七章 匂いの調べ⑫
ギィ……。
とある扉を開くと、薄暗い室内の中に一点だけ明かりが灯っている場所がある。部屋の中央――“商品”のおかれる台座だけが煌々とした光を放っている。
今競売にかけられているのは指輪だった。
持つことで不幸になるという呪われたアレキサンドライト。だが今や失われた加工技術により、再現不可能なカットがいっそう美しさを際立たせているとオークショニアは説明している。
それに次々と入札額が掛けられていくのを見つめながらグランツは空いている席へと座る。男女の数は半々といったところか。
美しい物は別に悪ではない。正直、愛でる者の技術次第で価値が決まる物もあるだろう。右から左に流れるオークショニアの話を聞きつつも、どこぞの貴族がアレキサンドライトを入札し拍手があがる。そんな欲と金と見栄にまみれた世界を見ていると辟易してくる。
「さて、お次は珍しい容姿を持つ令嬢にございます。髪は黒シルクのような艶、瞳は黒真珠のような美しさを宿しております。今回はおまけとしてお付きも一人添えましょう」
「…………ッ!!」
ガラガラと鳥籠のような檻に入れられて現れた人物に、グランツは絶句した。
(イヴに……シンシャ!)
薬か何かで眠らされているのか、檻の中にいる二人はビクともしない。手枷を互いに嵌められ凭れかかっている。噂だけかと思ったが人身売買の現場を見た上にその人物がまさに身内だという光景に瞳を見開く。




