘だろ…」
「やはり大樹はわかっていたのね。なら話は早いわ。想心をデステクライン使いにしてほしいの」
「だけどそしたら、颯楽もデステクライン使いになってしまうんじゃ」
それはないときっぱり言う叶さんであり、どう言うわけなのかを知る。
「葉桜家は一度もデステクライン使いになったと聞いたことがないからだ。おそらく龍桜家に仕えていた一家でもあるから、デステクライン使いになる確率がゼロなんだろう」
「じゃあつまり、いくら手を汚したとしても、デステクライン使いにはならないってことか…」
「あなたを殺した白装束の人も天の世界に招かれる。それを阻止するために、色々と準備を進めているの。それには想心をこちら側につけさせる必要がある。あの子は人の想いを大事にする子だもの」
想心が幼少期の頃、みけ太に懐いていたのは俺と颯楽のような感じではなく別の意味があって、みけ太のそばにいてくれたのだとしたら…。
離婚の原因は想心に怪我を負わせた理由で、離婚したとも言える。俺が名付けてしまった理由で、二人を傷つけてしまった。
「大樹」
「すみません、俺が」
「あなたが悪いわけじゃないわよ。名を与える意味は、決して悪いことじゃない。あなたがどんな想いで、みけ太という素晴らしい名を与えた?」
その質問にお袋の言葉が蘇る。まだみけ太がお袋の中にいた時だった。お袋は大きくなったお腹に触れて、嬉しそうに話してくれたこと。
〝みけ太、いい名前。みけは三毛猫からとったのね。三毛というのはね、幸運の象徴であり、幸運を招いてくれる。あなたもそう思わない?お兄ちゃんが名付けてくれて嬉しいね〟
お袋も親父も嬉しそうにお腹にいるみけ太に触れ、俺も早く会いたいという想いがあってお腹に触れてた。みけ太がもしこっちに来てしまうことになったらと、結さんと叶さんに告げる。
「叶さん、結さん、名前を変更したい。みけ太は俺が死んだこと伏せてると思うんです」
「わかってるわ。ただ時が来たら兄としてそばにいてあげてちょうだいね」
「はい」
そこからは名をディーグと自分で決め、俺は時が来るまで想心と接触しつつ、そして叶さんはグレイをダークグレーノ団長にした後、結さんと共にブラックノ国に移籍した。
現在……
今頃、みけ太はおそらく真実を聞かされてるころだろうな。みけ太が猫の姿になっていたわけは、グレイに頼んでいたからだ。みけ太を猫にしてほしいと。
グレイは遊び半分でみけ太を猫にしてくれたけれど、怖かったんだ。みけ太がデステクライン使いになってしまう理由が、結局俺が関係してしまうことぐらい。俺がここにいるって知ったら、絶対にみけ太は暴走する。それによって、玖朗は我が物にしようと企んでいることも知ってた。だから
「言ったとしても俺の意志は変わらないのと、葉桜家を憎んでるのは事実だよ」
「何を吹き込まれたのかは知らないけど、僕と涼太郎は真実を知りたいんだよ。大樹の気持ちは尊重するし」
「尊重?余計なお世話なんだよ。何度も、何度も俺は颯楽にあの研究をやめることを言ったのに、お前は言うこと聞かなかったせいで、こっちに来ちまったぐらい分かれよ!デステクライン!闇、ウルフの遠吠え!」
死屍を出し、攻撃を与え、颯楽と涼太郎は死屍を倒していく。教授の兄が今ものうのうと生きているという話は、叶さんたちから聞いてはいない。リヴィソウルで試してみるも、うまくできなかった。
もしだ。叶さんたちはあえて俺の心を壊さないように、兄弟がいると嘘を吐いたのだとしたら、犯人は颯楽なのかもしれないと思ってしまう。
