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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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108話 現世大戦争⑧

 芽森ちゃんがいないのは想定内だったけれど、僕は大きな間違いをしていたことに、今更気づくだなんて思いもしなかった。虎は雷龍との繋がりもあるし、虎にとって大好物のを与えてしまうだなんて。

 すでに父さんの白龍が迎えに行っているころだと思うから、僕はここにいる意味がないと判断し、紅葉川家を出た。


 あちこちでは光がぶつかり合っている光景を見つつ、黒龍に乗って龍桜神社へと戻ることにする。本来ならば寅萩家を排除したくとも、あまり時間がない。何度か地震が起きていたからもう時期、邪神様が現れるのは確実だった。

 それを防ぐために芽森ちゃんが必要だって言うのに、寅萩家はわかっちゃいない。この世界を守れるのはただ一人、芽森ちゃんのみだ。


 急いで、黒龍と指示を与えつつ、おそらく龍桜神社は邪人が多くいそうなのはわけがあった。獣柱に長年と仕えていた者、冰春がすでに邪神と連携をとっていると報告を受けている。

 仮に邪人が多くいるということはやはり、龍桜神社の地下よりもっと奥に邪神の祠が存在しているということ。父さんはそこまで教えてはくれなかったけれど、いるとしたらそうなのかもしれない。


 龍の速さで龍桜神社へとすぐ着き、状況を確認しながら、青龍と赤龍が龍桜神社内にいる邪人を倒してくれる。僕が来たことでしばらくは邪人は現れそうにない。

 凪嬉とそしてあっちにいる颯楽、いや入れ替わっていると思っていても、状況を確認した。


「凪嬉、状況は?」

「あっちにいる龍ノ姫が抑えているが、時間の問題だと思う」

「そう。凪嬉は颯楽と一緒に待機を。僕は一度、龍ノ姫に会ってくる」


 龍ノ姫がいるという部屋へと急ぎ、ちょうど李好とばったり会う。てっきり獣柱の役目を果たしているのかと思えばそうじゃないらしい。


「なんでここにいるの?李好の役目はここじゃないはず」

「僕も邪人を祓えるから、待っておりました。ただ鳩柱以外おそらく」

「父さんの言いつけは守らなかったのがいけない。冰春を解放してあげればこうはならなかったはずだよ」


 忠告をした前の獣柱はもういないけど、あの時点で冰春を解放してあげていたら、こんなに被害は起きなかったと思う。まあどのみち、冰春は汀春の魂を待ち続けていた。

 李好は何も言い返せないような顔立ちで、ため息が出てしまうほどでも、龍ノ姫のところへと向かった。


 行ってみると鳩柱、鈴翔が待機をしていて、僕を見つけると会釈をする。入らせてもらうと伝え、部屋の中へと入ると、龍ノ姫が祈りのポーズをしていた。

 ロゼ姫と声をかけると振り向き、ロゼ姫は軽く会釈をする。


「ロゼ姫はこの状況どう感じた?」

「心が痛いです。再び大きな地震が起きてしまえば、現世にいる人たちの魂を失うことになる」

「わかってくれているならいい。問題は芽森ちゃん。こっちに来てくれるって言ってた?」

「会話はしました。ただ天龍寺に向かってるらしいんです。そこで想心を待つって」


 やはりそう来たかと思い、やるしかなさそうだなと、芽森ちゃんに仕掛けていたものを発動させた。今は想心に会わせる資格なんてないんだよと芽森ちゃんが来る前に、ある程度準備をすることにする。


◆


 本当は想ちゃんと一緒に動きたかったけれど、これは私の問題でもあるからと、私の上司である鹿崎星蘭のもとへと歩いていた。私の実家を通り過ぎて、想ちゃん家へと向かう。

 普通に生活している人たちを巻き込みたくはないから、移動してもらわなくちゃな。みよりさんはそばにいなくて大丈夫と聞かれたけれど、遠慮しておいた。想ちゃん家にいるのか不明であっても、他のみんなが想ちゃん家だと思うと言ってくれたから行ってみる。


 想ちゃん家が見えていくと、想ちゃん家を眺めている鹿崎星蘭がいて、私がいることでこっちに顔を向けた。ニヤッと笑う鹿崎星蘭であり、早くこの人の魂を狩りたいと感じてしまう。


「やあ、美命。君から会いに来てくれるとは」

「そういうのいいんで。場所変えません?」


 作り笑いをしながら質問すると構わないよと行ってくれて、場所を変えることに。誰もいない浜辺を選び、鹿崎星蘭は美しいと呟く。

 ここを選んだのは意味があって、ここは一度だけ想ちゃんが連れて来てくれた場所。体調も良くって外出許可が出たとき、海をみたいと言った場所でもある。懐かしいなと思いながらも、鹿崎星蘭の目的を聞き出すことに。


