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七章 匂いの調べ⑬
(こいつら……)
次々と入札を始める貴族達を睨み付けると、こそりと口の中で魔法の呪文を紡ぐ。
『凍てつきし炎よ。すべてを闇夜の淵へと堕とせ』
すると会場内の光源というものすべてが一度に消え失せた。喧騒に荒れる会場を掻き分け台座に辿り着くと檻を魔法で壊し二人を抱き上げる。
(まさか二人とも競売に掛けられるなんてな)
それだけハインツ子爵の目に叶ったということだろうが、内心では腸が煮えくり返って仕方がない。
いっそのこと、ここにいる貴族ども全員を凍らせたいとすら思うが、あとは警官の役目だ。深追いはしない。
面倒なことに巻き込まれる前に二人を連れて撤退しよう。そう思い別の出口から会場を後にする。
「……頼んだぞ。ヴィルヘルム」
警官である友人に合図を送ると、そのまま闇夜に乗じて馭者の所へと戻った。
パキン……!
嵌められていた手枷も魔法で壊すと、労るようにイヴの手首を撫でさする。きっと怖い思いをしただろう。そう思うと、事件絡みのある舞踏会に参加させるべきか内心躊躇いが生じた。
イヴは積極的に手伝いたいとはいうものの、危険なことに巻き込ませるのは本意ではない。屋敷に帰るまでの道中、グランツは密かに悩みを募らせていた。




