minus. - Ⅲ‐rd. 森の中
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耐え切れなくなったオレはーとうとう言った。不本意だったけど、致し方無いと。
「…巧」
「ーだから、『お兄ちゃん』って…」「腹減ったんだけど、おれ」
「…。」巧のやつが無言になる。ー誰がお兄ちゃんなんて呼ぶかよ。
卓兄ちゃん、龍兄ちゃん、陸兄ちゃん、友兄に、青兄ちゃん。それから、悠太兄さんに、洸ー君。それから律兄ちゃん。おれの『兄』はこの人達で、巧は兄貴でもなんでもー無いよ。兄貴とは思えないんだ。…嫌いだよ、巧のやつなんて。きっと巧だけお父さんの子供じゃなんじゃ無いかと思うんだ。…似てないんだよね、…巧って。兄弟の誰とも似てないし、お父さんにも似てないし。
だって可怪しいだろ? 卓兄ちゃんはお母さん似。綺麗な顔をしてて、凄く格好良い。仕事はモデルだ。ヴァイオリンも凄い。双子の弟の龍兄ちゃんと一緒にCD出してたりとかしてさ。兎に角二人とも凄い。龍兄ちゃんとは顔は似てない双子だけど、二卵性だからーらしい。龍兄は、『性格が俺に似てるな』って、お父さんが言ってた。龍兄ちゃんは、『内面イケメン』だ。見た目は派手さは無いけど、優しいから凄くモテる。ピアニストで、ファンも凄い。今アメリカ・エリアを拠点にして、海外エリアで広く活動している。CDも色んなエリアから発売されていて。…本当凄い。
陸兄ちゃんは、一言で『天才』。大学で『数学』を教えてる『数学・学者』だ。陸兄は奥さんが大分年下なせいなのか、奥さんをお姫様みたいに扱ってる。でもそれ以外はクールだ。機械に強いらしく、PCに凄く拘る。正直専門用語は全く理解らない。女性が溜め息を吐く様な容姿だ。どちらかと言うと、…お父さん似なのかな?
それから、友兄ちゃんは俳優で、今アメリカで活動中。超・有名人。実力派演技派俳優〜で。
友兄、お父さんに凄く似ててびっくりする時がある。後、青兄ちゃん。ぼくーいや、おれは、青兄の事が一番好きだーーなのに。巧め。………やきもちか? 青兄ちゃんは空をイメージして、『青』と言う名前らしいと聞いて。…ぼくの名は……青兄ちゃんの『青』とのコラボみたいな名前なのに。。巧やつ、それを『違う』とか言い出して…。はあ、ムカツク。
後、ボクには『悠太』と『洸』と言う、こちらも双子の兄もいる。後、友兄・青兄も双子。それでこの二人の見た目が凄く似ている。性格は全然違くて何かあまり仲良く無いみたいだ。心配になって青兄ちゃんに聞くと『大丈夫だ』とは言うけどー二人も二卵性なんだってさ。…それで仲悪いのかな?ちょこちょこ意見で対立してるんだけどな…。
で、悠太兄さんは誰よりも天使みたいな見た目で、格好良いと言うより『可愛い』のが似合いそうな兄だ。凄く優しくて面倒見も良い。
洸ー洸君は、兄っぽくない兄。悠太兄さんと見た目も性格も似ていない。一番のマイペース・キャラだ。でも愛されキャラで、お父さんも洸君の事は特別に思ってる様な気がするんだよ…見てるとそう思うんだ。
悠太兄さんは音大を卒業してから、ピアノのコンサートなんかを開いてる。龍兄ちゃん程すごく無いけど、やっぱり結構凄い。今も海外でリサイタルをしてる筈だ。
洸君の方は美大に通っていたけど、卒業してからは家で何やら熱心に描いていたー今は海外に初の『個展』とやらをやりに行っているー悠太兄さんとコラボとかなんとか。二人一緒に出掛けて行ったよ。因みにおれが、洸君をお兄ちゃんじゃ無く、何で『君』付けで呼ぶのかは、呼び捨てにして、律兄ちゃんに凄く怒られたからだ。律兄ちゃんがおれに怒るのって珍しくて……嫌われたら大変と思い、それから君付けなんだーー。律兄が洸君を『洸』って、呼び捨てるから、吊られてそう呼んだら怒られたんだけど。因みに律兄は、悠太兄さんも『悠太』と呼び捨てるよ? 悠太兄さんは律兄の事を『律君』と呼ぶんだけどな? オレの中のちょっとした疑問だーー。
