宿命の四方決戦
6月6日、大幅にブラッシュアップ(加筆・修正)いたしました。
キャラクターの心情や設定をより深く掘り下げていますので、初見の方も、再読の方も楽しんでいただければ幸いです!
京都御所の宣秋門を力強く潜り抜けると、そこにはもはや神聖な皇宮としての面影は微塵も留められていなかった。
天を突くほど巨大な聖樹ユグドラシルの根はどす黒く変色し、まるで悍ましい怪物の血管のようにドロリと脈打ちながら、中心にある紫宸殿を無慈悲に締め上げている。
「ここが踏ん張りどころだ。各自、己の獲物を確実に仕留めよう」
私の透き通った冷徹な号令が、不気味な御所の境内に響き渡る。
返ってきたのは、覚悟を決めた三つの力強い返唱と、新選組副長による不敵な笑い。
直後、織田信長から魔神の欠片を分け与えられた四天王たちが、深い影から這い出るようにして私たちの前にその姿を現した。
◇◇◇◇◇
―クリス・西施 vs 滝川一益―
豪奢な回廊の影から、空間を埋め尽くすほどの無数の苦無が全方位から飛来する。
「進むも退くも滝川」と敵味方から恐れられた猛将、滝川一益。その肉体は魔神の呪わしい力によって半ば黒い霧へと溶け込んでおり、常人では視認すら不可能な神速の移動を可能にしていた。
「無駄です。あなたの居場所なら、すでに影がすべて教えてくれています」
クリスが電光石火の速さで魔法放つと、回廊に落ちるすべての影が触手のように一斉に立ち上がり、空間そのものを巨大な網状に埋め尽くした。――『シャドウ・バインド』。
霧と化していた一益が強制的に実体化させられたまさにその瞬間、その頭上から完全なる破壊の雷鳴が猛烈に降り注ぐ。
「逃がさないよ! これがボクの特訓の成果だ……――『雷神脚』!!」
西施が美しい袴の裾を鮮やかに翻し、内功によって限界まで高められた強大な魔力を右脚へと爆発させた。
一益が二丁の魔導銃を交差させて必死に防御を試みるが、音速を遥かに超えた強烈な衝撃波は、その頑丈な銃身を一瞬で飴細工のようにひしゃげさせ、その胸骨を完全に粉砕した。
影に捕らわれ、青白い雷に焼かれる。忍としての誇りは、若き姫のひたむきな一撃によって完全に潰え去った。
◇◇◇◇◇
―土方歳三 vs 明智光秀―
「……滅びゆく時代の哀れな遺物か。その『誠』の旗ごと、我が新世界の塵へと帰してくれよう」
青白い魔火を不気味に纏った宝剣を構えるのは、かつての麒麟としての気高さを完全に失い、冷酷な魔道師へと堕ち果てた明智光秀。
対する土方歳三は、長年使い慣れた愛刀・和泉守兼定を静かに中段へと構え、微動だにしない。
「時代だの何だの、さっきからうるせぇんだよ。俺はただ、目の前の敵を真っ二つに斬るだけだ」
光秀の放つ変幻自在の鋭い刺突が、土方の頬をかすめて鮮血が舞う。だが、土方は一歩も退かない。
死線を幾度も越えてきた本物の武士の眼光が、魔力に溺れるあまり剣の芯を完全に失ってしまった光秀の、一瞬の動揺を絶対に見逃さなかった。
「――天然理心流。『平突き(ひらづき)』!」
土方の身体が一直線の肉弾の矢と化す。
光秀の魔剣が防御に回るよりも圧倒的に早く、土方の凄まじい執念が宿る白刃が、その心臓を正確に貫いた。
魂に刻まれた「誠」の一文字が、魔の策謀を真っ向から鮮やかに切り伏せた瞬間だった。
◇◇◇◇◇
―ディードリット vs 丹羽長秀―
「風のエルフよ。我が『米五郎左』の絶対の守り、容易く崩れると思うなよ」
見たこともないほど巨大な魔力の盾を誇らしげに構え、回廊を完全に封鎖するのは丹羽長秀。魔神の加護を受けたその盾は、物理攻撃も魔法攻撃も完全に無効化する、まさに移動する絶対防御の要塞と化していた。
ディードリットは美しい碧眼を鋭く細めると、袴の裾を軽やかに捌いてトンと地を蹴った。
