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14.忍び寄る影

 午前の街の警備は住人達の紛紜(いざこざ)を一件ほど仲裁(ちゅうさい)したくらいで、ほとんど平和そのものだった。


 俺達は騎士隊詰所に行きクレイドに問題なしと報告をする。


「街はとても活気に溢れていて、俺の目からだと特に問題は見られなかったです」


「そうか。いつも通りで安心したよ。午後も引き続き街の中の巡邏(じゅんら)をお願いしたい。報酬は今日の午後に報告のついでに渡すから、午後の巡邏が終わってから必ずここに寄って欲しい」


「分かりました」


 俺達は騎士隊詰所を後にしようとするが、後ろから掛けられた声に足を止める。


「あぁそうだ、昨日くらいから街の住人達から迷子の10歳くらいの女の子が、街をウロウロしてると色んなところから報告があった。迷子か孤児かも知れないから、一応見つけたら声を掛けてここまで連れて来てくれ」


 俺は了解したと首を縦に振って示し騎士隊詰所を後にする。


「昼飯は何を食べる?リクエストとかあったりする?」


「んー。やっぱり肉は外せないよね?」


 エナは相当な肉食系だった。今日の朝から見ているだけで胸焼けするレベルの脂が乗った豚の肉を食べていたにも関わらず、お昼まで肉料理を御所望(ごしょもう)らしい。


「肉か…。俺は魚が食べたいから、どっちも置いてそうな店で良い?」


「肉が食べれるならなんでもいいよ?」


「よっしゃ!決まりだ!」


 俺達は条件に合った店を見つけるために飲食街に向かって歩き始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 街の住人の一人が辺りを見回して、鼻を匂いを嗅ぐ様に鳴らして歩く小さい人影を見つけた。親御さんは?大丈夫?と話しかけても無視して歩くその人影は、


「おねぇちゃんの匂いがする」


 そう言ってその匂いのするらしい方へ一歩また一歩と街の中を彷徨う様に歩いていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 丸々一羽皿に盛り付けられた少しお高い鳥肉料理を前にエナは目を輝かせる。


「やっぱりさ?1日の始まりは肉で始まって、お昼に肉を挟み、1日の終わりに肉を食べる。それが人生よね!そう思わない?」


 思わない。俺は朝食べない派だからそもそも二食しか食べないし。まぁ話を合わせといてやるか。


「それが一番です」


 カチャカチャッと食器とナイフがぶつかり合う音を立てる。


 聞いてないし…それより食べ方綺麗だな。こういう姿を見ると本当にお貴族様かもって思えてくる…ん?


 小さい女の子が俺達の居るテーブルの下から顔を覗かせる様に、エナの皿の鳥肉をじっと見つめている。エナは食事しか見えていない様でそれに気付かない。


「どうしたんだいお嬢ちゃん?お母さんとお父さんは?」


 俺に声を掛けられたその子は、


「これと同じものを奢ってくれたら教えてあげても良い!」


 随分と図々しい子だった。ただクレイドから頼まれていた手前この子にはお話しを聞いてから場合によっては任意同行いただこうと思っていたので、俺は店員さんを呼び同じ皿を注文した。


 皿が運ばれて来るなりその子は、ガツガツと手で食べ始めた。


 なんかエナに似てるよなぁ。エナが小さかったらこんな感じだったのかなぁ。


 今気付いたが、エナと同じ様な髪の色だがもっと青が強く出ていて、目の色は全く同じでこれまたエナと同じく獣耳が頭の上に乗っている。頭身はそのままに背を低くし、耳や目元なんかがエナと違って丸いのが仔犬という印象を与え、ちびエナに見える原因となっていた。


 (はた)から見たら親子で、昼飯食べてる様に見えるのかな?


