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『海』

 海は自分の居た場所を見渡した。そう、海は此処を知っていた。正確には、『見た』事が在る『筈』だった。『画面』の中で。



 「海君? お〜い、華月?」


 仲嶺 深織が海の様子に心配して、声を掛けた。


 振り返る海。焦った様な、不安気な表情を浮かべていた。

 そして言った。


 「やっぱり此処、『ロープレリア』だよね?」と。


 言われた一同は、言われた意味が理解らない。ロープレリアは解かる。皆が大好きアールピージー、ロールプレイングゲームだ。ロール・プレイング・ゲームの、いちタイトルである。つまり商品名だ。が、だから何だ?と。


 「うん、だからね、此処は、『ロープレリア』の『ダンジョン』だよ。う〜んと、確か……、『ミステアの宝魔の窟』、あれだよ、多分。うん、やっぱり宝窟だよ。絶対そうだ。」


 海が自信有り気に言った。何故断言出来る? 鹿島達も無論ロープレリアで遊んだ経験は有るーーが、断言する程、洞窟ダンジョンの形状等、覚えていない。そんなもの、『憶えて』られる方が、『可笑しい』だろう。誰だってそう思う。


 「……………海君さ………………、仮にそうだとして、…………………いちいちダンジョンの形状とか…………………覚えてられないだろ………………? なんで『断言』出来んの? ミステアの洞窟だって」


 仲嶺 深織は堪らずにそう言った。海が答える。


 「違うよ、仲嶺君、あ、妹さんいるから、深織君ね。あのね、ミステアの作った『洞窟』は全部で『4つ』なのね。で、そのうちのひとつが、『レア』で、この『宝窟』だよ。魔法のアイテムがいっぱい出て来るんだよ。ミステアは結構初期で行ける洞窟じゃん?で、難易度は低いけど、アイテムのレア度も低い。けど、此の宝魔だけは、アイテム・レベルが高いんだ。コア・ファンは皆見付けてるよ。僕は結構中盤で見付けて悔しかったんだ。うちのお兄ちゃんがね、……開始五分で『見付けた』らしくて…………滅茶苦茶悔しかった。だから良く『憶えて』る。此処は『ミステアの宝魔の窟』だよ。問題は其処じゃなくてね。なんで『僕等』が、『宝窟』に居るのか? だよね?」



 「…………………突っ込みが追い付かねえ。………………悠緋、…………パス。」


 仲嶺が言った。


 「いや、無茶言うなよ。そもそも俺、ミステアは『謎』と『偵』しか見付けて無い。」


 「は? 『謎』? ミステアは『探』と『偵』で『探偵』の洒落だと思ってた。謎も有んのか…………後でやらねば…………」


 「あのさ、二人共。ゲームやる前に、やる事『有る』よね? ねえ? みお君。」


 伊織が言った。



 「あ、そうか。ちょっと待って、『考える』。」




 そう言って海が考え出した。一行は待つしかなかった。ふと、海が『携帯電話』を取り出した。そして言う。『嘘でしょう?』と。




 戸惑う海が、三人に見せる。自分の電話ケータイを。海が言った。『使えるんだけど?』とーー。




 その時海の電話が『歌い』出し、一同は悲鳴を上げた訳だった。海が一番酷かった。鳴ると思わなかったらしい。電話だから鳴って当たり前なのだが。



 一度切れた。相手を確認しようと画面表示ディスプレイを確認するよりも前に、もう一度音楽が流れ出した。電話ケータイがジャンピング・スモール・スモールの初期の曲をうたった。海は慌てて出た。



 相手の声が聴こえる。『海、何遊んでるんだ?』と。父、陽藍の声が聴こえたーー





 「お父さんっ、此処何処!?」海は思いっ切り叫んだ。鹿島と仲嶺は安心よりもーーどん引く。ちょっと顔が引き攣ったのは、海には見えなかった。




 『海、ーー何言ってるんだ、御前は。そんな処に入り込んで。オープン前なんだぞ? 全く。迎えに行くから、いいか? 1ミリも「動くな」よ? 理解ってるな?』




 電話が切れる。海が意味も理解らず『お父さんが迎えに来てくれるって』と、ごにょごにょと言った。後、『ミリ』も『動くな』と言われたと。




 又ふと思い付き、海は携帯電話で『地図』を出した。自分の居場所を知れる『迷子アプリ』だ。そして気付いた。



 そして言った。『ねえ? 此処、「タウンタウンの中」だよ』と。




 は? と悠緋と深織が言い返したのと、陽藍が迎えに来たのとは略、同時だったーーかくして海達一行は無事かどうかはさておき、『保護』されたのだった。海は陽藍から久々の大目玉だったが、其処に悠緋と深織も巻き込まれたのはご愛嬌だろうかーー因みに伊織は女の子なので叱られなかった。海は心の中で『……ずるい』と思ったが、流石に其れは深織と悠緋も同感だった。




 散々陽藍に其の場で説教された一行だが、時間にすればそれ程でもなかった。


 陽藍は次の『用事』が在ったからだ。残りの『連中』も『回収』しないと不味いだろうと。


 「海、一年間位、『おやつ』抜くか?御前オマエは。」


 そう言った陽藍は全く笑っていなかったので、海は久々に小学校に行っていた頃を思い出した。


 朝が起きれずに、陽藍に首根っこ持って起こされて、御前は『おやつ』抜きだと言われた『猫』時代をーーー。



 「お、お父さん…………、えっと反省してるから…………、それだけはちょっと。え?! 1年?! 1年もは無理だよっ! 待ってお父さん、僕、それ、死んじゃうから………お願いお父さん…、ごめんなさい。」




 ……………………海君。………………………おやつ無いと死んじゃうのか……………。いや、生きてよ。(苦)



 悠緋と深織は掛ける言葉を見失った。最早迷宮入りだと思った。

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