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追われし勇者、旧知の邂逅 - 雪深き村にて -

召喚勇者カズマの四天王ヴェイン撃破を讃える祝賀会よりも、

更にはカズマの帝都への凱旋よりも時は遡る……


---


風雪吹き荒ぶ山岳地帯の麓に位置する小さな集落。

四天王グラヴィウスとリザミアとの死闘から二日が過ぎた夕刻――


前勇者の地下遺跡で傷を癒したアルフォンスとリーンは、

慎重に山を下りこの雪深い辺境の村へと戻って来た。


村の門をくぐると、住民たちが複数の鎧姿の男達に

大声で喰ってかかっているように見える。


リーンがアルフォンスの袖を引っ張った。


「アルフォンス様……あの方達は帝国の騎士様ではないでしょうか?」


アルフォンスは僅かに眉をひそめた。


「ああ……よく分かったな」


そう言いながらも複雑な心境だった。


(そういえば……)と記憶を辿る。


アルフォンスとリーンは旅の途中この集落を訪れた際、

暴れていた狼の姿をした魔物の群れを討伐し村人を助けていた。


その時に既に広がりきってしまった噂通りに、

「解放者」と「救済者」と称えられ感謝されていた経緯がある。


「……どうされるのですか?」


リーンの問いにアルフォンスは内心で苦笑しながら呟いた。


「今の俺の立場は……帝国と敵対関係みたいなものだし、

 帝国の騎士や兵士と出会うのは避けたいところなんだがな……」


そう思いつつも目の前で村人たちが困っているのを見過ごせないのが

かつての姿に戻りつつある彼の性分だった。


「いいえ……それでこそ貴方らしいのでしょうね」


アルフォンスの事を分かってくれているリーンに背中を押される思いで、

彼は無言で足を速め集団の方へ近づいていく。


村人の一人がアルフォンスの姿に気づき驚いたように声を上げた。


「あ……あなた方は……! "解放者"様と"救済者"様!?」


その呼び名に、アルフォンスは一瞬微妙な表情を見せたが

すぐに表情を引き締める。


「すまないが少し話を聞かせてもらえるだろうか?彼らは一体何を……?」


村長らしき老人が言葉を探していると、

その様子に気づいた騎士たちが一斉に振り向き緊張が走る。

対してアルフォンスとリーンが現れたことで村人たちは驚愕していた。


何故なら騎士たちの本当の目的はまさに彼ら二人を見つけることだったからだ。


慌てふためく村人たちの会話が聞こえてくる。


「ほら見ろ!あの若者だ!」

「解放者様と救済者様が戻って来ちまった……」

「でもどうして騎士様たちがここに……」


村人たちの慌てぶりは明らかで、それが逆に不審な空気を醸し出していた。

騎士たちも互いに顔を見合わせるが、そこへアルフォンスが一歩踏み出す。


「どういうことだ? 君たちの目的は何なんだ?」


リーダー格の男が進み出てきた。そしてその顔を見た瞬間、

アルフォンスは懐かしさと驚きが入り混じった感情を抱く。


「アルフォンス団長……!」


男の瞳に浮かぶ尊敬の念と驚き。

彼はかつてアルフォンスが騎士団長を務めていた頃の副団長だった男だ。


「エリック……君なのか?」


「はい!お久しぶりでございます!」


エリックは跪き深く頭を下げた。周囲の騎士たちも一斉にそれに倣う。


村人たちはこの光景を呆然と見つめていた。


「どういうことなのじゃ……」

「騎士様たちが……解放者様に跪かれるなど……」


その間にも村人たちの一人が小声で囁き始めた。

「まさか本当に解放者様とお知り合いだったのか……?」

「だとしても、なんで今さら……?」


村人たちの動揺を見て、アルフォンスはようやく察した。


(彼らは……俺たちを守ろうとしてくれていたのか)


リーンが小声で言う。


「彼らは私たちを庇おうとしてくれてたのですね……」


「そうだな……」アルフォンスは頷いた。


エリックが立ち上がりアルフォンスに向き直る。


「団長!あなたにお伝えしたいことが……」




帳尻合わせ三部作の1つ目です。

全部合わせて5,000文字なので一度にアップしても良いのですが、

ダレてしまうと思い、3つに分けました。

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