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死闘の後の休息、振り返る想い

時は少し遡り、アルフォンスとリーンが

グラヴィウスとリザミアを倒した後の休息の場面へと戻る。


---


暗く静まり返った地下神殿。

石造りの中央の祭壇には古代文字が刻まれていた。


「ここでなら……少しは回復できそうです」


リーンは祭壇の近くに設置したキャンプ用の布地を指さしながら言った。

アルフォンスは小さく頷くだけで精一杯だった。


「ありがとう……リーン」


リーンは優しく微笑みながらアルフォンスの背中に手を当てた。


「もう大丈夫ですよ。あなたの傷は私が必ず治してみせますから」


彼女の白い光がアルフォンスの全身を包み込む。

痛みが徐々に薄れていくのを感じた。


「まさか本当に……四天王を二人を同時に相手取ることになるなんて」


リーンは燃え残った木切れを焚き火の中に投げ込んだ。

パチパチと小さな炎があがり、二人の疲れた表情を照らし出す。


「でもあなたはやり遂げました。あれ程の強敵を倒したのですから……」


アルフォンスは苦笑いを浮かべた。


確かに勝利は掴んだものの神具「聖輝」を手にするまでに、

グラヴィウスとリザミアの二体を相手にした疲労と、リーンを庇った際に

抉られた傷は彼女の治癒魔法といえど即座に完治とはいかなかった。


「あんな化け物たちを相手に……よく生きていたと思うよ」


リーンの手がそっと彼の背中を撫でた。


「あなたに守って頂いたお陰ですが……本当に無茶をしすぎです」


アルフォンスは痛みを堪えながら首を横に振った。


「君を失いたくなかったからね」


その言葉にリーンの頬が赤く染まる。

焚き火の光が彼女の柔らかい髪を照らしていた。


---


暗闇に沈む洞窟の中で、リーンは小さなランタンの灯りを調整した。

アルフォンスは壁にもたれて目を閉じているが眠ってはいない。

傷の痛みや疲れが残っているものの、意識は覚醒している。


「……あの時のこと……思い出していますか?」


アルフォンスはゆっくりと目を開けた。傷が疼く。

「ああ」と短く答えたあと彼の視線が遠くを見つめた。


------------------------------------------------------------

《回想 : グラヴィウス・リザミアとの死闘の直後》


凍えるような風が吹き荒れる戦場の光景。

地面には深い爪痕と焼き焦げた跡が残されていた。


リザミアの胴体に斜めに走った切断線から鮮血が溢れ出す。

声も出せずゆっくりと崩れ落ちていくエルダードラゴンの女王。


(どうして……これほどまで……)


リザミアの心に残るのは敗北の悔しさではない。

自分を上回る圧倒的な力を見せつけた勇者の姿への畏敬と敬意。


一方グラヴィウスは憎悪と激昂を漲らせた表情でアルフォンスを睨む。

切り裂かれた血塗れの翼を広げ、アルフォンスに向かって突進していく。


「まだだぁぁぁ!」


しかしアルフォンスは最小の動きで回避すると背後から袈裟斬りを入れた。


一閃。


「聖輝……これぞ勇者の剣の力!」


グラヴィウスの胸部に聖輝が深く食い込み黒い血液が噴き上がる。

聖輝から放たれた衝撃波がグラヴィウスに致命傷となる一撃をもたらす。


「なぜ……貴様如き……に…」


グラヴィウスが膝をつく。

しかし怒りを抑えきれずアルフォンスに呪詛の言葉を投げかける。


「魔王さま……申し訳ありません……」


一方リザミアの意識は朦朧となりつつも穏やかだった。

彼女は息も絶え絶えになりながらも最後の力を振り絞りグラヴィウスへと手を伸ばした。


「グラヴィウス……」


「リザミア様……!」


二人の視線が交差する。

そこには憎しみではなく深い愛情と信頼があった。


「リザミア様……我々は魔王様のために生まれました……」


「わかっている……しかし……それでも……お前のことは愛していましたよ……」


二人はゆっくりと視線を交わし続けたまま……事切れた。


------------------------------------------------------------



「……愛し合っていたのですね」


リーンの小さな声にアルフォンスは頷いた。

「ああ……とても不思議だった」


戦場で命の奪い合いをしてきた相手が、最後の瞬間に見せた感情の波動。

それが自分と同じ心を持っているということを痛感させた。


(俺は……彼等みたいに人を愛せるだろうか……)


アルフォンスの瞼が熱くなる。涙が出そうになって慌てて顔を伏せた。

リーンもまた黙り込んだまま手元のカップを見つめていた。


---


アルフォンスが深い呼吸を繰り返すたびに彼の胸が上下する。

リーンは眠りについたアルフォンスの顔を静かに見つめていた。


彼の傍らには七色に輝く剣—聖剣『聖輝』が立てかけられている。

刃から放たれる柔らかな光が闇を払うように揺らめいていた。


リーンはそっと自分の手を伸ばし聖杖『聖痕の杖』を手に取った。


彼女の心臓は静かに……確かに鼓動を打つ。

脳裏に蘇るのは勇者の神具に触れた時のことだった……


------------------------------------------------------------

《回想 : リーンが勇者の神具に手を触れたその時》


前勇者の遺跡にあった地下神殿。


石造りの空間を最奥に鎮座する巨大な祭壇。

その石の台には飾り気のない無骨な長剣が存在感を放って鎮座していた。


「これが……勇者の神具……」


リーンは深呼吸をして一歩踏み出した。指先が杖の柄に触れた瞬間。


「!」


まるで雷が体内を駆け抜けたような衝撃。

目を閉じていたにも関わらず眩い光が脳裏に広がる。

膨大な量の知識と記憶が濁流のように押し寄せてきた。


(これは……何…?)


「そんな……私は……」


最初に零れ落ちた言葉。明確な思考ではない。しかし確かに感じられる感情。


「私は……これから……」


次に浮かんできた言葉。未来への決意なのか不安なのかわからない。


「アルフォンス様の為に……」


その名を口にした時だけ明瞭になった思考。

手の中で彼女の神具、「聖痕の杖」が僅かに脈打つように感じた。


(女神フィリア様……私は……必ず……)


彼女はアルフォンスの為の神具の剣を抱きしめ、神殿の外に向かい駆け出した。


------------------------------------------------------------



「これが……私の役割なのですね」


彼女はそっと囁き、側で眠るアルフォンスの顔を見つめる。

欠落した左腕。その付け根に彼女の手がそっと添えられる。


(こんなに辛く酷い思いを……)


左目と火傷で爛れた顔の左側に指先が触れる。

硬くなった皮膚の感触が、彼女の胸を強く締め付ける。


(私は……やり遂げなければならない)


静かに立ち上がりアルフォンスの隣に腰掛ける。

彼の呼吸音と外から聞こえる微かな風の音だけが空間を満たす。


「女神フィリア……私はアルフォンス様のために……」


杖を強く握りしめる。

杖から微かな暖かさが伝わってきたような気がした。


「……未来のために……」


瞳には静かな決意の色が宿っていた。

そして、彼女の最後の言葉は囁き声のように消えていった……



回想シーンをいくつも挟む場面転換の表現が難しいです……

こんなグタグタなシーンなのに分かりにくくてすいません。

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