鈴木和馬 - 日本での日々 - 召喚前の高校生時代
「……さまぁ……?」
甘く媚びたが和馬の意識をかすめる。だがまだ眠い。
温かな布団に顔を埋める心地よさに抗えない。
この感触――いや違う。これは日本の自分のベッドじゃない。
目を閉じたまま、カズマは記憶の海に沈んでいく。
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教室の窓際最後列。それが和馬の席だった。
「おい、次の英語テストどうだった?」
「昨日のボス戦、全然歯が立たなくてさー」
クラスメイトたちの会話が遠く感じる。
和馬は携帯ゲーム機の画面に没頭していた。指先が高速でボタンを叩く。
モンスターがポリゴンの破片となって砕け散る瞬間が何より好きだった。
休み時間になるとすぐ教室を出て誰も来ない図書室の隅で好きな小説を読むのが日課だった。
ライトノベル。異世界転生。チート能力。俺TUEEE展開。
現実ではありえない空想の世界に安らぎを求めていた。
「ねぇ、この問題分かる? 鈴木くん」
「え……? あ、ああ……ちょっと待って」
唐突に声を掛けられて驚きながらも平静を装う。
女子のクラスメイトに話しかけられることは稀だった。
正直嬉しくないわけではない。けれど適切な反応が分からない。
家に帰ると母親が「晩御飯出来てるわよ」と言い、
妹の美咲が「ただいまー」と明るい声で玄関を開ける。
「今日は友達とカラオケ行ってきたんだ」
「新しい服買ってもらったよ」
「あはは」
妹の美咲は自分より一つ年下の16歳。
自分よりも上のレベルの高校に通っている。
妹と自分では別の世界に生きているような錯覚さえ覚えた。
容姿はさほど差は無いはずなのにコミュニケーション能力も高く、
運動も得意で勉強もそれなりにできる。なんい゛こんなに差がついたか分からない。
ゲームの中なら俺だって主人公になれるのに。
そう思ってしまう自分が惨めだった。
夜中までプレイしてはベッドに入る。明日も学校がある。けれど期待はなかった。
朝起きて登校して授業受けて昼飯食って家帰ってゲームするだけ。
変わらない毎日が永遠に続くと思っていた。
そんなある日のことだった。
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いつも通りの朝だった。母親に急かされて朝食を掻き込み家を出る。
美咲はもうすでに登校済みだった。電車に乗って30分揺られて学校へ。
ホームルームが始まるギリギリに教室に滑り込み席に着いた瞬間だった。
床が青白く光りだした。
(地震?)
と思う暇もなく足元が浮遊感に包まれる。周囲から悲鳴と叫び声。
視界が歪み全身が痺れるような感覚に襲われる。
(なんだこれ……気持ち悪い)
平衡感覚が失われ吐きそうになる寸前で意識が遠のき視界がブラックアウトした。
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次に目が覚めたとき周囲には見たことのない豪華絢爛な部屋が広がっていた。
大理石のような素材で作られた柱。
金糸銀糸をふんだんに使った絨毯。空間の灯りを全て担う燭台。
「ここは……どこだ?」
自分の声が掠れて聞き取りづらい。身体中の関節が痛む。喉が乾燥している。
「やっと目覚めましたか」
優しい女性の声が聞こえる。
視線を向けるとローブ?マント?を纏った流れるような金髪の美しい少女がいた。
彼女が微笑みながら近づいてくる。
「勇者様、大丈夫ですか?」
(勇者……?)
疑問符が脳内で踊る。
だが彼女の整った顔立ちに釘付けになる。
美しく透き通った肌。柔らかそうな唇。思わず息を飲む。
(なんかすごい綺麗な子だな……)
「あっ!」
突然何かを思い出し立ち上がろうとするがうまくバランスが取れない。
体勢を崩し倒れそうになるところを彼女が支えてくれる。
その距離の近さに戸惑う。
「あ……ごめんなさい」
恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じる。
こんなにも女の子と接近したことがなかったため緊張してしまう。
「いいんです。驚かれても無理はありません」
優しい口調で話す彼女を見て少しだけ落ち着きを取り戻す。
それでも頭の中は混乱していた。
(なんで俺がこんなところに……それに彼女は誰なんだ?)
問いかけようと口を開きかけた瞬間扉が勢いよく開き複数の男たちが入ってくる。
彼らは鎧兜で完全武装しており明らかに尋常ではない雰囲気を醸し出していた。
「勇者が目覚めたのか!」
大声で叫ぶ男。その威圧感に思わず萎縮してしまう。
「陛下に報告せよ!」
命令口調で他の兵士らしき人々に指示を飛ばす。
(やっぱり俺が勇者ってことなのか? どうしてこうなったんだ?)
考えれば考えるほど理解不能な状況であることに気づく。
それでも目の前にいる金髪の少女を見る限り嘘ではないようだ。
(まあ……とりあえず落ち着こう)
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彼女は優雅に礼をすると言った。
「私は魔導師団所属第一階梯魔道士アリシア=レイヴェルナと申します。
以後お見知りおきくださいませ」
丁寧すぎる挨拶にさらに戸惑う。
「えっと……僕は鈴木和馬ですけど」
なんとか自己紹介しようとするが妙に堅苦しい態度になってしまう。
アリシアと名乗る少女はその様子を見るとほんの少しだけクスッと笑った。
(うわっ……笑われちゃった)
心の中で舌打ちするも反応できずに固まってしまう。
その時ふと自分の中にある違和感を感じ取った。
(あれ? 今の笑顔……)
可愛らしい表情だった。そして同時に感じたことのない高揚感。
胸の奥底から沸き上がる未知の感情に戸惑う。
(なんでだ?)
初めて感じた好意かもしれない。それとも憧れだろうか。
自分でも分からぬまま彼女を見つめてしまう。その視線に気づいたようで再び微笑んでくれる。
「どうされました?」
尋ねられても上手く答えられないまま黙ってしまった。
中身の無い後付け掘り下げ話ですいません。
すいません。次回もまだカズマの話しが続きます。
ラストに向けて必要なパートだと思って頂けたら幸いです。




