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骨まで愛して

腐ったような臭いで目が覚める。

皆が解体した骨の前で困った顔をしている。


「なんか臭うと思ったらこれか」


「へい。内臓と骨ですね」

テキーラが言った。


「この内臓は食えるんだがな」

俺は呟く。


「そうなんですか」

ノンアルは興味ありげだ。


「ただ新鮮じゃないとな」

俺は呟く。


「こういうのは、普通はどうする?」

俺は尋ねる。


皆の視線が、

テキーラに集まる。

「土に埋めますね」

とテキーラ。


「なにか使えねぇか?」

俺は尋ねる。


「骨は矢じりとかに使いますね」

とドブロク。


「ボタンとかにも使いやすね」

とノンアル。


「犬の餌にもなるぞ」

とビア。


豚骨だから、スープにもなるな。


でもな……、

スープはめんどくさいな。

すでに肉あるし。


まぁいいか。


「とりあえず裏に埋めよう」

そう言い、

裏に埋めることにした。


……


初回の討伐から一月が過ぎた。

街に一番近い森からは、

完全に猪豚はいなくなった。


管理官は、

「騎士団長が褒めていた」

と喜んでいた。


騎士団長が喜ぼうが、管理官が喜ぼうが、

俺には関係ない。


俺はただ肉を食うだけだ。


次はどこの森を狙おうかと検討していると、

一人の男がやってきた。


「猪豚型の魔物をずいぶん狩ったらしいが、骨を分けてくれないか?」

男はそう言ってきた。


「骨だ?何に使う」


「骨はいろいろ使える。接着する材料とか、ボタンとか、とにかく色々だ」


「残念だがな。もう骨はねぇ」


「まさか。捨てたのか?」


「捨てはしねぇよ。埋めたんだ」


「それは構わない。売ってくれ」


「埋まってるものでいいのか?」


「あぁ別にスープを作るわけじゃないからな」


「あぁわかった。いくらだ?」


「1頭当たり3Gでどうだ」


「頭の骨は売らないぞ」


「まぁ別にそれでも構わない。じゃあ頭の骨なし2頭で5Gでどうだ」


「よしわかった。おいおめぇら。骨を出荷するぞ」


「へぃ」

皆が動き出した。


30頭分の骨が一気に売れた。

合計で75G。

なかなかの上がりだ。


一番始めに埋めた猪豚の頭の骨は、

良い感じに白骨化していた。

俺はアジトの入口の辺りに飾ることにした。


なかなかのパンクっぷりだ。

俺は骨を見上げる。


「これがうちの初めてなんすよね」

ノンアルの目は潤んでいた。


「そうだな」

俺はノンアルの肩を叩く。


「残りの頭蓋骨も全部飾りましょうよ」

テキーラが言った。


俺は想像した。

頭蓋骨で埋め尽くされるこのアジトを。

めちゃくちゃカッコいいじゃないか。

いや、

サイコじゃないか。


「あぁ悪くねぇな」

俺は腕を組み、アジトの外壁を見上げた。


……

骨が売れてから一月が過ぎた。

あれからも、

毎日1頭ずつ狩り、

頭の骨は六十になっていた。

飾るまでには骨を埋めて一月はかかる。

玄関辺りには三十の頭の骨が飾られた。


「親分。なかなか壮観な見た目だな」

ビアは言った。


「そうだな。良い感じだ」

俺は答えた。


「なぁ騎士団では、どういう場合に勲章なんかを出されるんだ」


「著しい功績を出した者だな」


「著しい功績か……。お前の目から見て、この団にそういう奴はいるか?」


「そうだな。

騎士団の基準からすれば、皆自分の仕事をしているだけだ。著しい功績ではない」


「そうか……、ではなにか装備品でねぎらおうと思えば、どうすれば良い?」


「そうだな。それぞれの個性に合わせた装備品なら、喜ぶんじゃないだろうか」


「そうか。ありがとうな」


俺は評価の仕方を今だ決めかねていた。


……

俺は討伐の帰り道、

鍛冶屋へ出かけた。


今度は皆を伴ってだ。


「爺さん。ひさしぶりだね」


「あぁ勇者団のか。よく来たな。今日はなんだ」


「こいつらの装備をカッコよくしてぇんだ。あの鋲でな」


「あぁあれな。ちょっと待ってくれ」

爺さんは鋲を用意する。


「ビア。この鋲でな。

団員の装備をカッコよく機能的にしたいんだ。

各々のポジションから考えて、最適なのを爺さんと考えてくれ」


「あぁわかった」

ビアはそう言い、

爺さんと団員と話し合いながら、決めていく。

爺さんはメモを取りながら、

配置を考えていく。


それから一週間ほど、

俺らは鍛冶屋に出かけた。

行くたびに団員の装備がパンク装備へと進化していった。


「勲章的にするんじゃなかったのか?」

爺さんは言った。


「それも考えたんだがな。面倒になったからやめた。それより団全体としてカッコいいほうがいいだろ」

俺は苦笑いをした。


「そうだな。最適なものとなると、不平等感もないしな。いいんじゃないか」

爺さんも笑った。


世の中は不平等だ。

それはわかっている。

頑張ったものが報われる世界だ。

そんな風にも思わない。


ただ、

だからって平等にしろとは言わない。


パンクは差別を嫌った。

差別主義者に中指を立てた。


俺も差別は嫌いだ。

いかれてやがると思うし、

クソだなとも思う。


でも、

褒章を考えた時、

評価というものが、思った以上に難しいことに気付かされた。


わかりやすいものはある。

しかし、

世界はわかりにくい。


俺は不良だった。

俺はパンクだった。

そして、

俺は犯罪者になり、

今はなぜだか勇者になっている。


不良・パンク・札付きの悪・犯罪者。

そう言った者が、

勇者になる未来もある。


人はレッテルを張りたがる。

人は分類をしたがる。

学問でも、

社会でも、

わかりやすくしたいのだ。


「雑草と言えば、ぜんぶ刈られる。

でも一つ一つに名前があれば、

使われる。

だから名前は大切だ」

生物の先生は言った。


レッテル・ラベル・名前。

同じようなものだが、

使い方で、

世界は変わる。


ナイフで人を傷つけることができる。

でも、

切れないナイフを作り、

戦闘を回避することだってできる。


モヒカンは、

攻撃的な頭ではない。

実は、

もっとも優しい頭なんだと。

俺は少し思った。


……


皆の装備が整った頃、

管理官が書状を携えやってきた。


書類の中身は、

「そろそろ罪人を処刑する。今回は四十五人。必要なら早めに来い」

だった。


俺は頭に血が昇る。

「その罪人が街を守っているんだがなぁ」


俺は皆を呼び、声をかける。

「四十五人処刑されるとよ。必要なら早めに来いと言ってるが、どうする?」


「親分にお任せします」

ノンアルは言った。


皆も頷いている。


「あぁクソめんどくせぇな」

俺は呟く。


「じゃあ。お前ら、未来の仲間を回収しにいくぞ」

俺は叫んだ。


(うぉー)

皆は叫び声をあげる。


思えば、

あの決断が俺らの人生を決定したのかもしれない。


END


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この作品は完結していますが、

反響があれば続編を書く可能性があります。

ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。


■坂本クリア作品

異世界・現代・コメディなど様々な物語を書いています。

次に読む作品はこちらから探せます。


坂本クリアの小説まとめ|全作リンク集

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2898515/blogkey/3591538/


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