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待って悪役令嬢! 俺、このゲーム知らない!!  作者: 逢月 悠希
4.俺、このゲーム嫌い 〜第3学年後編〜

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49.個別ルートフラグを潰す作業

 原作再現自体は、中盤まで来ているらしい。

 ここからの展開を、裏ルートありきで考えていこう。


「結局は原作基準で動向を見るのが早いからね。バセット問題は裏ルートの展開を聞きながら考えようと思う」


「ですね……」


 頷き、明里さんはノートを取り出した。


「昨晩、奏音ちゃんと一緒に通常ルートと裏ルートの展開違いを洗い出していたんです。まあ……裏ルートが確定した時点で、昨日やったシーンがほぼ意味を失ったんですけど……」


「えっ? 意味無くなったの?」


 オルフェウスがセレナに足を治してもらうシーンは、通常ルートだとオルフェウスとシベリウスは確定、さらにアリオーソとコラーレ兄弟のルートにもかなり影響が出るらしい。

 ついでに観客からの要望があまりにも強いからやった。


 前者が強すぎるからやったけど、後者はちょっと納得がいかない。

 俺が考えていることを察したみたいで、明里さんは「あはは」と力なく笑った。


「まずオルフェウスは右足が悪いせいで、なかなか王太子になれないわけです。そして他の王太子候補はシベリウスしかいないわけです」


「うん……そうだね……」


「オルフェウスは裏ルートだと犯人が分かってることもあって、セレナに惹かれるまでの流れがちょっと短縮されるみたいなんです。でも、セレナに惹かれれば惹かれるほど、右足が上手く動かない事実に苦しむんです。権力がなければセレナを守れないのにって」


「……」


「そうなってくると、本格的にシベリウスが邪魔だなーって……」


「殺害動機は分かるけど分かりたくない」


 つい余計なことを言ってしまった。

 つい邪魔をしてしまった。


「ごめん、続けて」


 明里さんは苦笑し、話を続ける。


「そのー……足に関してはほっといたらセレナが力をつけて治してくれるのでしょうが、そこまで待てないんです。シベリウスを殺して、ありとあらゆる手段で王太子の地位をもぎ取って、怯えるセレナを自分の部屋に閉じ込めるんです」


「あー、閉じ込めるのは通常ルートと変わらないのか……」


「はい。でも、このルートだとセレナも目の前でシベリウス殺されたショックでおかしくなっちゃうらしいんです。だから、目が離せないからってアリオーソを走らせるんですよね、色んな奴殺してこいって。まあ、アリオーソは任務遂行した上で永遠に帰って来なくなるんですが」


「……」


 ——鳥籠エンドなのは変わらないらしいが、そこに行き着くまでの流れがあまりにも最悪すぎる。


 何もしてなさすぎるシベリウスとアリオーソが酷い目に遭っているのもそうだけど、セレナにも本気で同情する。


 通常ルートの時も思ってたけど、可哀想すぎるだろ、このゲームの主人公。

 ただでさえ生まれからハードモードなのに、どう足掻いてもヤバい奴らに囲まれまくるって。

 このゲームの主人公に転生するとか絶望案件だよ。悪役令嬢よりはマシだけど……。


 そ(・)の(・)悪役令嬢に転生してしまった明里さんは、ぺらりとノートのページを捲った。


「逆にシベリウスはオルフェウスの足が治っちゃうとダメらしいです。だから正式に王太子になる前に、立太子の儀式に先立ってオルフェウスを殺します。そして、うっかり殺害現場を見ちゃったこともあって、セレナは剥製になります」


 結局は剥製に行きつくのかよ。君はどう足搔いても剝製製造機なんだね。


「アリオーソはオルフェウスが足の件で通常ルート以上に苦しんでるのを見てるせいで、治るよりも前にコラーレ兄弟に手を出しちゃうみたいです。従者としての有能さがとんでもなく仇になります。

 そして自害です。セレナに自害の瞬間は見せませんが、残念ながら死体を見られます。セレナが第一発見者になっちゃうらしいです」


 その瞬間は見せないにしたって、自害してる時点でアレなんだよなぁ。

 その時点で駄目なんだよなぁ。


「そして……とりあえずコラーレ兄弟も分岐自体はオルフェウスの足が治る前、らしいです……」


 ——酷い。


 確かに、オルフェウスの足が治るシーンを演じる必要は無くなってた。

 でも、裏バッドエンドたちの前提事項が、あまりにも、酷い。

 演じる意味とかじゃなくて、酷すぎる事実に対して普通に落ち込む。普通に、辛い。


 そんな俺を見て、奏音ちゃんは「良いこともあります!」と前のめりに話し始めた。


「少なくとも5人に関しては、『性格的にそうならない』とかじゃなくて、潰せてるって証明が出せるんですよ? 裏ルート基準だと、オルフェウスとアリオーソとコラーレ兄弟はもうイベント起きてなきゃおかしいですし、足治してみましたが、シベリウスが剥制作る気配は無いですし」


