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七章 匂いの調べ⑭

✿ ✿ ✿


 目を覚ますと、そこは見慣れた屋敷の寝室だった。ドレスから寝間着(シュラファンツーク)に着替えさせられていた。いったいどれくらい寝ていたのか記憶にない。

 そして憶えていることとすればハインツ子爵の舞踏会だ。途中、会場を抜け出してからの記憶がまったく無かった。身を起こし額に触れる。

「私……どうして……」

 そう呟いた時だった。ガチャリと自室の扉が開く音が聞こえた。そこに立っていたのは、グランツだった。

「グランツ」

「起きていたか、イヴ」

 グランツは傍に来ると椅子に座り、優しく頭を撫でてくれた。

「体調のほうはどうだ? 念の為医者にも見せたが、身体に問題はないそうだ」

「あ、ありがとうございます。……グランツ、私……舞踏会の途中からの記憶がなくて」

「……。ハインツ子爵のところでトラブルに巻き込まれたようだね。怖い思いをさせてすまなかった」

 グランツはそっとイヴを抱きしめると何度か背中を撫でた。その様子から、迷惑をかけてしまったのだと察したイヴは落ち込んだ。

「また、御力になれなかったのですね。……グランツの足を引っ張ってしまって、ごめんなさい」

「そんなことはいいんだよ。イヴが無事であることが何よりなんだから」

 グランツは優しく声をかけてくれるけれど、イヴはキュッと唇を噛み締めた。

「私、これまで自分でできることがなかったから、グランツの役に早く立ちたいと思ったんです。でも、なかなか上手くできませんね……」

「焦る必要はないんだよ、イヴ。キミが焦る気持ちも、私の役に立ちたいという気持ちも良く分かっている。キミに危険が及ばない範囲で、模索していこう」

「……はい」

 イヴは俯きながらも小さく頷いた。

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