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Ⅸ. ‐ 2. レザードと直夏は、なんだか和解する。


 「悪いが、『空間魔法』、オレにも教えて貰いたい…。頼めるか?」


 ガイ事、レザード・ガイサースが言った。


 言われたのは直夏だ。


 直夏は頷いた。


 「…あんたが俺に『教わろう』とするのは…意外だけどな。教えるのは別に構わないよ。…簡単だし。」と。



 驚いたのはレザードの方だった。いいのか?と聞くと、『冗談だったのか?』と言われた。



 「いや、本気で習いたい。しかし何故使えるんだ?」レザードは疑問を口にする。直夏は『使えるからだ』と答えた。



 レザードがそれに応えようとした時、




 ぐぐう〜ぅうっと、又鳴ったのは海の腹の虫の音だった。見ると泣きべそだった。いや、ガチで泣いていた。……大人しかった筈だ。ユリナも一緒に居た娘も、見ると兄までも困った目でそれを見て居たーーちょっと『幼い』な?と。


 入口の者達までも、ちょっと引いて居たーーレザードは彼等が懲りずに未だ居た事の方に呆れたが、流石のレザードも、その男の『顔』を何となく思い出していた。良く見るともう『片方』も『御花畑野郎』だと気が付いた。追い払うか?と、思った時に、スグナが動いた。


 又空間に手を入れ、『何か』を出し、それを『カイ』にやったのだ。



 「…………。直兄ちゃん…。」海はグズりながらそう言った。…泣き過ぎだろ。


 「…………。食べて………、いいの?これ…」やっぱり泣き過ぎだと思った。



 「カイ君。お茶飲む?」


 そこで初めてユリナがそう言った。カイがユリナを見る。「飲むっ!」カイは現金だった。


 ユリナが再び奥に行くと、カイが座りもせずに、『それ』を開けて、食べだした。……美味そう…だ…な?そう思うと兄上がスグナにやはり聞いた。


 『あれは?』と。直夏は『おにぎり』って言うんですけどねと、答えていた。兄が色々と説明されていた。コムギでは無く、『コメコ』で作ったらしい。どうやってかと思ったら、粉にせず、粒のまま水で『炊いた』と。客の娘も、『この辺では、それを潰して、焼いて食べますけど、まさか……握る……とは』と言って居たーー




 「逆になんでわざわざ『焼いて』食べるのよ…炊けば米は食えるじゃん。器にそのままよそって食べない訳?」と、スグナが娘に言っていた。



 「だって冷めると美味しくないし!?ぱりぱりで焼くと美味しいじゃないですか?!まさか……あったかいうちに、『おかず』中に入れて、ああやって握って置くと、時間置いても美味しいとか!思わないですよ!普通。」



 「…。あのさ。焼くならさ。野菜とか、ちょっと肉とか細かくか又は、適当に一口大に刻んで。炒めて、そこにゴハン入れて一緒に炒めてごらん。後、溶き卵で絡ませて、パラっとしたら、塩、胡椒。あれば、あれ。『豆で出来てる』黒っぽい調味料。あれで味を整える。白米焼くなら、握りにして、酒で延ばした『味噌』全体に塗って、こんがり焼く。此れ鉄板。米だけ焼くより美味いって。」



 「!!ちょっ、なんですかそれ、聞いた事無いし。え、メモる。」



 夢中で『おにぎり』とやらを頬張るカイを置き去りに、スグナは娘とそんなやりとりをして居たーーアレフゥロードは興味深そうにそれを聞いていたーー。



 ユリナが戻って来たが、カイの『おにぎり』はもう無かった。ユリナは『お茶』の他に、又その『おにぎり』を持って来た。お替わりか?と思ったが違った。


 「ゆりなさんっ、やさしい!ちょっと物足りなかったんだ〜」と、カイが手を出すと、ユリナに止められたからだ。「カイ君はお茶だけです。」と。




 「はい直夏。」

 『おにぎり』とやらをスグナに渡した。成る程。『代わり』か。



 「はい、アレフゥロード様と…ガイに。」


 そう言ったユリナは『良かったら』と、態々(わざわざ)包んだ物を私達に渡して来た。


 「お急ぎだったら途中で食べて下さい。今日中なら、多分大丈夫です。」と。そう言う事か。



 「いや?ユリナ?急ぐも急がないも、ふたり、…今から俺と魔法の『練習』……」呆れて言ったのは直夏だった。


 「え?だって直夏『簡単』て言ってたから。すぐかなって」「俺は、ね?」



 二人、睨み合い。ん?睨み合い?



 「………じゃあ他の人には『難しい』の?」「だから今から『実験』だろ。」




 ……………………。




 「………、じゃあ、もっとちゃんとしたごはん、……作るよ。マリーサさんも一緒にどうかな?お洋服のお礼。ごちそうとは言わないけど。」




 「ユリナちゃんっ」何故か客の娘ーー『マリーサ』とやらはユリナに抱き付いた。『さっきスグナさんが言ってたやつ作って』と。



 ユリナはスグナに『何?』と困り顔で聞いて居た。スグナは『ああ』と、顔色も変えず言った。『チャーハン』と。…………なんだ?それは?