「そ、そうか……!」


「そうですよ! ヴィオレッタも生きてますし! まあ、どのルートもヴィオレッタはどっかのタイミングでサラッと死んでるんですけどね!」


「悪役令嬢を流れ作業みたいな感じで処分しないで欲しい」


 多分、殺害現場に居合わせるとか純粋に邪魔してくるとか、そんな感じなんだろうな。

 ……セレナの行動次第だけど、ヴィオレッタって割とオルフェウスの付き纏いみたいなことしてくるし、そうもなるか。


「後はラウダとバセットとリュートですが、前にも言いましたが、リュートはフラグそのものを立てません。意地でもフラグ立てたくないんで、あたし、学園外には一切出てません!」


「ごめんね……」


 この学園、外に出なくても結構どうにかなる。

 緊急時の避難所として機能していることもあって、かなりどうにかなる。

 とはいえ、奏音ちゃんにはかなり不便な生活をさせてしまっているようだ。


 ……背に腹は代えられないから、そのまま継続してもらうしかないけれど。


「ラウダの分岐はもうちょっと先なのですが、現時点で物理的にフラグが粉です。流石にラウダの実家が燃えたら厳しくなるかもしれませんが、この状況で燃えたら敗北ですよ。もうどう足掻いたって、あたしたちはゲームに勝てませんって」


「はは……」


 ラウダの実家周辺の警備は硬くしている。

 王国騎士団だけじゃなくて、王国魔導士団も愛用してるって話の通信機能持ち宝石の出所がマドリガル家なだけあって、警備を強めることに対する反論は一切上がらなかった——ていうか、元から割と警備は強めだったみたいだ。


 軽く話を聞いてみたんだけど、普通に悪用される危険性があるからってことで、マドリガル家はあの宝石の存在を公にはしていなかったらしい。

 でも騎士団か魔導士団に所属したことがあれば、立場にもよるんだろうけれど最終的には存在を知ってしまう。出所も調べればすぐに判明すると思う。


 つまり革命軍に利用される危険性が高いから、不自然にならない程度に騎士団も魔導士団も警備を強めていたらしい。それを聞かされた時には納得した。


 ……同時に、ラウダがしれっと非売品商品の横流しをしていたことが発覚して笑った。


 そして、その横流し犯は結界魔法のプロフェッショナルだ。

 彼は自宅に全力で結界を張ってから帰ってきたようで、今、あの家に悪意を持って近づけば、ギリギリ死なない程度にこんがり焼けるらしい。


 確かに、これでもラウダの実家が燃えるようなら勝てない。

 あの子の実家はもはや要(・)塞(・)だ。要塞を突破されるようなら諦めるしかない。


「そうなると、やっぱりラスボスはバセットか……」


 最初から分かってはいたが、相変わらずバセットの問題を解決できていない。

 バセットの守りが硬すぎる。あの子だけ異常に強固すぎる。


 唯一裏ルートのことを知っている奏音ちゃんを見ると、彼女も彼女でかなり困っている様子だった。


「バセットの分岐はラウダよりもさらに後なんですよね。最後まで引っ張ります。バセットの裏バッドが見たいなら、他のキャラの個別ルートに入らないように注意する必要があります」


「なるほど? 途中段階で誰かしらの好感度が高かったら分岐しちゃう感じか」


「そうです。分岐しなければ自然に入る感じですね……ってことで、ラウダの分岐を突破しちゃえば、バセットルートか推定トゥルーなのかなって思います」


 それなら、


「ラウダの分岐は突破するものと仮定して、後は俺がバセットに殺されなければ推定トゥルーに行けるな」


「死亡フラグみたいな言い方しないでください」


「ごめん」


 言われてみればそうだ。

 なんか「殺されなければ」って発言自体が死にそうだな。


 ……ってことで、フラグを折ろう。


「オルフェウスがバセットに殺されるシーンってどんな感じか分かる? その展開を回避しきれば良いかなって思って」


 残念ながら、奏音ちゃんはバセットの裏バッドエンドを回収していない。

 彼女が見ている限りだと結局バセットは死んでるから回収してるようなものなんだろうけど、ゲームオーバー扱いでスタッフロールが流れないし、エンディングリストにも載ってないから別で存在してるみたいだ。


「うーん、そうですね……」


 奏音ちゃんは軽く首を傾げつつ、ちょっと困った様子で口を開いた。

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