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六章 月の宴⑤

 書庫の空間内は相変わらず不思議な構造をしていた。

 縦も横も、空間全体が拡がっていて都市の大図書館さながらの様相だった。

 オルヴァのような司書は不在なのか元からいないのかは分からないが、特に姿は見えなかった。それでも幸いなことに『こんな本が見たい』と思い描いただけで、巨大な本棚の群れからひとりでに本がやって来るのは助かった。一人で本を探して走り回る必要がなかったから――。

「ダンスと……あとは魔法入門に関する本。――魔力がゼロ、というわけじゃないと思うのよね、多分」

 それは飽くまでも一縷の望みだ。 

 リセッシュ家の魔法を一つも身に着けられなかった身としては、正直不安なところはある。それでも諦めたくない。諦めきれない。何か一つでも、身につけたい。

 そんな気持ちから、魔法入門書の本を見る。昔も読んでいたことはあったが版元が異なるだけで書かれていることは大まかに同じだ。

 シンシャやフローライトのような魔法が使えたら、と期待に胸が膨れ上がる。

「えい」

 風が生まれるイメージを抱きながら、掌を前へと向ける。けれど何も起こらない。書庫だから水や火といった魔法は厳禁だと思い止めたものの、風くらいなら起こせないかと期待した。だが、駄目だった。

「みんな息をするようにできる、っていうけれど……それでいうなら私は“匂い”なのよね」

 しょんもりと落ち込みながらも一人呟く。

「大人しく、ダンスの練習の本でも読もうかしら」

 パタンと魔法入門書の本を閉じ、テーブルの上へ置くとダンスの本を開いた。

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