↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/87

74話 ゴルゴンゾーラ

 

 赤色の海面はすでに視界から無くなり、満月と同じ色の船上の明かりが頼りになっていた。

 騒がしかった港を離れた後は、帆に当たる潮風と、ぎぃぎいと軋む船の音ばかりの環境音に支配されている。


「小森は時間いっぱいまで何をしてたんだ? めちゃくちゃ心配したんだぞ」

「てぇか、遅刻なんだがな。おれが針路変更と言えば、もう覆らない。あと数秒遅れてりゃあ、おめぇ、作戦失敗なんだぞ。……そのクソでけぇ荷物が原因なのか?」


 ペレゾとジョンはやや語気を荒くしながら、小森に詰め寄った。


「悪かったって。重さは大したことないんだが、こいつってばめちゃくちゃ持ちづらくってな! うははは」


 怒られているにも関わらず、小森はやたら上機嫌で、持ってきた荷物を撫で回していた。

 荷物には上等な布がかけらていて、その正体が隠されている。


「んー。中に何が入ってるんだ?」

「大きな荷物ですよね。私くらいの大きさがありますよ? それに丸くって、なんだか……あっ!!」

「ククク……あかりは気付いたようだな。ではご開帳ッ」


 がたがたと震えるあかりをよそに、小森はかけられていた布を剥ぎ取った。

 そして、ぼんやりと輝く黄色の卵がその姿を顕にした。


「じゃーん! 飛竜の卵だ」

「おまっ……いいのか? 王様に許可もらったのか?」

「許可? 最初からくれるって話だっただろ。前借りみたいなもんだ。しかし宝物館って割に警備が甘いよな」

「盗んだんじゃねーかっ」


 満足げに笑う小森と、ツッコミを入れるペレゾ、そしてがたがたと震えるあかり。

 それを見て、船長のジョンは大きく溜息をついた。


「ハァ……おれは王国の至宝を盗んだヤツを船に乗っけたのか」

「怖じけづいたか? 船長」

「怖じける? おれがか? ガハハハ! いいねぇお前さん、気に入った!」


 ジョンは大きな口を開けて笑い声を響かせた後、突然真顔になって、耳打ちした。


「なぁ小森さん、このあと、おれと海賊やんねぇか? おれとお前さんなら、上手くやれるぜ」

「断る。魅力的だけどな。他にやりたいことがあるんだ」

「くぅ〜〜、残念だ。すげぇ残念だよ。まぁいいや、それはそれで、ちょいと忠告させてくれ」


 ジョンはぎょろぎょろと大きな目を動かして、用心深く周りを確認したあと、こう言った。


「この船の上では、あまり人を信じちゃなんねぇ。お前さん、狙われてるぜ」

「……なんだって?」


 そこで、乗組員の一人が用を足しにきたのか、酒に酔いながら甲板に出てきた。

 すると、ジョンは突然顔色を変えて、話題を切り替えた。


「しっかし、これが飛竜の卵か。おれはほとんど海にいたからよ。こうして国の至宝にお目にかかるのは初めてなんだ。おい! よく見ると少し動いてるじゃねぇか。不思議だなぁ。おもしれぇ!」

「お、おう……」


 小森はそれ以上、追及しないことにした。

 もしジョンの忠告が真実であるとすれば、こちらは気付かないふりをするのが得策。

 ジョンの演技がそう示していたからだった。


「この飛竜ちゃんにはもう名前も付けてあるんだぜ。ゴルゴンゾーラって言うんだ」

「ぶふっ……」

「あかり? もしかして、今笑ったのか?」

「えっ……い、いえ。ちょっと潮風が口に……。ところで、そのゴルゴンゾーラの由来はどこから来たのですか?」

「実は由来とか無いんだよな。こう、頭にぴーんときたんだ! めちゃくちゃいい響きだと思わないか? ゴルゴンゾーラ」

「うぅっ……。はい! すごくいいですね! ゴルゴンゾーラ!」


 あかりは吹っ切れたように笑顔になると、小森に賛同した。

 その後、夜も遅いということで、三人は客室に戻って休むことにした。


 船の揺れはほとんど無く、ゆったりとした時間をくつろいだ。

 小森の部屋に誰かが訪問してくるということも無く、小森は久々の良質な睡眠を摂ることに成功した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。