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19.さよなら。

復興に尽力することさらに数ヶ月。人も建物もある程度増え少しずつかも知れないが着実に発展していることが伺えた。


「おねぇちゃん、外周を覆うお掘について宝物庫に使えるものがあるかも知れないからお兄ちゃん借りて行くよ?」


そう言うとレタは俺の手を引いて外に連れ出す。


「分かったわ。ご主人様もレタの色々と無理なお願いとか聞かないでね。」


「分かってるよ。」


言われんでも分かっとるわい!その辺俺は分別がつく大人なのでレタがやり過ぎないように、しっかりねっとりと見張っておくもん!深い意味は無いよ?


「さすがにレタも朝っぱらからそんなことはしない。もっと暗くなってから人の居ないところでお兄ちゃんとしっぽりするから。」


「はいはい。分かったから取り敢えず行ってきなさい。」


エナに軽くあしらわれたレタは少し不満そうな顔をしながらも開拓地の外周に俺の手を引っ張って連れて行く。


「ここに深い穴を掘りたいんだけど、少ない時間で深く掘れるような何かない?」


うーん?何かあったかな?そう思い俺は道具袋に手を突っ込む。おっ、これなんか良さそうじゃないか。


取り出したそれは、ボタンが付いたシャベルのような物だった。どうやらラベルが付いているみたいだ。


「『掘れないシャベル 〜いいか?掘るんじゃ無い。削るんだ!〜』ドリルってこと?」


俺がシャベルの取手を持ちボタンを押すと、そのシャベルの先端が回りだす。地面に対して使ってみると確かに良く掘れるシャベル?だった。


(このシャベルとか除草剤とか誓約書とかって絶対同じ会社で作ってるでしょ。商品名の付け方とか同じだし。)


シャベルを多めに取り出し、外周の作業員に並んでいる順にシャベルを渡していく。最後の作業員にシャベルを渡し終えてレタから作業内容を言い渡された作業員達は自分の持ち場へと散っていく。


「さすがお兄ちゃんの宝物庫だね。レタは別な作業があるので一旦ここでお別れです。」


「分かった。じゃあいつも通りエナと外の警備をして来るから、何かあったら呼んで欲しい。」


レタの背中を見送り、多めに出したシャベルを袋の中に戻す。


全てのシャベルを袋に戻し終えて、エナと合流を考えていたおれ俺は一旦家に戻ることに。


(さて、エナはまだ警備に出てないかな?)


「……そんなに大事な物をおいそれと人目に付くようにしてたらダメじゃないか。」


誰も居ない筈なのに掛けられた声に、俺は背筋を凍らせる。危機感を感じた俺はその場から飛び退く。


「まさか開拓地にエリアーナどころか宝物庫まであるなんてな、これは大将からのボーナスも大幅アップが期待出来そうだ。」


(……ッ!いってぇ!)


右腕から鈍い痛みが走る。声のする方を向くとそこには背が高く黒い衣装で全身を覆い隠した男が、血の滴る短刀を握っていた。


「宝物庫を渡してくれよ。そしたら命は見逃してやるからさ。」


「…本当か?」


「あぁ別にお前の命を奪ったって金にならないからな。」


「……分かった。」


俺はそう言って袋を渡すフリをして、先程のシャベルを袋から取り出そうとするがそれを見逃すような相手では無かった。


左肩に短刀を突き立てられ力が抜けて行くのが分かった、俺は道具袋を手離してしまう。


(ーー〜ッッ!隙もなしかよ!本当に痛いんだが!)


「おいおい、どうにかすれば俺から逃れるなんて思っちゃいないよな?お前なんて簡単に殺せるんだぞ?」


動かない左腕ではなく、右腕で袋を掴み右手に力を込める。


(おい宝物庫、魔力を流してるんだぞ!この状況をなんとかしろよ!)


そんな願いも虚しく、あっさりと男に背後を取られた俺は頭に短刀の塚を振り下ろされ意識を刈り取られた。


「これは貰って行くぞ。後はエリアーナ発見の報告をすれば報酬が多く貰えるな。」


そう言って男は宝物庫を懐に仕舞い込み姿を消した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を覚ますとそこは見慣れたエナの家の天井だった。


「目を覚ましたか?」


傍らに座ったティアが俺に声を掛ける。えぇっと何がどうなってたんだっけ…、確か黒い服の男に襲われて…、


「そ、そうだ袋!道具袋は!?」


「…コージさんを発見した、レタは何も持っていなかったと言っていました。」


「そ、そうなんだ…。」


おじいさんから期待を込めて譲って貰った道具袋を取られるなんて…。取り返さなきゃ。


「それで、どのくらい俺は寝てたの?」


「丸二日程です。」


(そんなに経ったのか!?もうあいつは遠くに行っちまっただろうな。)


