24 ホタテバターと漁村の朝市
根が単純なマコトは、砂浜で素直な漁村の子と会って気分が良くなった。
すると視点も変わり、悪い人間と関わったあとは必ずいい人と出会えるとプラス思考が芽生えてきた。
次の日に市が立つから、村の子供とアンリに案内してもらう。
それまでは生産活動だ。
村から南側に離れ、今度は誰もいない岩場の間の砂浜で砂を集めている。
プレハブ転移を利用して、垂直の岩も回避した。
ガラスが作れるようになって複製できるのは、オリーブオイルとブラックペッパー。中蓋にアルミを使わないタイプだったからだ。
まだ複製ができない物資が、缶ビール、わさび、小瓶入り塩、七味唐辛子、ポテチ、中華香味ペースト、ドライイースト、重曹、アルミホイルと残っている。
「紙に書き出すと、まだまだ残ってるな…」
マコトは砂を集めているときにホタテ貝4枚を手に入れた。休憩中に複製バターと醤油を垂らして焼いたら絶品だった。
「バター醤油も正義だな、うん」
やっとスローライフの第一歩という感じだ。
今回はオリーブオイルにプラスして、最低でも100本以上の瓶を作っておきたい。
マドリーの街でニンニクを買って、ビニール袋を使ってニンニク醤油を作った。ジッパー付きビニール袋、塩コショウの容器に入れたけど使いづらい。
日本では簡単に手に入っていた容器類が、ここでは貴重だと気付いた。
そう考えるとオリーブオイル450ミリリットルで瓶を会わせると700グラムもあるけど、複製に必要な魔石エネルギーが無駄に感じない。
黒胡椒も複製を始めた。胡椒自体は22グラムで瓶とキャップで60~70グラム。この瓶も大事だ。
魔石1d使用で2キロ複製可能。胡椒瓶とオリーブオイル瓶、合わせて800グラム。残る1・2キロはクマ紋のエコバッグにした。
あげると、特に女の子が喜んでくれる。
2つの瓶を倍々で増やすけど、最初は1個ずつしかできない。8時間は我慢。
後から砂集めに来るのも面倒だし、ここで砂を入れるため空間収納をひろげる。
魔石エネルギー150dに拡張積立につぎ込んで、プレハブ小屋をレベル6にした。
これで空間収納の一辺は8・5メートル。
またも部屋のつなぎ方は縦で疑似転移の距離が22・8メートルに伸びた。家というより地下通路に見える。
冷蔵庫の容量は2000リットルに増えた。冷蔵室850リットル、冷凍室300リットル、複製庫850リットル。
複製品の大きさの限界は冷蔵庫の広さそのもの。ドア自体は風呂と同じく大きくなっていない。明けると奥行きが1・5メートルもある。スライド棚の仕切りがあるから奥の物も取れる仕様。
「仕切りを全部取っ払えば2メートルの槍までなら複製できる大きさになったな。家具は椅子なら入るかな」
あくまでも、これは冷蔵室だぞマコト。
次のプレハブ小屋レベルアップに必要な魔石エネルギーは150d。グレードアップするのは小屋の接続方法と風呂。
目一杯の砂を空間収納に入れた。複製物を迎え入れる空間は強制的に空けさせられた。
一晩で、瓶8本分のオリーブオイルと黒胡椒をセットできた。
こちらの砂浜にはガラスの素材が多かったようだ。最初より効率がいい。
あと4回の倍々複製で、どちらも128本なる。瓶だらけになるけど、素材の大量の砂を持ち歩くよりいい。
抽出後の砂を1メートル四方分だけ残しておく。話が分からない野蛮人対策だ。
ただし、瓶の7回複製で計算すると、約101キロ分で魔石エネルギーは52dを使う。実際には端数がある分で別物資も複製したら60d以上になりそう。
スローライフの拠点を作るなら、どこかのダンジョン近く。終着点の方針も決まった。
たき火をしながら日本の肉、ダンジョン鹿肉の燻製を作った。夕日を見て、眠くなるまで星を眺めながら過ごした。
「異世界でも星は綺麗だな。ミスリル銀が手に入ったら、穏やかに過ごせそうな街か村を探そう」
◆◆
次の日は朝早くから、漁村の子供と合流した。マコトは、擬装用のリュックを背負っている。
「おはようございますマコトさん」
「よろしくねアンリさん」
「姉ちゃん兄ちゃん、行くよ」
船着場の横手の広場がフリマ状態になっている。
メインの交易品は、大人達が獲ってきてた干し魚か塩漬け海産物。塩辛のような保存食も売っている。
冷蔵運搬の技術がないから、新鮮な魚が食べたい人は直接来ている。
一艘の船が生け簀代わり。選んだ生き魚を漁師の女将さんに料理してもらい、露天で食べるのだ。
街から来た商人が大麦、服、布、針、糸、などと交換か金銭取引をしている。
近隣の漁村四つ合同なので、漁師家族、村人、多数の商人が交差する。
マコトは目当てのものを見つけた。エビとキスのような白身魚だ。
「おじさん、エビと白身魚を20匹ずつ欲しいんだけど」
「おう。身なりのいい兄さんだな。金か交換できる物は持ってるか」
エビは立派な車エビに見える。マコトは夕べ燻製にした牛、豚、鶏モモを合計2キロ出した。
「あとは干し肉かな」
ビーフジャーキーを5袋出して、味見もしてもらった。
「お、おう。こっちはOKどころじゃねえが、ホントにいいのか?」
マコト的には等価交換だ。エビが高級品に見える。
燻製肉とビーフジャーキーをクマ紋のエコバッグに入れて渡すと、おじさんを手伝っていた娘さんがエコバッグだけ取り上げていた。
塩辛なんかを見にいきたいけど、マコトはエビが手に入ったから調理したくなった。
それに腹も減った。
「アンリさん、みんなの朝ご飯は?」
「まだですよ~。朝市が立つときは、ここで食べるんです」
「じゃあ、俺が今から魚とか肉を調理するから食べていってくれない?」
フリマから30メートルくらい離れた場所にスペースがある。
マコトはリュックから、カマド、煮えたオリーブオイルで満たされた鍋、下準備した天ぷら粉を出した。
みんな、見たことがある収納アイテムとなにか違うと感じ、目を丸くしている。
マコトは異世界人の善意と悪意に敏感な分、他のことに無頓着だ。




