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11.好きよ。

「ぷっ、あはははっ!行商人って副業じゃない!ジョブでそんなのあるの?それしかジョブに就けないなんてもう(むし)ろ才能よ才能!」


 コイツ…。俺が本気で凹んでるときに大笑いしやがって…、手のカウント増やしてやろうか?


 朝の時点で既にIIになっているカウントをどうやって増やしてやろうか考える。


「不思議なこともあるものですね。普通、人種ならばどれだけ魔力保有量が少なくても、最低でも魔法使い程度のジョブには就ける筈ですが…。行商人ですか見たことも聞いたこともないジョブです」


 相当珍しいジョブらしい。500年に一度の逸材童貞といい、俺はもう既に人種じゃない珍妙生物なんじゃないだろうか。ジョブが魔法使いになったら魔法が使えるかもって思ってた俺の期待を返せ!


「はー〜面白かった。ご主人様何も知らないみたいだから教えるけど、強い生き物も街から街の道にいっぱいいるから、行商なんて冒険者しかやってないのよ?冒険者が他の街に行くときに道具や装備品を店の人から安く買って他の街や村で店頭と同じ価格で商売するの。その程度の仕事にも含まれないようなことなのよw?ぷふふっ」


 いつまで笑ってんだよ!いくら温厚で慈愛に満ち溢れる仏の様な俺でも怒るぞ!


 しかしまだ魔法使いの夢が捨てきれない俺は神官に食って掛かる。


「人種なら誰でも魔法使いになれるんじゃないんですか!本当に俺は行商人にしかなれないんですか?」


「そう言われましても…。でも行商人しか選択できないようですし」


 どうしても魔法使いを諦めきれないで唸っている俺に、


「でも行商人って世界で唯一のジョブなのよ?ご主人様専用のオンリーワンジョブよ?」


 なん…だと?俺だけの俺専用のジョブだと?えへへ…それも悪くないな。


「…行商人で良いです」


「分かりました。では準備して参りますので、ここでお待ち下さい」


 そう言い残し神官は紙を持って奥に消えていった。


「そうね。ご主人様には商人くらいが身の程を(わきま)えててちょうどいいんじゃない?」


「お前だってシーフだろ!人を殺して物を盗む、血も涙も無い極悪非道なジョブだろうが!お前も才能が無かったからシーフにしか就けなかったんだろ!人のことを言えるのか?この駄犬が!」


「はぁ?いい加減なこと言わないで!私みたいな才能の塊がシーフにしか就けない訳ないでしょ。敢えてシーフになったのよ私は!しかも犬って言った!?今度こそ許さないんだから!」


 いがみ合っている最中に神官が戻ってきた。


「あの…お取り込み中申し訳無いのですが、まだジョブの認定が終了していないので続きを行いたいのですが…」


「後でしっかり躾けてやるからな。あっ、すみません騒がしくしてしまって。で、他には何の手続きが残ってるんですか」


 エナがワンワン吠えているが気にしない。頭の悪いワンちゃんの飼い主は大変だ。


「今は他に誰もいないのでお気になさらず。では、冒険者カードを出して頂けますか?この紙の記載事項を冒険者カードに写して認定が終了となりますので」


 俺は冒険者カードを道具袋から取り出し神官に手渡した。受け取るとすぐに神官はペンで記載を始め、書き終えるとこちらに冒険者カードを返却した。


「はい。これでジョブの認定については以上となります。冒険者カードの裏面に記載された貴方のステータスは、月に一度更新が必要ですのでお近くの神殿までお願いします」


「ありがとうございました。また機会があればお願いします」


 そう言って俺たちは頭を下げ神殿を後にし、午後に控えた街の外の警備に向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 午後の警備は何事もなく終了し、クレイドからの明日の午前中は街の中で警備して欲しい旨を了承し、今夜泊まる宿を探して歩いた。