探られないようにこちらに来たのならば、辻褄は合うが、あの時。颯楽の最後の日は何かが起きたのはわかっていた。俺は確かに事故を起こさせたが、怪我を負わせる程度のはずだった。それなのに颯楽の命は尽きた。考えたくもない思考が生まれちまう。
ここで涼太郎殺害の犯人が颯楽だと分かれば、きっと涼太郎はデステクライン使いになるかもな。
俺が出した死屍を倒した颯楽と涼太郎であり、新しい死屍を出そうした時だ。想心たちがいる方角には大きな闇の光が生まれる。
「まさか、想心…?」
そう呟く颯楽だがその表情はなんだと、汗ばむ。なぜなら颯楽の表情は嬉しそうに笑ってやがるんだ。涼太郎は動揺が隠しきれないほど、一歩下がっている。
「おい、なんで笑ってられるんだよ」
質問をすると颯楽は次第にお腹を押さえてくすくすと笑いやがり、姿が変わり果てたんだ。その姿は俺がずっと捜していた人物、白装束。颯楽が本当に白装束なのかと汗が地面に垂れる。
白装束はお面を被っているから颯楽だと認識ができない。
「殺した涼太郎と自ら自害した大樹を排除せよと命じられているんだ。君たちの魂を狩り、想心の元へ行かせてもらう」
「颯、楽?」
「僕は颯楽じゃない。颯楽に殺された者と言えばわかるかな。颯楽は僕より上だった。今頃、僕に成りすまして役目を果たしてるんだろう」
混乱が生じた。確かに俺は颯楽が事故にあった場面を目撃しているし、他の奴らだって目撃している。あの時点で変われるわけがない。じゃあもう一度リヴィソウルを使えば何かがわかるってことなのか。考えていると白装束はあることを言った。
「葉桜家で生まれた息子たちはいくらリヴィソウルで見たとしても、見ることは不可能。なぜなら知られたくはない情報がわかってしまうからね」
「ならなんで今まで颯楽として動いていたんだよ。想心がこのこと知ったらどうなるかわかってるだろ」
「もちろん。ただ想心は赤の他人であり、葉桜家にとって敵だ。それなのに、それなのに、父さんは想心を育てることにした。言い伝えを破ったと同然。僕はその時点であの家を出て、叔父のところで修行をしたんだよ」
俺と涼太郎は目を疑うほど衝撃だった。確かに颯楽は双子だったし、小さい頃はよく遊んでいたのも覚えてる。ただ颯楽の弟はある日突然と姿を消したことで、一時期誘拐されたと思っていたが、颯楽の両親は捜索をするのを取り下げてもらったらしい。
理由はその当初わからなかったけれど、まさか叔父のところにいただなんて思いもしなかった。
「この、こと、教、授、たち、は、知っ、て、るの?」
「知らないと思う。二人なら知ってるはずだよ。僕たちは一卵性だから颯楽が死んだと思い込んでる」
「疑問なんだけど、ならなんで想心のそばにいた?矛盾してる」
「あーそれは涼太郎を殺した日にばったり会って、颯楽にバレちゃったから閉じ込めて、颯楽として過ごしてた。いやぁ、まさか颯楽に成りましたことで、罰が当たったんだと思う」
そこは否定しないのかよと思いながらも、颯楽が生きているなら安心が持てた。このこと早く想心に伝えてあげたいよとデステクラインを起動させる。
「デステクライン!闇、ウルフの噛み癖!」
まだこいつに勝てる気はないが、涼太郎だけでも逃がせればいい。一匹は涼太郎を咥えて背中に乗せ行ってもらった。
「涼太郎を逃したとしても、後で追うことになる」
「そりゃあどうかな。お前の正体を知れたことで、こっちは有利なんだよ!」
死屍を数体出し、颯楽としてやっている凪嬉をここで止められればいいが、簡単じゃない。それに引っかかる部分があった。
それは凪嬉が行方知らずになった理由だ。凪嬉の居場所を把握していたなら、警察に捜索願を出さない。