「鹿崎さん、なぜ獣柱だというのに、平然といられるんですか?」


 鹿崎星蘭は海を眺めるのをやめ、こちらを向き、そうだねと再び海のほうを眺め、語る。


◆


 鹿柱に選ばれたときは、昔両親から言われていた通りになったんだと悟った。獣柱に選ばれた者は、二度と生まれ変わることもできず、柱の役目を果たすこと。

 最初は役目を果たそうと弱音を吐かずに、役目をこなしていた時のことだ。冰春に言われた言葉が心を突き動かすことになるとは思いもよらなかった。


「もし獣柱という役目を潰すことができるなら、鹿崎さんはどう感じる?」

「急にどうしたのだ?」

「いや、なんとなくね。ほら、僕はずっと獣柱に忠誠を捧げていた。ただもう限界が近いと思う。この呪縛から解き放たれたいよ。獣柱のみんなも、本当はやりたいことするために生まれ変わりたいはずなのに、掟を一切拒まない。狂ってる。百年経てば、柱の役目は終わり、柱の一部となるんだよ」


 その言葉を聞いて確かにそれぞれ想いは秘めているのは確かなことだ。そうだとしても、他の人にはできないことを成すというのはとても貴重な役目だと思っている。

 ただもう一度生まれ変わることができるならば、もう一度ちゃんと生き、生まれた意味を知りたい。私は貧弱であまり外出をしたことがなかった。

 入退院を繰り返す日々で友達という友達はいなく、同じ病院にいる子と仲良くなるも、その子たちは退院をしていく。憧れだった学校生活も、長くは続かず、気づけば私は十八の歳を過ぎていた。


 ただ唯一、私に会いに来てくれた幼馴染に勇気をもらっていた。幼馴染は楽しそうに話をしていて、幼馴染の笑みが大好きだった。ただ幼馴染には彼氏がいて、想いを告げることはできなかった。

 幼馴染が幸せでいてくれたら十分だと思っていたのに、天の世界へ到着して間もなく、幼馴染は彼氏によって殺害されたという。


「本当なのか?」

「うん。星蘭に紹介した時は違和感はなかったんだけど、私が星蘭の話ばかりするから、苛立っちゃって。それで星蘭が亡くなった数週間後ぐらい、立ち直れなくて怒られちゃった。そんなに好きだったなら、なんで俺を選んだんだって」


 その言葉を聞いて私と幼馴染は両想いだってことを知った。私は長く生きられないと思っていたから、告げなかったのに、もしも告げていたら、幼馴染はまだ生きていたのだろうかと感じてしまった。

 幼馴染は仕方ないよねと言いつつも、まだ生きてたかったなというような瞳をしていた。その瞳を忘れることはなく、幼馴染のように苦しんでいる人たちの相談相手になってあげようと決意した。


 そして美命を選んだわけは、私と似ていると思っていたから、選んだまで。そしてもう一つ、美命の魂は汀春の妻の魂だからシロノ国に来るよう仕向けた。私が選ばなかったらおそらく美命はミズノ国を選択していただろう。


 ◆


 鹿崎さんの言葉を聞いてやっと理解ができ、鹿崎さんに選ばれなかったらきっと私はミズノ王国で暮らしていた。病院で暮らしていたのは同じであっても、私は鹿崎さんがやっていたことは嫌というほど見てきている。

 シロノ国に住んでいる人たち以外、冷たい目だったから。おそらくそういう態度をとってしまう理由はただ一つ。鹿崎さんには持っていないものを、みんなが持っているから羨ましいんだ。


 私も一時期、みんなと一緒がいいと外で遊んでいる子たちと混ぜてもらったことがある。ただ結局、自分を苦しめ外で遊んでいた子たちはそれ以来、見かけなくなっちゃった。

 お母さんは私の前では言わないけれど、丈夫に産んであげられなくてごめんねと責めていたと思う。ただ私は一度もお母さんを憎んだりはしなかったよ。これが私の運命だってわかっていたし、それに想ちゃんや思穏くんに会えてよかったから。私は一人じゃないって思えたことで十分だった。それでもと鹿崎さんを呼び、海を眺めるのをやめこちらに向ける鹿崎さん。


 鹿崎さんはいつも私たちに向ける顔ではなく、冷え切った顔立ちだ。本来の鹿崎さんの顔で、私はカステクラインを起動させようとしたら、そこにアンジくんが現れる。


「あれ?てっきりもう邪人に変わってると思ってたよ。ねえ鹿崎さん、鹿柱の役目は何?」

「麗しい姫君を乗せ、龍宮にお連れする役割。本来ならば龍ノ姫のそばにいなくてはならない」

「そうだけど、やっぱり鹿崎さんに柱の務めはできそうにない」


 アンジくんが言うと絶望した表情をして、なぜですとアンジくんに言うと、アンジくんは邪人を複数出し体を縮こませてこう言った。


「前々から鹿崎さんのことが大嫌いだった。不気味な笑みでいて、しかも僕に好かれようとしている姿に恐怖しかなかった。だから僕は龍ノ王に告げたんだよ。このままいけば姫君は龍宮に入ることができないと。そしたらすんなり聞いてくれて、鹿崎さんを排除するよう命じられた」


