第三話 我が異世界。②
「諦めて戻ったようね」
「……ああ」(そういえばカッペリは何故追わなかったんだ?……初めから帰れないと知っていたのか?)
「じゃあ行くわよ!」
不信感とは無関係のあっけらかんとした声である。
「……強引だなぁ」
下を向いてしゃがみ込む。世界へのやるせなさか、反抗心か。いったい誰に反抗心しているのだろうか。「異世界って思い通りにいかないんだな」と呟いてみる。でも、「分かってるくせに」と心の底から声がする。異世界で出来た思い出はまだない。カッペリに引っ張られた距離はだいたい3メートル。ひとりの時はもっと長かった。あそこからどれくらい歩いたっけ。と振り向いてみる。
崖のてっぺんから見る景色は、つまり池を越え森を抜けると一面の草原である。いまここにいる草原からプラセンタの方を振り返れば、森が崖を隠している。森と森とを分ける一直線の道をなぞってようやく、クリーム色をしたプラセンタの崖が見えるのだ。
「ちょっと聞いてんのかしら?」
「……ああ」
「もう……」
プラセンタから続く道は、草原もずっと真っ二つに分けて、そうしてずっと続いている。
(そういえば……)
地面は崖と同じようなクリーム色をしているが、端の方だけは無数の雑草の影によってベージュ色の網目ができている。
「ちょっとしゃがまないで!」
カッペリが叱る声は好奇心に消されてしまう。
(この草、普通の草だ。)
一本抜いて観察する。植物のことはよく分からない。だがどこにでもある細長い雑草だ。葉脈は平行脈であるから単子葉類だと分かった。
「ちょっと聞いてんの?ほらっ……立って!」とカッペリは左右多の肩を持ち上げる。「えっ……あっ……すいません」ととぼけて返事をし、左右多はようやく立ち上がった。
どうということはない。しかし死んだのか生きているのかさえ分からない。しかしこの世界を全く……知らない身分にとって、ある種の新鮮さを与えた。