凪嬉はカステクラインを使いながら軽々と倒すし、今までの凪嬉は全部嘘だってことかよ。あの時、確かに俺は凪嬉のカステクラインにひびを入れたのは確かだ。それなのに見たところカステクラインには傷がついていない。
何がどうなってるんだと考えていたら、結さんと叶さんの気配を感じた。あの二人が来たらおそらく、凪嬉はいなくなりそうな予感だ。なんとしてでも凪嬉を止めて、きっちり話す必要がある。
「なあ凪嬉。なんで颯楽として今もやってんだよ。こっちに来たら本名が先に出るはずだ」
「教える必要はないよ。僕はこれからもこの先も、颯楽として想心のそばにいなくちゃならない」
「ふざけんな!殺人者と一緒にいさせられるかよ!」
死屍を再度、数体出しても凪嬉は、話してくれそうにはない。ここで凪嬉が消えちまったらもう二度と追うことはできないのは確実だ。どうすりゃあいいと思ったその時だった。
「カス、テ、クラ、イン!風、クロ、サギ、の、風、斬!」
涼太郎が戻って来てしまい、ここにいたら危ねえよと思ったが、俺はつい涼太郎の後ろにいるものに目を見張る。それは俺たちが見てきた中で、一番大きい龍の姿だった。龍は凪嬉に向かってなのか威圧感が半端ないほど、俺は足をすくむ。
涼太郎は大きくため息を出しながら、俺の隣に立った。
「や、っぱり、凪嬉、の、仕業、だった、んだ、ね」
「何が?」
「こう、なる、ことを、わか、ってた。想心、の死因、も、何も、かも。全、部、仕込まれた、罠。見、損なっ、たよ、凪嬉」
「涼太郎?」
涼太郎の様子がおかしいと思っていたら、龍が咆哮し出して強風よりもっと強い風に俺は吹き飛ばされることに。おい、俺を飛ばすなと叫びたいところだが、叫ぼうとすると空気が一気に入ってくるから思うように喋ることができない。
いつもおっとりしすぎる涼太郎なのに、今までみたことがなかった涼太郎の姿。一体何があったんだよとどれくらい吹き飛ばされたんやらと、落下しそうになり体勢を立て直して着陸した。
するとまさまのまさかだ。そこには結さんと叶さんがいて、その周りにはシロノ団に囲まれている。
「あら、大樹。もう片付けちゃったのかしら?」
「いえ。というか涼太郎の龍に吹き飛ばされたらここに辿り着いただけなんで。これからどうするんですか?」
「想心と鍵の子がシロノ団に奪われた以上、一度撤退はする。大樹、帰って来い。大樹の弟は保護した」
承知いたしましたと告げ、本当はまだ凪嬉に聞きたいことがあったが、叶さんの命により、俺はダークグレーノ団を抜けることになった。
◆
数分前……
「そうか。指示を出したのに伝えていなかっただなんてな。教えてやろう、寅萩家の歴史を」
数千年前、寅萩家は地の神として地を管理しており、そして天の神とは相性が悪いせいで、天の神は空に地を作ることになった。セブラは責任感が強く、誰にも慕われていたけれど、退屈な日々を過ごしていたある日のこと。
空から降りてきた天の神、龍桜咲の姿を見て、セブラは怒りを出した。なぜなら龍桜咲の姿は髪は乱れ、着物も着崩れをし、怪我を負っていた。
追手が来ると分かりながら、セブラはなんと言われようとも龍桜咲を王宮へと運び、手当を行う。
「…誰がこんな酷いことを」
セブラは手当を終えた龍桜咲が目を覚ますまで、ずっと寄り添っていた。しかし龍桜咲はそのまま熱を出し、何日は起きることもなかったが、数日後、見舞いに部屋へと入ったら部屋は荒らされ、まさかと思った時だ。
箪笥からごんっと大きな音が聞こえ、箪笥を開けたら縮こまって龍桜咲は震えていた。それを見てセブラの怒りが爆発するかのように、大きな地震が起きる。地震を起こしたことで大臣たちから、止めてくださいとセブラに言っている様子が面白く見えたのか、龍桜咲は笑い出したことで、地震は落ち着く。
