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平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
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私になにができるのだろう?

今回は前回の分ちょっと長めです。

街中がわき返っていた。


王国と運命をともにする覚悟で王都に残っていた民たちであったが、伝説の実現、奇跡を目の当たりにして理性は吹き飛びお祭り騒ぎに興じていた。


その姿を見て太郎は、ささやかな罪悪感にとらわれていた。

パターンとしては、自分が前世から持ち込んだ知識とか、チートな能力を発揮して無双するとかで、あの帝国軍をなんとかすべきだったのではないか?

なすすべもなく傍観しているから、金色のドラゴンに美味しいところをさらわれ誰かの期待を裏切ってしまったのではないだろうか?

もっと自分にできることがあったのではないだろうか?


『さぁタロオ、冒険者ギルドにいって登録しよ?』


沈む太郎に明るくピノは言った。


『私は無力です・・・冒険者なんて、きっと無理です』


太郎は悲しげに首を振る。

『誰だって最初は無力さ。そりゃ最初からチートで無双でバリバリどっかんやっちゃう人もいるだろうけどさ、でも最初から無敵最強だと、強さのインフレ起こしてネタに困ってエタッちゃうかもよ?今は無力ってことは、これからどんどん力をつけることができるんだよ。そのためにも、冒険者になろう』


訳も解らない言葉でピノは励ましながら背中を押す。

やがて王宮へと続く大通に面した大きな建物に二人は到着した。盾に剣と鍵、輪になったロープが看板にかかげられている。

冒険者ギルドの建物だった。


頑丈な分厚い木のドアを開くと、右手にはいくつかのテーブルと椅子がおかれた広場、左手には大きな掲示板、そして中央にはカウンターが置かれている。


チィーン


ピノがカウンターに置かれた呼び鈴を押すと、涼しげな音が閑散とした建物に響いた。


『冒険者ギルドにようこそ〜♪あら、ピノどうしたの?』


カウンターの奥のドアが開き飴色の長い髪をしたスタイルのよい女性が現れる。

『やっほ〜♪やっと夢が叶うんだ!プエラ!登録をお願い!』

ピノはシュタッっと右手を上げる。


『じゃ〜彼は流れ人なのね、いいわよ。じゃ〜これに分かること記入してね。あっ読み書きはできる?』


どうやら、ピノと親しいらしいプエラは一枚の紙を太郎の前においた。


冒険者登録用紙

氏名

性別

年齢

種族

特技


と、書かれている。見知らぬ文字であったが、普通に読めることに安心した。


ペンを取り、書き始める。普通にこの世界の見知らぬ文字が書けるのが不思議だ。


『タロウ・タナカさんね、特技がアイテムボックスと神の眼か』

書類に目を通していたプエラがいったん言葉を切るとポンっと軽い音がして、狐のように艶やかな毛並みの耳と、ふさふさの尻尾が現れる。


『神の眼持ちなら隠しても無駄ね。私はプエラ・リーフ、ご覧の通り狐人族よ。次は、この魔道具に血を1滴垂らしてね』


あっけにとられる太郎に、魔道具を取りだして千枚通しのような針を渡してプエラは微笑んだ。


大きな筆箱のような形で、五芒星が刻まれそれぞれの頂点に小さな水晶がはめてある魔道具に血を垂らすと、すべての水晶が輝いた。

『さすが流れ人ね、全属性なのね。はい、これが冒険者カードになります。無くさないでね』


軽く口笛を吹いて魔道具の中から、薄い黄緑色のカードを取り出して太郎にわたす。


『そこにさわると、所有者の魔力に反応して情報が表示されるようになってる』


カードの端に星マークをさしながらプエラは言う。


タロウ・タナカ

ランク:H

所属:ユーブリック

パーティー:


カードには、そう表示される。


『所属は最後に依頼を受けたギルド名が表示されるわ。ギルドについて説明するわね。冒険者ギルドは、冒険者の冒険者による冒険者のための団体よ。長い話になるから、むこうのテーブルで話しましょ』


プエラは尻尾を揺らしながらテーブルに向かった。


冒険者ギルドの成立は、ウィンディア王国よりも古い。

魔物を狩り、迷宮に潜り、未開の地を旅し、財宝を力を冒険を求めた荒くれの酔狂者たち。

自らを冒険者と呼んだ者たちの大半は冒険のなかで命を落としたが、運よく生き延び引退した者たちが宿屋や酒場を始めた。そこは流れ者である冒険者たちにとって居心地がよく、冒険者たちは集まり出会い別れ繋がっていった。

やがて、そこの主たちは、冒険者とそうではない者たちの橋渡しをするようになっていく。依頼を受け、依頼をかなえる能力をもった冒険者を探す。

それが時代とともに組織化、システム化されていき、いつしか本業から独立し冒険者ギルドという存在となった。

街々に独立していたギルドが、次第に交流を深め、ルールが統一されていき、ウィンディア王国の成立とともに統一した冒険者ギルドとなる。長い平和な時代のなかで、冒険者の数は増え、ギルドの力は国に比肩するようになった。国王の代替わり、ギルドマスターの交代のつど謁見し、お互いの協力関係を確認しあうことが慣例となっている。

帝国が台頭し、戦争がおきた時、ギルドは冒険者に動員義務をもうけ、戦力を確保すると、武装中立を宣言した。


『ギルドは冒険者の冒険者による冒険者のための自治を貫き、如何なる国とも平等に接し、如何なる国にも干渉せず干渉されない。ギルドと冒険者を害するものには、ギルドと冒険者の総力をもって抗う。って宣言したのよ』


ギルドの成立を語り、独立宣言をとうとうと読み上げたプエラは豊かな胸をはった。


『だから、帝国においては差別されてる私みたいな獣人やピノみたいなコビット族、エルフやドワーフなんかの亜人は冒険者になる人がおおいわね。さって、続きはお茶をいれてからにしましょう。』


広間の奥の壁は木戸になっていて、開くと、瓶や缶がところせましと並んでいた。

お読みいただきありがとうございましたm(__)m


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