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Episode.31 サマーキャンピング! 2


 現在の時刻は七時半、目的地がわからない以上何時に着くのかもわからない。だけど進んで行く方向が少なからず都市圏に向かっているわけではないということはわかる。


 時々通り過ぎる青い看板の地名を見ていると何となく進行方向がわかる。

 それに、先ほどからこのファミリーカーの後部座席の後ろの方でかちゃかちゃと音を鳴らす器具があることから想定できる今日のスケジュールは……。


 一つ心当たりがあった。


 俺がまだ小学生の頃、仲の良かった俺ら二人は両家族主催の元近くのキャンプ場でキャンプを行ったことがある。その当時のキャンプ場とは違うがきっと本日行われようとしているのはきっと同じくキャンプなんだろう。


 それならば二日に跨ることも説明がつくし、なによりこれから向かっている方向に大きなキャンプ場がある。


 春の時期は小さい丘みたいな山一面に芝桜が咲き誇り一面の芝桜の中で写真を撮影することのできる公園だ。


 流石に今時期は芝桜は見えないけれど、このキャンプ場内は結構楽しめるアクティビティもあって暇することがなさそうなので一度は行って見たいと思っていた。

 それがまさにこのタイミングで来ることになるとは……。


「ちなみに椎名は今日何するか知ってるんだろ?」

「うん、もちろんだよ! というかそもそも今日の場所に行きたいと言い出したのは私だし、それにどちらかというと駿と行きたいなと思っていたから」

「そう……なんだ」


 過去に一緒にキャンプに行った際のことを思い出す。あれは子ども的には少し苦い思い出で、今でもまだ記憶に残っている。


 外に出てアクティビティを行うことの少なかった加賀美家に対して、割と今日のようにフットワークの軽い茅原家、その両家族がタイミングを合わせ行ったキャンプだったわけだが、あいにくその日の天気は曇り模様でいかにもこれから雨が降り出しそうな顔をしていた。


 嫌な予感ほど当たるというのか、まさにその日の夕方から夜にかけて両家族主催のキャンプは雨に降られ思い描いていたアクティビティも行えず涙を飲むような展開になってしまった。


 当時もっと子どもだった俺も椎名も駄々をこねてまた行きたいと言った。結果的にそのリベンジというのが今日という日になってしまったというわけだ。

 今の椎名の話を聞く限り椎名もその当時の苦い思い出を思い出しリベンジをしたかったのだろう。


「椎名……ありがとな」

「ん……? うん!」


 一瞬怪訝そうな表情を浮かべるものの、すぐにその顔には笑みが戻る。


 少しだけ早起きしたこともあって、普段はもう少し遅い時間に起きている俺にとってはこの程よい揺れが揺り籠のように感じられ奥に潜んでいた睡魔が少しずつ顔を覗かせて来る。


 最初はまぶたが降りて来るだけのものであったが、次第にそれは揺れる船のように右へ左へと揺れ動く。


 気づいた時には俺はやって来る睡魔に抗うことはできず眠りの中へと誘われていた。




 

「——ゅん! 駿〜!」

「——?!」

 

 いつの間にか椎名の肩にもたれかかるように眠っていた俺は、耳元で聞こえる椎名の柔らかい声で目を覚ます。


「やばい、寝ちゃってた」

「いい感じに寝ていて可愛かったよ、起こすのを躊躇っちゃうくらいに」

「恥ずかしいこと言うなって」


 ただでさえ他の人に寝顔を見られるなんて恥ずかしいのに、それを女子に見られてしまうなんて相当な恥ずかしさだ。


「何言ってるんだ、椎名も一緒になって寝てたくせして! もうすぐキャンプ場に着くぞといったら飛び起きたもんな」

「言わないでよ! それに今日の予定言わないでよ〜」

「どうせそのうちバレるんだし! それに後ろでシャンシャカいってたら駿くんだって気づくだろ!」

「むう」


 運転席から覗くようにして俺らのこと笑顔で見ている圭祐さん。


 どうやら寝ていたのは俺だけではなかったらしく、指摘された椎名は頬を赤らめて窓の方へぷいと顔を背けた。


 いつの間にか俺らの旅路は目的地のすぐそこまでやってきたようで近くの看板には東藻琴ひがしもことと、俺が思い描いていた目的地と同じ名前が刻まれていた。


 スマホで時間を確認して見るが時刻は九時を少し過ぎたあたりで、ひと段落したこともありコンビニでこれから朝食も兼ねて何か買いに行くと言うところだったらしい。


「椎名と駿くん、朝ごはん飲み物は適当に買って来るけどそれでもいいかい?」

「え、悪いですよ……俺の分は自分で買いに行きますよ」

「何言ってるの駿くん、今回は私たちが連れ出してるんだから甘えていいのよ!」


 そう言われてしまうと変に断るのも悪い気がしてきて素直に甘える。


「それじゃあお言葉に甘えます……ありがとうございます」

「どういたしまして!」


 前の席に座っている二人は車を降りてコンビニ内へ、残された俺らはと言うと何とも言えない空気感で取り残される。


「椎名って、そういうとこ可愛いよな」

「きゅ、急に何?!」


 顔は背けたままでも、耳まで赤くなっていることがわかる。

 何となく先ほどしてやられたのが悔しくなってお返しをしてやったがどうやら見事に会心の一撃だったらしい。


「なんか浮かれてて、楽しそうなのわかるからさ」

「仕方ないじゃん……行けるってわかってようやく前のキャンプの時の雪辱を晴らせると思ったし……なにより駿とまた二人でお出かけできるんだなって思ったら楽しくなっちゃったんだから半分駿も悪い!」


 突き立てた人差し指はそのまま俺の頬までやってきてそのままぶにっと突き刺さる。


 こっちを見ている椎名は頬をぷくっと膨らませて恨めしそうにこちらを見ていた。それがどこか面白くて思わず笑ってしまう。

 椎名にとっても過去のキャンプに未練があったことに安心する。


「今回はちゃんと天気予報も晴れだったし、しっかりと明日まで満喫するからね!」

「あいよ。ちゃんと最後まで満喫するからな」


 悲しい思い出のままで終わらすのではなくしっかりと楽しい思い出に塗り替えたいと言う気持ちがきっと今日の機会を作るきっかけとなったのだろう。


 椎名のその笑顔は今日の天気模様のように晴れやかな笑顔で、みているこっちまで笑顔にさせられてしまった。

こんにちは。

GWが終わり若干五月病になりそうでしたが何とか乗り越えた一週間でした。

皆様も良き週末をお過ごしください。


続きます。

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