「ふぅ。美味しかった。何をニヤついてんの?」


「あぁ、いやこの子がいると俺とエナが周りから見たら夫婦に見えるのかなって思ってただけだよ」


「はぁ?キモいこと言わないでよ。それにこの子って誰の…、」


 エナは同席して夢中で鳥肉かぶり付いている女の子に、視線を落とし固まったまま動かなくなった。


「エナ?」


 俺が問いかけるとエナは動き出す。


「この知らない子が、食べてる隙に早くここから出ましょう」


「いや、まだこの子に話を聞いてないからそれは出来ないよ。事情次第では騎士隊詰所に連れて行こうと思う」


「すぐに、でる」


 Tな某ウイルスに感染した人の日記みたいな口調になっているエナを説得する。


「この子が本当に住人の言ってた子かどうか確かめなきゃ行けないだろ?それには話を聞かなきゃいけないから、この子が食べ終わるのを待つしかないだろ」


「い、いや…、で、でも…」


 珍しく歯切れの悪いエナを、取り敢えず座ってと席に座らせる。


「ふぅ。ごちそうさまです」


「食べ終わった?それじゃあ早速で悪いんだけど、お話を聞かせてもらえるかな?」


「スリーサイズ以外ならいいよ?」


「…君は迷子かな?お父さんとお母さんは?」


「お父様とお母様は今はいないけど、でもここにおね…、


「ご主人様分かったわ!この子、迷子だからこのまま口を縛って騎士隊詰所まで連れて行きましょう!」


 小さな女の子の口を塞ぎエナはそう言う。


「こんな子の口を縛って街中連れ回したら、俺達が牢屋にぶち込まれるぞ?良いから手を離せ」


 エナはうぅー〜。と言って仕方なく口から手を離した。


「おねぇちゃんならここにいるよ?」


 …まぁ、なんとなくそんな気はしてたさ。


「いつからこの街に来たの?」


「昨日くらいかな?おねぇちゃんがこの街に行くって言ってたのを、聞いたって人から教えてもらったの」


 なる程多分街の住人が言ってたのは、この子のことだろうな。


「この人はおねぇちゃんのこれ?」


 そう言ってその子は親指を立てる。


「レタ!そんなことどこで覚えて来たの!というかご主人様とはそういった関係じゃないから!」


 エナのご主人様呼びを聞いてレタちゃん?は何かに閃いた顔をして、


「やっぱりおねぇちゃんはその綺麗な身体を売ってたんだね」


「ーー〜〜ッ!!そんなわけないでしょ!」


「だっておねぇちゃんご主人様って言ってるし、それにこの人からおねぇちゃんの匂いがかなりするよ?おねぇちゃんバカだからお金欲しさに、悪い男の人に引っかかりそうだって前にお母様が言ってた」


 まぁ引っかかりそうだよな。取り敢えず褒めとけば上機嫌で後ろからついて来そうだし。


「取り敢えずおねぇちゃん連れて帰って来いって、ティアお姉様から言われて来たの」


「あぁ、それなら大丈夫だよ。俺達もエナの実家に帰るつもりだったから」


「…じゃあレタも着いて行っていい?」


「そうだね。レタちゃんに関係することもあるからそうして貰えると嬉しい」


 まだ怒りが冷めないエナに蹴られながらもなんとか宥めて、俺達は午後の街の巡邏に向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 午後の街もそれは穏やかなものだった。問題があったとするならばレタちゃんが度々、いつのまにか居なくなったと思って探すことが何回かあったくらいだった。


 言われた通り騎士隊詰所に向かい、午後も問題がなかったこと、報告のあった子がエナの妹だったことをクレイドに告げた。


「二日間ご苦労だったな。何事もなかったが二人の協力があって助かったよ。これは報酬だ」


 クレイドは俺に報酬を手渡す。


「本当ならこのままこの街の雇われの冒険者として街に貢献してほしい所だが…頼めるか?」


「お誘いは嬉しいんですけど、エナの実家の方に行かなきゃ行けない用事があるんです」


「そうか、それなら仕方ないな。まぁ地龍討伐に行った面々が戻って来たし問題はないからな。無理なお願いを言ってすまない」


「いえ、こちらこそありがとうございました。また縁があったらよろしくお願いします」


「コージとエリアーナさん、それに妹さんも元気でな!」


 その言葉を背に受け俺達は騎士隊詰所を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 昨日泊まった宿に戻り、1名分の追加があることを告げて料金を追加で支払い部屋に戻る。


「ここがおねぇちゃんとお兄様の愛の巣か」


 年齢よりだいぶおマセさんなレタちゃんは、大きな部屋に感動しているようだった。というか、


「なんで俺がお兄様なの?」


「だってお兄様ってバカじゃないと思ったから。白狼は尊敬する人には敬意を払う。あと、おねぇちゃんと結婚するんでしょ?だからレタのお兄様」


「「なんでそうなる?(のよ!)」」


「?。だってそもそもおねぇちゃんは気にもしてない人はガン無視するし、家族くらいにしか食って掛かからないから。もう家族として見てると思ってた」


 ほほぅ?これは聞き捨てなりませんなぁ?


「俺が大好きなら最初からそう言ってくれたらいいのに、エナはかわいいところがあるなぁ」


 ゴッッッ!思いっきり頭を蹴られた。解せぬ。


「そういうところが嫌いなのよ!」


 普通に拒否られた。悲しい。


 そんな俺達のやり取りを側から見ていたレタは、母が子を見守るような顔で呟く、


「…おねぇちゃん。良いパートナーを見つけたんだね?良かった」


レタのその小さな声は俺達には届かなかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 俺達は夕食を済ませた後。エナとレタちゃん、俺、の順番で入浴を済ませることにした。


「ふぅ、やっぱり高い宿なだけあって浴槽までしっかりしてらぁ」


 昨日は手早くシャワーで済ませたので、異世界で風呂に浸かったのは今日が初めてだった。


 ガチャッと扉が開く音がした。


「お邪魔します」


 レタちゃんがタオルで前を隠して風呂に侵入してくる。


「なんで入ってきたの!?」


 そう俺が言うが聞く耳を持たない。


「お邪魔します」


 再度そう告げると、浴槽までレタちゃんが侵入してくる。


「…」


「…」


 …お互いに何も話さないで女の子とお風呂に入るのがとても気まずくなった俺は話を切り出す。


「ど、どうしたのいきなり風呂に押し掛けてくるなんて?」


「レタ考えたことがあるんだけど…」


 ゴクッ!な、なんだ?風呂に突入してくらいだし、お兄様が大好きか?ごめんね?後8年くらい経ったてもまだ俺が大好きだったらお兄様が結婚してあげるよ。


「お兄様の女になれば養って貰えるんじゃないかって」


 …どうやらレタちゃんはおマセを通り越して、ぶっ飛んでいることを考えていたらしい。

エナさんの妹ちゃんの登場です。


ちょっぴり?おマセな小さいエナさんって思って頂いて構わないです。


小さい子書くの難しいですね。喋り口調や漢字の有無どうしたらいいか全く分からなかったです。(人が新しく登場するたびに毎回分かってないって言ってる。)喋り口調変わるかも知れませんが暖かい目で見守ってて下さい。よろしくお願いします。



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