金色のドラゴン
風邪を引いてしまったので、少し短いです。
金属のような艶のある金色の鱗に全身を包んだドラゴン。太郎は首が三本ある某大怪獣を思い出していた。
神の眼を使ってみたが遠すぎるようだ。
悠然と王城の上空を旋回するドラゴンはやがて城壁の向こう側に満ちた帝国軍の後方を薙ぎ払うように、ブレスを放つ。
カッ!ズゴォォォ〜ン!!
薄い金色をした光線のようなブレスが帝国軍の後方を薙ぐと、一瞬の沈黙のあと激しい爆炎があがった。
帝国軍からは悲鳴が王都からは歓声があがる。
『なっなんですか!あれはっ!!』
太郎は腰を抜かしかくながら言った。
『俺も初めて見たがなぁ〜伝説のとおりだな。あれこそが、魔導王ユーブリックが従えた五色の龍王が1体、金色の龍王キンクンさ。ついに召喚に成功したんだな。もっと良く見えるとこへいこうぜ!』
小躍りせんばかりのはしゃぎようで、マクバは城壁に登る階段に向かった。
『国滅びの危機に瀕し時、国、民を慈しみ、民、国を見捨てざれば、我がしもべ必ず国を救わん。ユーブリック伝説の一節だよ』
いつのまにか、小躍りやめていたピノに袖をひかれて太郎も城壁を登る。
三人が城壁の上についたころドラゴンは王城を離れ帝国軍へ襲いかかっていた。
二本足で直立し、両腕の爪、長い首鋭い牙、太く長い尾、それらが振るわれたびに血煙りがまきおこり、人がオモチャの人形のように吹き飛ぶ。
上空にあり、敵を射程外から壊滅させる力がありながら、わざわざドラゴンは地上に降りた。
帝国の兵たちに恐怖を植え付けるために。
味方が巻き込まれるのもかまわずに、天を覆うほどの矢が放たれ、攻城用の巨大な弩が槍よりも太い矢を放ち、投石器から大きな岩を投じたが、ドラゴンに傷ひとつつけることができない。
腕におぼえがある騎士だろうか、白銀の鎧を煌めかせ長大な馬上槍を抱え、混乱する帝国軍から抜け出しドラゴンへ突撃した。巧みな馬術で死体や岩を乗り越え加速しドラゴンへ向かう。
一瞬、ドラゴンがニヤリと笑ったような気がした。
まさに人馬一体となったチャージはドラゴンの首元にある逆鱗へと向かう。ドラゴンは身をよじり矛先をかわそうとするが、吸い込まれるように槍先が逆鱗を捉えた。
グァギィィィン
重い金属同士がぶつかる音がしてドラゴンは僅かに後退する。
しかし、槍は折れ騎士は落馬し、鱗に傷は見えない。
『よい腕だ、しかし、力なきただの鋼に逆鱗といえど我が鱗を貫けると思うな』
呆然としたままの騎士を馬ごと尾でなぎはらい吹き飛ばす。
『白銀のシルバルがやられた…もうだめだ』
帝国軍にさざ波のように衝撃が広がってゆく。
帝国軍の士気は崩壊した。
冑や武器、盾などを投げ出し前線の兵士から我先にと逃走を始める。
『逃げるなぁ〜!戦え〜!!きさまらそれでも誇り高き帝国軍人かぁ〜!反逆罪で死刑にするぞぉ〜!』
きらびやかな装飾が過度についた金色の鎧、豪奢な房飾りに宝石をあしらった冑、右手には帝国元帥を示す金糸の房がついた杖を短い腕で懸命に振り回しながら小柄でよく太った男は怒鳴っていた。
『殿下!ここは一度兵を引き体制をたてなおしましょう!』
軍人というより執事といった男が進言する。
『嫌じゃ!!戦え!!王都を落とすのじゃ!!今夜にもニレイア王女を僕のものにするんだ!!』
殿下と呼ばれた男の体と同じ肥大した自我は現実をみようとしない。
『突撃だぁ!!ドラゴンを倒したものは、貴族にしてやるぞ!うひぁ〜』
殿下が大声をあげたとき、巨大な影が降ってきた。
ドラゴンだ。
腰を抜かし這いずり逃げようとする殿下の背中に軽く尾をのせる。
『ぶべぇ』
醜い悲鳴をあげながら殿下はもがくが抜け出せない。
『貴様が指揮官だな。よくきけ、国へ帰り貴様の王に伝えよ。命がおしくば、ウィンディアを敬い尊べ、もし、再びウィンディアを攻めた時は皆殺しにするとな』
ボールを転がすように殿下の体を右に左に転がしながらドラゴンは脅しをかけた。
『あひゃ、つたへまふ、ひぎゃ』
転がされた勢いで手足が折れた殿下が悲鳴とともに答えると、ドラゴンは殿下を遠巻きにしている執事のほうへと弾いた。
『速やかに兵を引き、国境を越えよ。さもなくば消し炭にしてくれる』
ドラゴンの声とともに雷の魔法が炸裂し、直撃した哀れな兵士を消し炭に変える。
天空へと舞い上がったドラゴンは羊でも追うかのように、ときおり雷を降らせながら帝国軍を追いたてていく。
やがて、帝国軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
『勝ったぞぉ〜!』
王都からあちらこちらから歓声があがる!!
城壁の兵士たちも、手を振り上げ歓声をあげている。
マクバとピノは腕を組んで踊っていた。
太郎は、戦争が唐突に終ったことを漠然とよろこびながら、これからどうしようかと考えていた。
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