Ⅻ. 神々の行方。
気が付くと、『知らない星』に在たんだーー驚きもする。
急に『お父さん』が、僕等に『言う』ーー『準備』はいいかと。何の?と言いたくなった。
思わず横を見ると『律』が居た。何となく僕は安心したけれど、そんな場合でも無いと思い直す。やっぱり『様子見』に来たのは失敗だったかと思う。言いつけを守って留守番しているべきだったか。探すと、弟ーー『海』の姿が目に入った。父の直ぐ近くだ。それなら心配無いだろう。
僕が『父の正体』を『聞かされて』から、もう『大分』経った。僕等は長い時間を、記憶を無くしたり思い出したり『しながら』転生を繰り返す『存在』だ。忘れてしまった人生も在れば、しっかりと『覚えて』いるーー人生も『在る』。だから当然恥ずかしい思い出も沢山在る。良かったのも悪かったのも、全部『僕』の人生で『過去』だ。だから拒絶したりはしない。全部自分なんだ。『格好悪い』のも全部含めて。僕はそうーー『お父さん』に『教わった。』だから、疑問に思うんだ。どうしてお父さんは、海に『そう』教えないのかと。
「律、これ、…どうなってんの? …どういう事? 準備って『何』?」
僕は『律』に尋ねた。
周りには、伯父さん達と、他にもお父さんの友達の近所のおじさん達が数人いた。美津之伯父さんに、つぐみ伯父さん。お母さんの『お兄さん』達だーーと、夏臣さんと、直人おじさん。夏臣さん……おじさんて呼ぶと怒るからきらい…いや、苦手だ。直人おじさんはその点優しい。夏臣さんと、うちのお母さんも仲悪いんだよな。どうしてお父さんは夏臣さんと『友達』なんだろうね……僕の中の最大の疑問だな。まあ、いいや。後、基おじさんに要さんがいた。基おじさんは『料理人』で、お父さんの『料理友達』らしい。要さんは、お父さんの会社の人。重役ってやつだ。見た目と違って切れ者で優秀でお父さんの右腕的存在で、凄く良い人。優しいし。僕は昔から大好きだ。後、友達の『雄大』のお父さんだ。雄大は僕等の従兄弟の『玲音』とユニット組んで、ミュージシャンやってる。雄大がヴォーカルで、玲音がギター。雄大、要さんと全然似てない。だから僕も『自信』持てた。お父さんにもお母さんにも『似てなく』てもいいやって。玲音なんて『お母さん』いないし、玲音のお父さんなんて、仕事で殆ど海外エリアに行ってて、帰って来ないのに、玲音は全くそんな人生を恨んで無いし。それどころか前向きで、『夢』を叶える事に『全力』だった。ギターばっかり飽きもせずひたすら練習してる玲音見てたら、自分の『悩み』が馬鹿らしく思えた。僕ってちっちゃいなーーと。
正体を明かした父は時々、僕達に『課題』を出した。『ミッション』だ。課題は『こなす』ものだーー『クリア』しなければならないのだ。
『準備』いいかーー多分『此れ』も『ミッション』だよ、きっと。
僕はそう思って父を見た。
父は『見た目』からは何を考えているのかが、分かりづらい人だった。
「っ、『フェアリーヴァース』様!俺達の『話』を先ずは聞いて下さい!ぐっ、重いーっ!」
と、『巧』が、父からの『問題提起』に頭を撚っていると、目前の彼等ーーつまりは神々達がひとりから、そんな言葉が発せられた時、笑顔崩さぬ『要』が己の力を強めた。
うっすらと微笑する要の其れは、巧の知らぬモノだった。
「ー、お願いしますーー」要の力を加えてもなお、その神がひとりは訴えていたーー要は心の中で軽い溜息を吐いた。そして力を解除した。面倒に為った等と言う理由からでは無い。
自由にされた神々は、逆に唐突過ぎて何も出来ずに呆然としていた。
「ま、俺達も暴力で解決するのが好きな訳でもないからな。要のやり方も『有り』だとは思うけどさ、要。けど、陽藍にしてみたら、『有り』なのか、これは?」
そう言ったのは、美津之君だった。僕へと言うよりは陽君に問い掛けたのだろうと思った。
「美津之、陽藍が巻きだってさっき言ってたろ。平和に早期解決で願ったりだろうが。俺も早く帰りたいしな。ついでに『お前の妹』の『強さ』も、俺は知ってるぜ? 要が正解だろうが。」
そもそもこんなにも手こずってるのは、誰のせいだろうとは僕は言わないよ夏臣君。それよりも友ちゃんを悪く言うのは感心しないな。溜息が増えるなあ、ねえ夏臣君。
「あの、お父さん。ごめん僕、此の事態呑み込めてないけど。
……準備って……………何の……準備? ………?」
律がそう言った。
僕ーーつまり吉川 要は目を見開いてしまう。律が分かっていないとは思っていなかった。
けれど律の父ーー陽藍は、動じず『彼等』を示した。そして言うーー『襲撃』と。
今度は律が動じる番だったのだが、父親に訊ねるよりも従うよりも先に、『動じる』事に『生った』のは、別件でて在った。
律の側に『来た』のは、『件の彼女』と『結界保護』に失敗した彼氏だったーー。
ねえ? 君達『来ちゃう』と、僕の仕事振りが全て『無駄』なんだけどな?
