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日清戦争 -74 旅順の癌

 旅順 10月25日

「大沽砲台が攻撃されただと!!」

 伝令兵に驚きをもって返すは旅順の防衛司令官姜桂題だ。

「敵艦隊は主力をすべて動員して砲撃しました。鎮遠まで含まれていたそうですが撃退・勝利したそうです。旅順の残存艦隊には追撃命令が出ています。」

 伝令兵はさらに続ける。が、司令官は反応を示さない。

「勝利は喜ばしい…と返信してくれ。」

 姜桂題の返答は…現実を見ていないものだった

「昨日、花園口へ日本軍が上陸した旨、伝令の報告があったはずです。そちらの報告が先では?」

 参謀の一人が声をかける

「陽動だよ。こちらに目と軍を引き付ける。そうして作った隙で北京を攻撃する予定だったのだ。無駄なことを。精鋭が集まり守っているのに。まあ、砲台に抵抗された以上、上陸作戦は失敗。奴らも撤退を検討しているだろうよ。敗残兵の後背は打つに限る 全艦・全軍に出撃を下命せよ」

「しかし、各国公使からの宣言で通商破壊はできないのでは!!」

「この出撃は艦艇の撃沈のためのもので通商破壊のためではない。」


 蔡 廷幹 旅順

「出撃命令が来ました。目標は大沽砲台に撃退された日本艦隊。」

 伝令兵が艦長・艇長たちの集まる場所にやってくる。この時点の旅順残存艦は魚雷艇16隻。清国北洋艦隊残存水雷艇のほとんどである。

 艦長のたまり場には20人近い男たちがいる。そこは喧騒に包まれる。だが冷静な人間もいる。蔡 廷幹はその代表だ。その声は案外通った。

「敵艦隊の編制と損害は?」

 彼は黄海海戦の生き残りである。

「不明…です。」

 伝令兵は答える。

「伝令兵に聞いても無駄か。」

彼はつぶやく。その声に回りは鎮まる。そのあとに言葉をつづける。

「推定兵力は…定遠級と黄海海戦の高速艦と主力艦13隻は最低いるな。威海衛追撃戦とこれまで旅順湾港を警戒していた船が消えていることを考えると。皆、勝てると思うか?」

 周りは侮蔑の表情だ。「逃亡者が」という声も聞こえる。だがその眼には恐怖が浮かんでいるものも多い。傍目に臆病者と見られたくないだけだろう。

「蔡必勝の覚悟なくば勝てぬぞ!!」

 襟首をつかむ血気盛んな艇長もいる。

「現実的にやれるのは数隻。まあ、この兵力でやれればそれは勝利だな。」

 その言葉に納得するものも多い。逃亡者といえども地獄の黄海海戦から生きて帰ってきた猛者だ。その言葉に回りは納得する。襟首をつかんでいた男もそれを離す

「では出撃準備をする!!」

 そういうと、駆け出す艇長・艦長たち。だが蔡 廷幹のそばに寄ってくるものもいる。黄海海戦の生き残りたちだ。

「罠だな。」

 つぶやいた言葉にほかの生き残り艇長だ。納得の表情を浮かべる。

「蔡艇長に協力します。4隻率いてもらいたい。」

 特に『左一』艇長(黄海海戦で蔡 廷幹の『福龍』と行動を共にした)はそう声を上がる。

「状況次第で…旅順に逃げ込むぞ。エンジンはいたわっておけよ。逃げ足は重要だぞ。」


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