ヤマノウエ団
「へへへぇ。
イカレタ野郎だぜぇぃ。
ヤマノウフェ団の縄張りに入ってくるとは。
てめぇら。血祭りにしてやんなぁ」
俺は叫んだ。
(うううううぉ~)
仲間達が興奮の叫び声を上げる。
「うっひょおぅ。肉だ!肉だ!肉だ!肉だ!肉だ!
肉の塊がやってきたぜぇ」
弩のドブロクが叫ぶ。
「オクラの親分。敵の数は五百は超えひゃす。ここはあっしらが食い止めますんで、親分はお逃げください」
斥候のノンアルは俺に耳打ちをする。
「ばかやろう。こんな面白いイベント。たのしまねぇでどうする」
「しかし。親分。あっしらの数は五十。敵は十倍ですぜ」
ノンアルは眉をひそめる。
「まぁ見ておきな。投石のテキーラ!」
俺はテキーラという男を呼んだ。
団の中でとびきり投石の上手い男だ。
「へぇ。親分お呼びで」
テキーラはニヤニヤと笑っている。
「あの群れの真ん中にひときわ大きい猪豚がいるだろう。見えるか」
俺は砦の上から指を指す。
「へぇ見えます。間抜けそうな顔をしてますね」
テキーラは相変わらずニヤニヤと笑っている。
「そうだろぉ。あいつが群れの頭だ。あいつに向かってこれを投げろ」
俺は箱に入った、どす黒いごつごつした石を渡す。
「親分。これは? 瘴気のようなものが薄っすらと感じられますが」
テキーラの笑みは苦笑いに変わる。
「これはな。あの猪豚達にやられた村の石だ。たっぷりと村人達の恨みが染みこんでいる。
村人の猪豚達への怨念が、導いてくれるぜ」
俺はニヤニヤと笑った。
「これを群れの頭にあてろと」
「あぁそうだ。ただな。その石は手で触るなよ。たっぷりと毒が仕込んである。皮手袋を使え。そしてその皮手袋はあとで燃やせ」
俺はテキーラに囁いた。
「へぇ。わかりました」
テキーラは少し腰を落とし頭を下げる。
「倒したらな。あいつの牙をやるよ」
「あの立派な牙ですか。へぇ頑張ります」
テキーラはニヤニヤと笑った。
……
ヤマノウエ団は、俺が頭をする勇者団の名前だ。
その勇者団のアジトに、猪豚型の魔物が強襲を仕掛けてきた。
あの猪豚型の魔物が壊滅させた村は総勢八十。
まぁ俺らも討伐と言いながら散々食ったから。
復讐のつもりなんだろう。
とはいえ、
もとはといえば、
あいつらが人間達を貪り食った結果だ。
まったく何も感情が動かない。
あいつらは俺達の胃袋で消化される運命だ。
そんな事を考えていると、
俺はふと前世の事を思い出した。
あれはたしか高校二年生の夏前の事。
あれは国語の時間だった。
モヒカン頭だった俺を見て、
国語教師は言った。
「お前はなんでそんな鳥みたいな頭している」
「モヒカンは禁止されてねぇだろ」
俺は教師を睨みつける。
「それは知っている。なぜあえてモヒカンなんだ?
モテる髪型じゃねぇだろう」
教師は笑みを浮かべた。
まったくクソみたいな考えをしやがる。
「この世はクソだ。
でもな。
クソな世界でも鳥だったら逃げられるだろう。
だから俺は鳥のような頭をしてるんだ」
そう言ってやった。
「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
教師はそう言った。
「なに言ってやがる。日本語話しやがれ」
「これはな。こんな世の中クソだし、情けねぇと思う。
でも鳥じゃねぇから逃げられねぇ。そういう意味だよ」
教師は笑う。
「へへぇ。なかなかパンクじゃねぇか? どこのミュージシャンだ?」
そう尋ねた。
「山上憶良
万葉集にその痕跡を残すパンク詩人だ。
いいか。
文学ってのはマジメちゃんだけのもんじゃねぇ。
むしろお前みたいなパンクにこそ必要なものなんだ」
そう国語教師は言った。
俺はそれから、
その教師の授業は真面目に受ける事にした。
……
俺は釣ったフグを食った事がきっかけで、命を落とした。
フグの調理&食レポ動画配信を行ったら、バズるんじゃねぇかと思ったが、
ライブ配信中にアカウントがバンされ、
しかも、そのまま、俺の人生もバンされた。
それでなんだかんだあって、
転生することになる。
そして目覚めた時には、
盗賊として牢屋に入れられていた。
転生して、いきなり牢屋の隅に藁と共に寝かされていたのだから、
意味がわからなすぎて、正直焦った。
盗賊の男の記憶と俺の記憶は曖昧ながらも、繋がっていたようで、
記憶をたぐると、ようは牢の中で死んだ盗賊の一人に転生したようだ。
俺が牢屋の中で一日文句を言いながら過ごしていると、
牢から出された。
「おい。どこに連れていきやがる。食い扶持減らすために、俺を処刑するのか?」
俺は看守を睨みつける。
「まぁ。似たようなもんだ。
これから会うお方は、近衛騎士団長殿だ。
くれぐれも失礼のないようにな」
看守は目も合わさずにそう言った。
「おい。看守。お前結局俺と一度も目を合わさなかったな」
俺は睨みつける。
「当たり前だ。お前のような者をマジマジと見る必要はない。お前は迷惑な雑草みたいなものだ」
そう看守は答えた。
「雑草か……。違いねぇ。
ただな。覚えていやがれ、雑草はどこにでも繁殖する。
お前の庭もいつか雑草まみれにしてやる」
俺はそう言ったが、
看守の耳にはきっと届かなかっただろう。
俺はこぎれいな部屋に連行された。
衛兵が左右に五人ずつ。
その中央に立派な身なりをした男がいた。
顎を少し上にあげ、見下すような目で俺を見ている。
「おい盗賊。これからお前を処刑するーーー」
立派な身なりの男は言った。
「なんだ。なんだ。近衛騎士団長様が直々に盗賊風情を成敗にくるとは、暇なもんだなぁ」
俺は立派な身なりの男を睨みつける。
「盗賊風情が、騎士団長殿に無礼だぞ」
衛兵の一人が剣に手をかける。
部屋に緊張が走る。
「まぁいい。これからお前を処刑する。なにか言い残すことはないか?」
騎士団長は目を細める。
「言い残す?
お前なんかとは縁もゆかりもねぇ。お前に言い残すことなんかあるわけねぇだろう」
「ふっ。たしかにそうだな。あぁそうだ。命乞いとかしないのか?」
騎士団長は鼻で笑う。
「命乞いだぁ? そんなものしたら、お前を喜ばせるだけだろう。誰がするかボケ」
(しゃきーん)
十本の剣が俺を取り囲む。
気持ち悪い汗が、額ににじむ。
「じゃあ、ひとおもいに処刑してやろう」
騎士団長は目をつぶる。
沈黙が走る。
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