 其処に居た『全員』其れを『食べたい』と思った。




 オレはつい、言ってみた。



 「ユリナ」と。




 「……金を稼ぐなら………料理の店と言うか……『こういうの(おにぎり)』を売る店の方が……良かったんじゃないのか?」と。




 「…嫌。」とユリナは短く一言ひとこと言った。


 「……何故…だ?」つい、ユリナだけでは無く、スグナの方も見る。



 「………材料。」又ユリナの言葉が短い。材料?答えたのはスグナだった。



 「材料の仕入れが出来ないからって。」と。


 「…?難しいものを使うのか?」最早スグナと会話して居たーー。スグナが答える。



 「あ…いや、売るとなると、量の話で。後、人手?軍資金が要るって話。」





 そこで乱入したのは、『その2』だった。



 「なら!魔獣や獣を倒して来てやろう!それなら料理も作れるだろう!お前の作ったので1杯『呑むの』もいいな!それならつきあえるだろう!?!」と。



 トンチンカンなヤツだな…馬鹿者め。オレが諌めるよりも『ユリナ』の方が早かった。



 冷ややかに。





 「らんわ、惚け。」と。




 「作らないし。」





 「しかも。あんたと何故『呑む』とか。」……笑顔だ……






 「頭の中、腐ってるのかな?『三流冒険者』の、『デバイジュ』さん?因みに『此処』、『洗濯屋』ですよ。表に看板出しました。もしかして…『読めない』とか?いや2真逆。」にっこりと。






 あ、兄上が…青褪めている…




 「せっかく『綺麗』にしたのに、『空気読めない方』がいらっしゃると、汚れますので、お引取願えますか?『冒険者』さま?お客様なら応じますけど、私。でもそのきったないマント?洗うと解れて……無くなりそう?ですね?」




 更に笑顔が増した後に、




 「私、『汚れた格好の男』、『嫌い』なので、どうぞ、お見知りおきを。」にっこり。からの冷ややかな。





 更に笑顔で、




 「ごめんなさい。本日の『営業』は『終了』致しました。」ではと。踵を返して。




 そこでタイミングを見て『スグナ』が先程の『戦利品』なる『最下層の剣』を抱えたので、それを見たその1とその2はーー逃げる様に退いた。





 「ユリナさん格好良い〜」と、マリーサが言った。ユリナはへたり込んだ。『恐かった』と。





 そこにスグナが言った。




 「お前さ、……女優には………成れないなあ。ゆう兄ちゃんに指導してもらうか?」と。




 ユリナは、へたり込んだまま、「二度と演るかっ」とそう言った。




 にやりと笑ったスグナが、手にした『剣』を空間に押し込んで、ユリナに手を差し伸べた。


 ふわりっとユリナを抱え込んだ。『抱き起こした』のだ。抱えたままで笑っている。『おまえさ、口悪いわ』と。





 ………………まて、そこは『素』なのか?私ーーレザード・ガイサースは心中で突っ込んだ。




 「まあ、それはそれ位にして。昼食にするか、魔法にするか決めようか。済まないね、私達も然程時間が無い方でね。ああ、そうだスグナ殿「スグナで構いませんよ」そうか、ではスグナ。『授業料』は私がユリナ嬢に『渡した分』を『受け取らない』事でどうだろう?それから弟がユリナ嬢から、『受け取る』分が有ると聞いたのだが、大した金額では無いのだろう?レザード。弟の不足分を私が払おう。それでどうだろうか?」



 アレフゥロードーー、兄上がスグナへ『提案』した。私が止めに入る。



 「ユリナの件ですが、ユリナの勘違いです。報酬ならば受取りました。多かった位で…。ああ、そうだ、え〜と、…。スグナ。ああ、自己紹介もしていなかったな。」「それはお互い様だ。



 言葉の途中だったが、スグナに『遮られた』。私は一呼吸置いて、向き直った。そうだなと。



 「では改める。『レザード・ガイサース』だ。事情があったので、ユリナにも『ガイ』としか名乗っていない…。まずは…」「じゃあ『先ずは』昼飯だろうな」





 …………この男は。兄上も『そうだな』と言ったので、スグナがユリナに『ユリナ作ってくれ』と言って、私はとうとうこの男に『好感』を持ってしまった。




 そしてマリーサだけが、『ガイサース』の名に『反応』し、悲鳴の様な声で驚いていた。



 いつの間にか兄上が、彼女マリーサと会話し、その巧みな話術で彼女を昼食へと促した。





 ふと気付くと又、『カイ』だけが置き去りだった。声を掛けようとすると、




 「海。奥に移動するぞ。…お前いつから『食って』なかった?」と、スグナが声を掛けた。カイがぼそぼそと其れに応え、スグナが小さく『…馬鹿が…』と言ったのを私は聞いた。





 「じゃあ、スープでも作ってもらえ。脂物は駄目だ。消化不良起こすぞ」と。『ユリナ』と声を掛けると、『わかった』と返されていた。



 頭をぽんと『叩かれた』カイは、又ぐしぐしと泣いていた。顔を隠して。






 結局『オマエ』も『甘い』のでは無いかーーと、私は安堵して、ユリナ達の後に続いた。




 あの子供の『家族』も、何か考えがあっての事なのだろうーーと、思いを変えて居た。

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