エピローグ
「レベッカ!お帰り!」
久しぶりに会うレベッカに、私は思わず声を大きくする。
横から同じく走り寄るアビーも、良い笑顔を浮かべていた。
「……お久し振りです、クレア様」
「様?」
「クレア様は私を助けてくれた恩人ですし。何よりクレア様は聖女なのですから、様を付けるのは当然でしょう」
「止めてよ、レベッカ。私はレベッカに敬って欲しいとは思っていないから。前みたいに、一緒に楽しく過ごせればそれが幸せ」
「でも……」
「そうそう! クレアは『環境が変わったー』って、嫌そうにボヤくぐらいだからね。レベッカも友だちなら、その気持ちを汲み取ってあげないと」
尚も言葉を詰まらせるレベッカを、アビーは笑い飛ばした。
「……ほら、ね。アビーはこんな感じだし。でも、この方が楽っていうのは本当。だから、ね? 前みたいに話してくれると嬉しいな」
「はい……いいえ、うん」
言い難そうだったけれども、レベッカは何とか敬語を抜いて言葉を紡いでくれた。
「さて、早く学校に行こうよ。次の授業、小テストだからさ。クレア、また山はってー」
「自分で解きなよー。私は、レベッカの小テストの勉強を手助けしたいし」
「クレアまで、冷たい……っ!」
「冷たくないよ。ほらアビーへの愛の示し方は特別だからさ」
「……クレアの愛が重い」
いつかの三人でのやり取りと同じようなそれに、思わず三人揃って笑ってしまった
「さて、と。まずはテストを乗り切らないとね。さ、行こう」
そうして私たちは、学園に向かって足を進めた。
私を取り巻く環境は、随分と変わった。
でも、三人揃えばもう怖くない。
むしろ楽しくなりそうだと、高揚すらしていた。
「やっぱり、三人揃ってこそだね!」
「うんっ!」
そっと私の耳元で囁かれたアビーの言葉に、私は気がついたら全力で肯定していた。