後、洸君も、『律君』『悠太君』と呼んでる。ついでに言うと巧の事も君付け。悠太兄さんも『君付け』で呼ぶな…巧の事。律兄は、『巧』って呼んでるけど。
ボクだって初めから巧の事嫌った訳じゃ無い。
巧はデリカシーが無いんだ。常にツンとしてて、可愛気が無い。そして律兄と仲が悪いんだ。律兄にツンケンしてて、素っ気無くて、見てて律兄が、気の毒になる。
律兄に何でもやらせるし。律兄の方が忙しいのに。巧がやればいいのに、何もしない。特に律兄が洸君と何かおやつとか食べてると、すぐに寄ってってさ、貰ってやがる。…普段仲悪いくせに、…何やってんの? …信じられないよ、本当。 …なんの能力も無い……ただの大学生の癖にさ。
バイトとかもしないし。寝癖…律兄に整えてもらうし。…っ、おれだってなっ!律兄ちゃんに髪セットして欲しいんだよっ! 巧ばっかずるいよっ。……あいつ、トロいのを……強味にして! 律兄ちゃんに甘えてんだよなっ、愛想も何も無い癖にさ!
どうせこんな訳分かんないとこに来ちゃうなら、律兄とか、青兄ちゃんとか、……他の頼りになるお兄ちゃんが一緒なら良かったんだよ! 今だって巧は、慌ててもいないし。 ……なんだよこいつ。 危機感無いーー訳? 流石馬鹿だよな!
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海の『心のでか過ぎる呟き』ーーが、どうしても聴こえて来てーーしまう。
……海、…ひがみっぽいなあ。……擦り切れてるね……この子。……もう中三なのに、大丈夫かな?
…友達いなかったら…どうしよう? ……友達にもこんな態度取ってたらどうしよう……。困るな。
……先ずは…、そうか、……空腹か…どうしよ……あっと、……まてよ、……………確か。
巧はジャケットの内ポケットを見る。…やっぱりあった。『小腹が空いた時用』の携帯食ーービスケットみたいなクッキーが少し入っていた。
大学で忙しい時に、学食も売店も行く暇も無い時、便利なおやつ。『はい』と律がくれたのだ。
前に、試供品を律や洸達で『味見』した品だった。なかなかどうして、美味しいのだーー提案者は父ーー資金提供しているーー健康食品会社の、力作だとか何とか。既に市販されている品で、店でも買えるが、レシピ提供は父故に、巧のは父のお手製だったーー正直例の『試供品』よりも断然美味しいーーと言う代物だ。
それを取り出して海へと渡す。面食らって受け取った弟に、『それしか無いから、ゆっくり食べろ。……水モノは無いからーー口に詰め込まないでな。唾液で溶かして、舐める様に食べろ』と。
海に『はあ?』と言われーー『この子……馬鹿……かも』と、不安に為った。
「…だから、一枚ずつ、口に入れろって言ったの。喉に詰まらすから。ゆっくり食べろよ。」
と、ふたたび言うしかなかった。……兄って、大変なんだな。……みんな偉いな…。
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ダメ元で、愚痴のつもりで、「腹が減った」と伝えたら、まさか、おやつが出て来るとは思わなかったおれ…。
さすが…巧は食意地張ってるよね……あきれるけど、まあ、今は助かったか。本気で空腹なんだよな。……一枚ずつって。……腹、溜まらねーよ、それじゃ。………水か……確かに。クッキーとか粉物は……無いとツライか……。仕方無ーな。
「なあ、じゃあ移動しようぜ? こんなトコ、いつまでもいれねーよ。」当たり前の提案だ。巧を置いて行っても良いが、まあ…………居ないよりマシかもだし、……若干寝覚めも悪いし…うん、…連れてこう。仕方無ーからな。………別に………………恐くねーよ………こんな森。
ちょっと獣っぽいの居そうだけど……………………………大丈夫…………だよ。
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巧はやっぱり海はちょっと残念なとこある子だなと思ったけれど、勿論言わなかった。




