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七章 匂いの調べ③
「危険なことは反対ですが、イヴリース様のそのグランツ様の助けになりたいという気持ちは嬉しいものだと思いますよ」
「力になれていないのに……?」
「そんなにご自身を卑下なさらないでくださいな。イヴリース様はとてもお力のある御方です。自信を持ってくださいませ」
シンシャに励まされ少しだけ元気を取り戻したイヴは蟹座会に向けてドレスコードを確認した。
「『全員が某か赤い物を身に着けること』……?」
「赤い物、ですか。蟹だから、ですかね」
「それって、茹でた蟹ってこと?」
そうイメージすると参加者全員が蟹に思えてしまいなんだか無性におかしくなってくる。クスクスと口元を隠しながら笑いながらもイヴはぽつりと呟いた。
「主賓でもないのに、赤いドレスは不躾かしら?」
「いいえ。寧ろこういった場合は、皆様率先して着て来られるでしょうね」
「そうなの?」
「ドレスにしても千差万別ですから」
イヴはなんとなく、中庭に植えられている薔薇の数々を思い浮かべる。赤は赤でも色も形も様々だ。きっとそういうことなんだろう。