 そんなはずがないとアンジくんに言うも、そうだよと一瞬いなくなってどこに行ったのかと思えば、鹿崎さんの目の前にいて、鹿崎さんが刺されている。

 剣を抜いたアンジくんでさよならと言い出すと、鹿崎さんは待ってくれとアンジくんにしがみ掴もうとした。けれど鹿崎さんはみるみると邪人へと変わり果てていく。


「ふう。どうするかは美命ちゃんが決めればいいよ。僕は残りの獣柱の元へ行かなくちゃならないから」

「アンジくん。想ちゃんはこんなこと望んでないよ」

「…わかってる。でも僕を止めることはできない。それから思穏くんのことごめんね」


 アンジくんが行こうとするから、私はついアンジくんの手を掴んでしまう。想ちゃんはアンジくんのこと大切な仲間だとしても、アンジくんはずっと想ちゃんのこと兄として接していたんだと思う。

 想ちゃんが旅立てば、またアンジくんはひとりぼっちになってしまうから。セブラがいたとしても、みよりさんがいたとしても、アンジくんの心が満たされない理由。


 考えていたらアンジくんが私の手を握り、崩れそうな笑みを出し、想心のこと頼むねと告げていなくなってしまった。


 この戦いが終わればアンジくんはどうなってしまうのだろう。無魂として処理をされてしまうのは確実なのかもしれない。邪神と繋がっている以上、もう後戻りはできないんだと感じた。

 

 私に向かって唸り出す鹿崎さんであっても、なぜか鹿崎さんを助けようとは思えない。ここで獣柱の魂を無魂にさせてしまったら、どうなるのか目に見えてる。柱の一人が消滅してしまえば、他の獣柱の人たちがわかってしまい、こっちに来る。

 それがたとえ邪人になってしまった獣柱が全員来ようとも、覚悟はできてるよ。


 想ちゃんのためにやらなくちゃと、深呼吸をしてカステクラインを起動させる。


「カステクライン!光、ハーフの光波!」


 眩い光が放ち、ハーフの音色が鹿崎さんに攻撃を与え、それでも鹿崎さんには効果がないのはわかっていた。ただこの魔法は鹿崎さんが教えてくれた最初の魔法でもある。

 何度か唱えてみるも、鹿崎さんに傷を与えることはできず、やっぱり萩魔法を唱えるしかないと思っていたところ、大きな揺れが起き、今まで味わったことがない揺れだった。


 大きく揺れたことで海岸にも影響が出始め、鹿崎さんが現世の人たちを襲うんじゃないかと恐れる。次大きな揺れが起きたら確実に津波が起きそうだった。

 想ちゃん、あまり時間はないかもしれないよと、カステクラインを起動させる。


「カステクライン!植物、萩の思案!」


 一か八かで鹿崎さんにかけてみると、効果があったようで、鹿崎さんが混乱し始めた。どれくらい保てるかわからないけど、無魂にするための呪文を唱えていく。

 詠唱を唱えるには三人の力が必要。だとしても人手を増やさなかったのは訳があった。鹿柱の部下は鹿崎さんを認めていたとしても、鹿崎さんはそれを望んではいなかったから、連れて来なかった。

 鹿崎さんが選んだ部下は、ほとんど病を患っていた人たちを、好きなように過ごしてほしいという意味が込められている。私も一時期は、好きなことをして、時に鹿崎さんから命じられた任務を果たしてた。ただ想ちゃんが来てから、鹿崎さんのやり方が変わってしまったこと。


 みんなは昔の鹿崎さんに戻ってほしいという気持ちを持っていて、鹿柱の部下として任務をこなしている。だから私はみんなの分まで詠唱をし、無魂にできればアンジくんを止められる。

 あともう少しと詠唱を唱えていたところ、私の部下たちが来てくれて、途中から詠唱を唱え始めてくれた。来なくてよかったのにと思いながらも、詠唱を唱え続けていく。


 これが最後と最後の詠唱を言おうとしたら、鹿崎さんが叫び出してしまい、その叫びに耐え切れず、みんなが倒れてしまった。これはさすがにまずいとみんなを避難させている時間はなく、私は再び鹿崎さんの攻撃を受けてしまうことになった。


 波の音が聞こえ、体が思うように動かず、みんなはと周囲を見渡す。完全にやられたと思っていたけれど、体は無傷だった。何がどうなっているのと体をゆっくり起こし、みんなも起き始めていく。

 まだ鹿崎さんは邪人に支配されていないのと思っていても、起きた時には最悪な光景を見る羽目となった。

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