「風は決して止まらない。どんなに小さな隙間であっても、私たちは通り抜けてみせるわ」
ディードリットの全身を、幾重もの鋭い旋風が美しく包み込んでいく。
彼女は正面から突っ込むと見せかけ、長秀が強固な盾を動かしたその一瞬の隙を突き、風の圧倒的な推進力で真横へと鮮やかに転身。盾の完全な死角となった脇腹から、喉元へと向かって鋭い一閃を滑らせた。
「なっ……速い……っ!?」
「風は自由。あなたなんかに縛ることはできないわ」
――『旋風剣』。
美しい一閃が回廊を駆け抜ける。長秀の喉元が鮮血を噴き上げ、絶対の防御を誇っていた巨盾が、虚しく地面へと轟音を立てて墜ちたのだった。
◇◇◇◇◇
―リーファス vs 柴田勝家―
紫宸殿へと真っ直ぐに続く大階段。その中央に立ち塞がるのは、四天王最強と名高い猛将、柴田勝家だった。
魔神の欠片によって異様におどろおどろしく膨れ上がった肉体は、身長三メートルを優に超えており、その巨大な手にした大斧からは不浄な瘴気の嵐が吹き荒れている。
「小癪な銀髪のガキめ! この『鬼柴田』が、その首ごと魂まで粉々に叩き割ってくれるわ!」
私は銀髪のポニーテールを揺らし、恐れることなく不敵に微笑んでみせる。
「最強を名乗るなら、こちらも最強の力で応えるのが礼儀だ」
私が一枚の漆黒の呪札を虚空へと放つ。私の霊力が凄まじい渦を巻き、一人の圧倒的な武人の幻影がその肉体に重なった。
「――英霊降臨。『本多忠勝』」
その手には、天下三名槍に数えられる伝説の巨槍――『蜻蛉切』が燦然と握られている。
勝家が獣のような唸りを上げ、周囲の大地を粉砕するほどの凄まじい勢いで大斧を振り下ろしてきた。
だが、私(忠勝)はそれを蜻蛉切の頑丈な石突を使い、最小限の流麗な動きだけで完璧に受け流す。そして、鋭い踏み込みと共に、その鋭利な穂先を真っ直ぐに突き出した。
ドォォォォォンッ!!!
御所全体の空気が激しく爆ぜた。
内功と霊力を一点へと限界まで凝縮した神速の突きは、勝家が自慢とする重厚な鎧を紙細工のように容易く貫通し、その真後ろにあった頑丈な御所の石壁までをも、凄まじい衝撃波の余波だけで跡形もなく消し飛ばしてしまった。
「ぐふっ……これぞ、天下……無双、か……」
勝家はガクリと膝をつき、そのまま静かに灰となって消滅していった。
私は蜻蛉切の姿を消すと、鋭い碧眼を紫宸殿のさらに奥深くへと向けた。
◇◇◇◇◇
―第六天魔王、降臨―
立ちはだかる四天王のすべてを討ち果たし、私たちが紫宸殿の巨大な扉を勢いよく蹴破ると、そこには言葉を失うほどの異様な光景が広がっていた。
高御座の玉座に傲然と腰掛けているのは、漆黒の巨大な翼を背負ったダークエルフ――織田信長。
その胸部には、ドクドクと禍々しく脈動する巨大な「魔神の欠片」が直接埋め込まれており、剥き出しになった血管のように世界樹ユグドラシルの根へと繋がっていた。
その足元には、完全に光を失い、生気を無慈悲に吸い取られてしまったハイエルフの帝――天照が力なく横たわっている。
「ククク……四天王をすべて退けるか。貴様のその極上の魂、我が新世界の核として取り込んでくれよう」
信長がゆっくりと立ち上がると、ヤマトの都全体を満たしていた瘴気が一気に彼へと収束し、その姿をさらに巨大で禍々しい「魔王」へと変貌させていく。
「織田信長。お前の野望も、その穢れた力も、ここで私がすべて浄化する」
私の銀髪が、体内から溢れ出る圧倒的な霊力の昂ぶりによって美しく逆立つ。
ヤマトのすべての命運を賭けた、本当の最終決戦が今、始まった。
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