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四章 令嬢のイヴ⑩

「おっと……、イヴは大胆だねぇ」

「は……っ!」

 グランツの言葉に慌てて身を離すと恥ずかしさから赤面しつつ、お茶会の準備をしてきます! と言い残しその場を後にした。

「オニキスおじ様……ね」

 イヴが話していた呼び名を思い出すと、再び口元が緩む。クスクスと笑いながら、だいぶ屋敷の人間と打ち解けられている様子に、グランツは内心安堵した。


「イヴリース様がお茶会の作法に気がついてくださって良かったです。パイ作りをしたドレスのまま出席なさるつもりでしたら、どうしようかと思っておりました」

 シンシャは心底安堵した表情を浮かべている。

「そうね〜。イヴリース様は時々大胆でいらっしゃるようだから〜」

「消極的すぎるよりは、いいとは思うな」

「ボクも賛成。でもこの場合、大胆の方向性というか意味が異なるよね」

「あうぅ……」

 四人の侍女達の手によって身嗜みを整えてて貰いながら私は居た堪れない気持ちになっていた。夢中になると周囲が見えなくなるのは自分自身の悪癖だ。

 それでも今は少しだけ積極的に在りたいと思う。仕事とはいえ、半日グランツに会えなかっただけで、こうも寂しく感じるとは思わなかったからだ。

 そして新しく知り合うことができたオニキスにもお茶会を楽しんで貰いたい。そう思うと心が躍って仕方がなかった。

「――にしても、あのオニキスがお茶会に参加だなんて信じられないわ」

「あそこまでの堅物、どうやって口説いたのか気になるなぁ」

「それは勿論、イヴリース様が可愛らしい御方だからよ〜」

「確かにイヴリース様は愛らしいけれど、それだけが理由で動くものかな? ボクの中のオニキスのイメージとは少し異なるなぁ」

 口々に話す侍女達は、まるで噂好きの妖精か何かのようだ。よほどオニキスの情報に興味津々なのか話題は尽きることがない。

 そうこうしているうちに、お茶会の支度が整うと私は食堂に行くために立ち上がった。中庭にはガゼボが設えられているとはいえ、夜は冷えることもある。だからお茶会は食堂で行うことにしたのだ。

「シンシャ、行きましょう」

「はい。イヴリース様」

 シンシャの手を取ると、私は部屋を後にした。


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