1.剣術大会の賞品は……
不定期連載ですが、10話くらいの予定です。
よろしくお願いします。
闘技場は異様な熱気に包まれていた。
カキンッ! カキンッ! カキンッ!
ワァァァァァァーーーーッ‼︎‼︎‼︎‼︎
剣同士の打ち合う金属音が鳴り響き、超満員の観客席から歓声が上がる。
だが、その空気に飲まれることなく、私は最上段の席から、冷ややかな瞳で騎士達の試合を見下ろしていた。
「おっ! なかなか良い勝負だな!」
傍らに立つ叔父が、オペラグラス片手に感嘆の声を漏らす。そんな彼を私はジロリと横目で睨みつけた。
「お〜〜じ〜〜さ〜〜ま〜〜!」
「すまんすまん、メリル。そう怒るなって。まぁ、多少強引だったが、こうでもしなきゃお前の婚約者は一生決まらんだろ?」
コンコンッ!
そう言って彼は、私が座らされている巨大な金属カップの側面を軽くノックした。
私は今、剣術大会の優勝者に贈られるトロフィーカップの中に入れられている。私自身が、この大会の優勝賞品……らしい。
急に叔父から呼び出されたと思ったら、いきなり幅広リボンで身体をぐるぐる巻きにされ、この中にポイッと放り込まれたのだ。カップの縁が高くて、座っていると頭だけしか表に出ない。はたから見たら生首状態だ。
「メリルが爵位を継ぎ、女伯爵になるのはいいとしても、伴侶は必要だろ? それに、いつまでも婚約者不在だから、厄介ごとに巻き込まれるんだ。在学中は『修羅場令嬢』だなんて、不名誉なあだ名で呼ばれてたらしいじゃないか? お前も貴族の家に生まれた以上、いい加減、腹を括れ」
「……」
叔父の言うことは正論だ。私自身もそれが痛いほど分かっているから、強くは言い返せない。
「でも、だからって……こんな……」
「言っておくが、王国内の三大公爵家が一つ、グレッグス公爵家後援による催しだから、お前に拒否権はないぞ?」
「こ、公爵家⁉︎ ええっ? なぜ⁇」
我が伯爵家よりも上の上、最高位貴族が私の婚姻に口出しをしてきているというのか?
………………
心当たりが……なくもないが……。
「それに、ゆくゆくは辺境に近いサーベジルドの領地をお前と護っていくことになる相手……最強の男が花婿なら申し分ないだろ?」
「でも……私との婚姻を望まない人だって……」
「安心しろ。この大会、出場者全員がお前への求婚者だ」
「っ⁉︎」
叔父の発した予想外の言葉に、私は思わず絶句する。
う、嘘でしょ⁉︎ こんなトーナメントを開催できるぐらいの人数が集まったっていうの⁉︎
「だいたい、メリルが言ったんじゃないか。どの男だろうと同じだって……」
「同じ……」
ワァァァァァァァァァーーーーーーッ‼︎‼︎‼︎‼︎
その時、会場から先程よりも大きなどよめきが巻き起こる!
縁からヒョコっと顔を出して真下を覗き込むと、二人の騎士が激しく剣の打ち合いを繰り広げていた。死闘とも呼べる凄まじい気迫。
それを見て、私の心臓がドクンッと大きく跳ねた。
今、まさに闘技場で剣を振るっている赤い腕章を付けた彼……優勝決定戦にまで勝ち上がってくるとは……というか、この大会に参加しているとは夢にも思わなかった。
「級長……」
一瞬、私の横に彼が並び立つ未来を想像したが……それを追い払おうと、私はフルフルと左右に頭を振った。
「え、えぇ。どなたでも一緒よ、私からしたら……だって、私の目には皆同じに見えるんだから……」
「内側が透けて見える、か」
「そうよ、全員同じ。下の広場では骸骨同士が一生懸命闘っていますわ。まるで不死の戦士のよう……」
そう。私、メリル・サーベジルドは呪われている。
この両眼に映る全ての人間が、私にはガイコツの姿に見えるのだ。
「旦那様になるかもしれない方の顔も分からない……こんな私が結婚なんて……出来るわけ無いじゃない」
男同士の熱い真剣勝負を、どこか冷めた目で見つめながら、私はボソッと呟いたのだった。