「よかったっ。てっきり、連れ戻されちゃったのかと思っちゃって」
「何があったのかは、その、まだ聞かない。聞いたら、きっと怒りで地が震えるから」
「わかってる。それにしても、ここは緑の自然が多くあっていいね。私が住む場所は水色と白が多くて。ここにはたくさんの色があって楽しそう」
「そうか。俺は退屈な仕事して、退屈に過ごしてるだけだ。もしよかったら、少し外に出てみる?」
眩しい笑顔を出す龍桜咲を見て、セブラは赤っ恥になりながらも地を案内する。地の民は龍桜咲を受け入れられない人たちも多くいたが、大半の人は龍桜咲を受け入れ、接していた。
しかし悲劇が起きる。
「離して!離して!」
「これ以上、僕の妻と関わらなければ、天罰は与えない。どちらにせよ、君たちは届くはずがないのだからな」
「嫌がってるじゃねえかよ。自由を奪ったあんたはいずれ罰が当たる」
「罰が当たるのは君のほうだ」
二人はばちばちしながら、双方の大臣や兵は慌てる様子だった。龍桜咲とは二度と会うことはできないと思っていたが、普通に歩いていると、龍桜咲が飛んできて、セブラはその下敷きとなる。
「春!春、しっかりして!やだ、どうしよう」
しばらくして意識を取り戻したセブラは、つい龍桜咲に抱きつく。
「春?」
「よかったっ。あれから会えてなかったから、何かあったんじゃないかって」
「ごめんなさい。子育てしてて、会いたくても会いに行けなかったの」
「子供が?」
うんと言うも龍桜咲は寂しそうな瞳をして、セブラに打ち明ける。
「男の子より女の子が欲しかったって言われちゃったの。しかも玖朗の前でよ。本当に最低な父親。それなのに私、逃げてきちゃった…」
「みより、そんな奴放っておけばいい。何か起きたとしても、俺がそばにいるし、守り抜く。だから」
「嬉しい言葉、ありがとう。だけど私には時間がない」
「どう言うことだ?」
そこで明かされる真実を知ったセブラは、それでもなんとしてでも、龍桜咲と玖朗を取り返そうと計画を立てる。
「みよりと玖朗を助ける方法を考えるにしても、どうやって天の地へと行くかだな。あっ秋彦呼んでこい」
大臣にを呼んで来てもらっている間に、どうするべきかを考えていた。いくつか考えていると秋彦、のちに照秋の父親となる人物が入ってくる。
「げっ!春、いい加減にしろって何回言えばいいんだよ」
「別にいいだろ。掃除するのは秋彦なんだしさ」
べしっと叩き、秋彦は呆れながら掃除しつつ、セブラの良き相談相手をしていた。
「天の神に手出すのは御法度って決まってるのに、本気でやる気か?」
「あぁもちろん。あのままだとおそらく、みよりは自殺するに違いない」
「自殺はさせられないんじゃないか?」
「そうだとしても、俺が救わなきゃ、みよりに何かが起きるのは確かだよ」
セブラは恐れていたのはもう一つ存在していたことだ。地の神は虎であり、天の神が龍であること。虎である以上、いくら挑んだとしても、龍桜咲の元へには辿り着けないんじゃないかと。そうしているうちに、みよりは心をもっと痛め、自殺を図ってしまうのではないか。
「なあ、俺が万が一何か起きたらさ、弟妹のこと頼む」
「…自殺行為しに行くな。まだ春にはいてもらわなくちゃ、この地が持たなくなってしまう」
「愛する人を救えないで、何が神だ。俺は俺の意志を進む。愛がありゃあなんとかなるだろ」
にっと笑うセブラだったが、天の地に乗り込む直前、セブラは命を落としたのだった。