陽君の疲れた笑顔が見えたけれど、多分気付いたのは僕だけだろうと僕は思った。
なので再び力を『開放』した。誰であろうと動けぬ様に。
陽藍はまさか、こんな『事態』迄も『想定内』なのだろかと考えながら。きっと彼は想定外でも慌てず動じないのであろうが、今は彼の顔色の悪さばかりが気に為った。
「要っ、『俺達』に迄結界の重圧掛けるのはーーよせ!」
夏臣君の声が聴こえたけども、応じない。達じゃないよ、夏臣君。残念だけど、他の皆はちゃんと『避けた』よ。陽君なんか海の首根っこ掴んで回収してる余裕有りで。
まあ、尚人と、つぐみ君は『力業』で結界壊して『逃げた』みたいだけどね。やっぱり強いよね、あのふたり。
「要、あんまり『無理』しないで? なんなら代わるからね、」
全て察しているーー基君は、声を掛けてくれる。大丈夫、ありがとう。分かって無いのは、『作戦』聞いて無かった夏臣位です!よって少し巻き込まれててね。
と、言う訳で、『神々』達が暴れても全く壊れない僕が作った此の『結界』を、頷き合った美津之と基君が次々と競い合うかの様な『勢い』で破壊して行った。中の神々は無傷だが、動ける筈は無かった。最後に基君が壊したのは、夏臣が入った結界。壊された夏臣は、一瞬苦く微笑んで基君に礼を言い、それから愉しそうに『笑った』。……夏臣ってたまに『壊れた』反応するよね?と、要は思った。
それから唯一残った、『残された』結界は、中に『此処の星の神』を残したままだった。
直夏の彼女、友理奈さんだったよね、君の言う『白髪の神さま』君だよ。ーーあれ?
ちょっと違う気もするけども。彼『邪魔するな』って騒いでたけど、僕達に言わせると逆だよね。此の星神が直夏と彼女の『邪魔』をした訳だよね? 昔から言うでしょ?
君、早く謝らないとさ、馬に蹴られちゃうよ。『ひとの恋路を邪魔するやつは』って言うでしょ。 まあ、なんかもう、陽君の息子を巻き込んだ時点で、君の運命は決まったかもしれないなとは、僕は思うのだけれども。
ひとに『酷い事』を言えば自分へと最後には返って来るーー因果応報。だから誰かを罵ったりしては駄目なんだよ。君の『星』が、こんな風に壊れてしまったのも因果。原因は何処かに在る筈なんだ。それを突き止めるのが僕等『神』と名のつく者達の仕事。八つ当たりで解決なんかしないよ。
だから陽君は怒ってるんだよ、……君の事を。
確かに友理奈さんは、あの時、直夏と別れようと本気で『思って』いた筈だろうけども、その『感情』を『利用』し、『自分の星』の『再生の糧』にしてはーー駄目だ。
天涯孤独の彼女が、唯一の希望を諦めてしまった『瞬間』の『負の感情のエネルギー』
其れが星を諦めかけた此処の星神の感情とリンクしたーー星神は其れを『使える』と思った。
何よりも彼は『寂しかった』。此の誰もいなくなり、何もかも無くなった此の星で。孤独に飽きて疲れたのだ。『友理奈』、彼女も同じだと思った。
その『彼女』が『歩道橋』から落ちるのを『手伝い』、上手く『攫った』つもりだった。『死亡』と『判断』されれば、『魂』を『此方』へ『引っ張り』込んでも気付かれぬだろうと踏んだのだ。然し計画は破綻した。先ず第一に、偶々『隣』の『星』にも『迷いびと』が来ていた事。それに気付かずに決行した事だ。お陰で彼女は『肉体』事、『隣星』へと引き寄せられてしまった。その際に発生した『不測』のエネルギーの影響で、巧が自力で帰宅出来なくなった。巧自身は、『海』のエネルギー暴走に『巻き込まれた』のだが、転移自体は経験済みの巧は、自力で帰宅する『術』を知っていた。其処の星の神に『事情』を話し、『ネットワーク』を伝えば帰って来られるのだ。本来ならばだが。
第二の原因ならば、飛ばされた巧が気付いた『いつも』と何かが違う『事態』と、その巧と『脳内』で『回線』を繋げている、律の御手柄だろう。話を聞いた陽藍が、『ん?』と『思った』事にも其れは在る。陽藍は念の為『華月一家の名探偵』事、陸に事態の説明をする。陸の『事態の組み立て』が大凡『該当』した結果の、『事態』への『先回り』でも在る。
華月家の兄弟達が口を揃えて言っていた『海が邪魔』とは、『友理奈は攫われない様に』死守しろーーとは、直夏の『脳内』へ直接語り掛けた彼等だが、陽藍が『保護』予定であった『もうひとつのエネルギー海』が、何故か『無防備』に『其処』に居た事への苦情と誤魔化しで在る。『隣星神』が居なくとも、未だ其処に居たままの女神達へ海の存在がバレれば『狙われ』てしまうからだ。父は卓から青迄の上の5人の力量を信用し過ぎでは無いかと当人達は何時も思うので在った。全く親馬鹿なのも程々にして欲しいーーと。『だからお父さんのは博打だって皆に言われるんだよ』と卓は思うのだった。勿論微笑みながら。
計画が『破綻』していると気付いた白髪神ーー彼は、要の言う『八つ当たり』的行動を思い付き実行してしまう。近場の神々に呼び掛けたのだ。『フェアリーヴァースがひとりの星神にだけ、贔屓で恩恵を与えているーー不公平だ。我等も願いを聞き入れて貰うべきである筈だ』と。
陽藍の信者の様な神々を煽ったのだ。ただその数が、陽藍と陸が思うよりずっと多く、気付いた陸とそれから青も、自主的に『駆け付けた』訳だ。
陸の予想外と言えば、面倒事は避けて通るが自分の起こした面倒事はひとに解決させる青が、駆け付けた事位だ。友に甘えて丸投げするのかと思ったよと。