「ここが良い」


 一通り見て回った後に、一番高そうな宿まで戻ってからエナが言った。


「ここかなり高そうなんだけど良いのか?」


 割り勘のつもりだった俺はエナに問いかける。


「え?私のご主人様なんだから宿代くらい全額負担してくれるんでしょ?」


「は?ケルベロス討伐の褒美は全部エナに上げただろ?お金は持ってる筈だろ」


「私を養ってこそのご主人様でしょ?いいから宿代全額出して」


 腑に落ちない俺は渋々エナを引き連れて高級宿に入る。しっかりと高級そうな内装をしていて、そこかしこに骨董らしき調度品や美術品が飾られている。


「いらっしゃいませ。当宿にお越しくださりありがとうございます。本日はお二人様でしょうか?」


 受付の綺麗なお姉さんから問いかけられる。


「そうです。えっと、ダブルの部屋ってありますか?」


「え?部屋分けてよ。すみません、シングルの部屋二つでお願いします」


「申し訳ございませんが。生憎とシングルは既に満室でございまして。ツインのお部屋ならご用意出来ますが、ダブルのお部屋より少しお高くなってしまいます」


「じゃあダブルで」


「はぁ?話聞いてた?どうしようもなく嫌だけど我慢するからせめてツインにして!」


「料金を払うのは俺だから部屋は俺が決める。それともこの宿と別の宿を一から探すか?」


 エナは頭を抱えて考え、ダブルの部屋で了承した。やったぜ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 部屋に通されるとバッチリ部屋もお高い雰囲気を受けた。15畳くらいはある部屋に、備え付けの浴室は一般家庭の三倍くらいの大きさはあるようなしっかりとした高級な宿だった。


「わぁ〜凄いわね。こういうところに一度は泊まってみたかったのよ」


「エナは貴族様なんだろ?こういうとこ泊まり慣れてるんじゃ無いのか?」


「…色々とあるのよ」


 ふーん色々ねぇ。


「言いたく無いなら聞かないけどさ」


 それよりも…ベットが一つ!これはもう間違いが起こっても仕方の無い状況ではなかろうか?


「取り敢えずもう寝ようか。昨日は寝不足だったし、なんならエナなんて寝てないだろ?」


「獣人種はそもそも人種とは身体の作りが違うから三徹くらいは平気よ。まぁ、でも疲れたのは確かだから寝ることにしましょう」


 俺たちはルームサービスの夕食を軽く済ませ、無駄に広い浴室で汗を流した。勿論のこと風呂は別々だ。


 そして二人してベットに入る。


「なぁ、エナなら普通にベットから追い出すと思ったんだが俺のこと追い出そうとしないのか?」


「ベットが広過ぎて肌が触れ合うなんてこと無いから気にしてないし、それに童貞が何かする勇気なんて無いでしょ?」


 コイツは分かって無いのか?自称狼っ子のエナと違って男はいつでも狼になれるんだぞ?


「そういえばさ、俺は誓約書にご主人様大好きって記載したんだけど本当にそう思ってる?かなりの塩対応じゃないか?」


「好きよ」


「えっ…」


「だから好きよ」


 その言葉に俺の心臓は大きく跳ね上がる。恋人いない歴=転生前の年齢の俺には、弱点+クリティカルで三倍くらいの威力だった。


 え?つまりこのままOKってこと?今度こそ昨日の続きが出来ちゃったりなんかしちゃったりして?


 んッ、と咳払いした俺は自分に出来る最大限のイケボで、


「俺に任せとけ」キリッ。


 その言葉で何かを察したエナは、心底気持ち悪いものを見る顔になった。


「なに勘違いしてんの?養ってくれるご主人様として好きって話なんだけど?」


 俺の純情を返せ。利子までしっかりと付けてから返せ。


「ふざけんな!思わせぶりな言い方しやがって、このほとばしる熱はどこにぶつければいいんだよ!」


「はぁ?勝手に『アンタ』が勘違いしたんでしょ!」


「また、ご主人様って言ってないぞ!その手のカウントを今清算してやる!こっちに尻向けろぉ!」


「『アンタ』女の子に尻向けろって、どういう神経してんのよ!誰が『アンタ』の『言うことなんて聞くもんか!』」


彼女の手のカウントが今の一瞬でVIまで上昇する。


「大体なんで『アンタ』のことをご主人様なんて呼ばなきゃいけないのよ!私は貴族なのよ?『アンタ』が私のことをご主人様ってよびなさいよ!」


 エナのアンタ呼びが止まらない。上昇し続けるてのカウントを見ながら俺はどうやってこの駄犬をお仕置きしてやろうか考えていた。

作者も好きって言われたい!(切実)

誓約書のご主人様大好き設定が今まで謎だった方、お待たせしました。ようやく書きどころが見つかったので書けました。(余は満足なり。)


エナさんはちょっとおバカで見栄っ張りで、自分に敬意を持って接してくれる人には誠意で返す人って思ってください。


本日も19時に再投稿予定です。良ければそちらの確認もお願いします。

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