「取り返して来る。エナは?何処にいるの?」


「レタも姉さんも別の部屋に隠れています。」


「隠れる?なんで?」


「それが、今コンタニンが開拓地に来ていてここの統治をしてやるから責任者を出せ、と言ってきています。旧王家の私達は両親から逃された身なので、外に出られずに彼らが去るのを待っている状況です。」


家の外から複数の足音が聞こえて来る。家の前でその足音が止まると、


「おい!ここに責任者がいるんだろう!出てこい!」


俺はティアに目線で逃げろと促しその声に応える。


「今出ますから。お待ち下さい。」


家の玄関を開けて外に出る。すると外に出るなりいきなり声を掛けられる。


「本当にお前が開拓地を取り仕切っていたのか?」


「ええ、そうです。」


「ふん。嘘だな。おいヴァルディの三姉妹がここに居るんだろ!早く出せ!」


「……何のことだか?」


「シラを切る気か?別にここで王に反逆した罪で処刑してやってもいいんだぞ?」


「何処に王様が居るんですか?目の悪い私には見えませんけど?」


「…コイツを引っ捕らえろ!」


(さすがに煽りすぎたな、まぁこの隙にエナ達が逃げてくれたならいいや。)


俺は瞬く間にコンタニンが連れてきた取り巻きに、地面に叩きつけられる様に拘束され腕を縛られた。


「待ちなさい!」


エナが飛び出してくる。ちょっ!なんで出てきたし!


「…探したぞエリアーナ。」


「私達を処刑するために探してたの?でも残念、ここには私しか居ないわよ?」


「いや、そんなことをするつもりは無い。白狼を従えていればさらに国王としての箔がつくからな。」


そう言ってコンタニンは懐から道具袋を取り出した。


(な、なんでアイツが持ってんだ!?)


エナも俺も驚愕の表情をしている。多分あいつは俺から奪ったことも知っているのだろう俺に向けて笑って見せた。




そして俺とエナの目の前で、宝物庫の能力の道具自動使用を使って見せた。




その様子をエナは見たくないと目を背け、俺はなんでお前がそれを使える!とばかりにその光景を見ていた。


「エリアーナ。俺が蔵の大英雄だ。その意味は分かるだろう?」


エナは悲しさと悔しさどちらも合わさった様な表情で俯いた。


「……。我が主様に仕えます。」


そう言ってエナはコンタニンの前に傅いた。


「はっはっはっ!素晴らしい!これで欲しかった物が二つとも手に入った。いやこの土地も合わせれば三つか、いやぁ今日はなんとも素晴らしい日だ!」


「国王、すぐにでも国に戻り祝言を挙げる準備を進めるべきでは?」


コンタニンの周りの取り巻きがそう進言する。


「そう言えばそうだな。白狼の姫と蔵の大英雄という歴史に刻まれる様な組み合わせなのだからな、大いに祝うためにも準備は早くせんとな!行くぞエリアーナ。」


「……はい。」


ちょ、ちょっと待てどういう事だ!?どうしたんだよエナ!


「エナどうしたんだよ!?なんでそうなるんだ!」


「ごめんねご主人様。これが私の役割なの。」


エナの俺に対するご主人様呼びが気に入らなかったのか、コンタニンが口を挟む。


「おいエリアーナ。俺が主だ。違うか?」


「……申し訳ありません主様。」


「ふん。分かればいいのだ分かれば。さて帰るぞ。」


「……はい。」


コンタニンがエナの肩にいやらしく触る様に手を掛ける。エナもそれを振り払おうとはしなかった。取り巻きを引き連れて帰ろうとするが、コンタニンは思い出したように、


「あぁ、そう言えばお前達は心底仲が良かった様に見える。エリアーナよお別れの言葉を告げてあげたらどうだ?」


ニヤつきながらコンタニンはそうエナに告げる。


「……はい主様。」


エナは縛られて地面に転がされていた俺に近づいて来て、


「『コージ』お別れだよ。……さよなら。」


「ま、待ってくれ。エナ!」


エナは振り返ることなく、コンタニンとその取り巻きの後ろを付いて行った。エナの手に刻まれたIの文字がエナにさよならを告げられた俺と同じで酷く悲しく見えた。

「俺こんなことなったら髪の毛抜けるわ」と胸糞悪くなりながら書きました。悲しいねバ○ージ。


離れるとパァンってなるんでしょ?と思って見ている人もいると思いますがその辺の設定はもう考えてあって、後で説明するので今は流してください。

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