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「レインコートくん、そっち行ったよ!」


「了解!」


 アタルに迫る『腐った歯車』に向けて『雨宿り』をフルスイングすると、そのまま吹き飛び床に激突して灰となる。他の個体も親方やフレイム、少女のおかげで退治することができた。


「とりあえず、みんな怪我はないですか?」


「はい、大丈夫そうです!」


「よかった……」


 出口を探してすでに3日目、結構な時間を探索に費やしているがいまだに見つけるどころか手掛かりすらわからない状態だった。


 幸いにも『メサイアコンプレックス』との接触は逃れられているが、いつ出会ってもおかしくないという焦りがメンバーに現れ始めている。


 さらには……


「これでもう今日だけで4回目だよ、ちょっと彼らと出会う頻度が多いよね? 今までもこんな感じだったの?」


「いや、そんなことはなかったはずですけど……」


 アタルの記憶の限りでは、ここまで何度も怪異との接触を行ったことはなかった。『腐った歯車』との戦闘は避けながらも今日だけで4回、この三日間だと合計で17回目となる。以前と比べればありえないほどの戦闘回数だ。


 その分結晶やアイテムを手に入れることができるとはいえ、それも7等分だ。戦力自体は整いつつあるものの、これで『守護者』とやらに勝てるのかもわからない。


「まぁ、ここで考えてもどうしようもねぇだろ。なるようにしかならん」


「そうですね、とりあえず探すしかないですよね」


 親方の言葉を聞いて、思考を切り替え次の探索へと向かうことにしたアタル。最近では戦闘に慣れてきたこともあり、『腐った歯車』たちもスムーズに倒せてその分疲労も軽減されるようになった。


 とはいえすでに何度も戦闘を行っているため他のメンバーにも疲れが見え始めている。そろそろ休憩したいところだと思っているアタルの目に、コンビニが写った。


「あっ、あそこで少し休憩しましょうか。ちょっと疲れたでしょう」


「そうですね、皆さん結構お疲れみたいですし、しっかり休みましょうか」


 フランシーヌもその提案に乗り、他のメンバーも同意をする。


 ひとまずイートインスペースに荷物を置き、椅子に座ってくつろいだり、何かめぼしい商品がないか探索を始める一同。アタルはそんな中、とりあえずはHPを回復するために食事をとっていた。


「どうこれ? せっかく歯車がいっぱい集まったから、もう一本生やしてこっちはロボットアームにしてみたの!」


「すげぇ! ローリエねぇさんかっけえっす!」


「ふふん、これで私も戦えるようになったわね!」


 ローリエとフレイムは楽しそうに会話をしている。彼女の肩からは、新しくロボットアームの形に組み合わされた歯車が生えている。器用に動かしカチカチと音を鳴らしているが、拘束や殴打などの使い方をするのだろうか?


 アタルはその様子を見て、確かに戦力が増えるのは嬉しいが、あまり無理はしてほしくないと思ってしまうのであった。


「どうしたの、考え事?」


 そんなことを考えているアタルの傍に、ギタリストがやってくる。手にはエナジードリンクと総菜パンを握り、アタルの隣の席に座ってその封を開いた。


「えぇ、ローリエさんがやる気になってくれるのは嬉しいけど、あんまり無理はしてほしくないなって思っちゃって……」


「なるほどね」


 ギタリストも楽しそうにはしゃいでいるローリエたちに目を向けて、同意する。そしてアタルに優しそうな目線を向けて穏やかな口調で話しかけてくる。


「だけどそれは、君に対してもそうだよ」


「……俺ですか?」


 ギタリストからの思わぬ言葉に、思わず問い返すアタル。


 その様子を見てギタリストはクスリと笑いながら、再び口を開いた。


「君は僕たちよりもこの『異界』の先輩だからって、なんでも抱え込もうとしたり、無茶しようとするでしょ?」


「けどそれは、僕だけじゃなくみんな心配しているんだ。だから、もうちょっと僕たちのことを信じて、任せてほしいなって」


「……そうかもしれませんね」


 確かにアタルは彼らよりも早く来たことから、全員で無事に帰還しようと、彼らをしっかり守ろうと責任を感じてしまっていた。しかしそれは最初の頃ならまだしも、全員が戦えるようになってきた今でも背負い込もうとする必要はない。それは逆に、彼らを信じていないというのも同じことだとアタルは気づくことができた。


「それじゃあ、これからはもっと頼ってもいいですか?」


「もちろん、みんなそのつもりだと思うしね」


「おーい、レインコートさん、ギタリストさん、色々と面白いものを見つけましたよー!」


 その時、フランシーヌたちが様々なお菓子を抱えて戻ってきた。どうやら昔とあるメーカーが発売した挑戦的な味のスナック菓子をいくつも見つけてきたようだ。


「うわっ、激辛わさび味に新生姜味、ピクルス味やパクチー味のポテチに、プリン味のポリンキー、ゴボウ味のカントリーマアムまである……」


「なんで、こんなに変なのばかり……」


 驚いているアタルたちの反応を見て、楽しそうに笑う一同。この後彼らは楽しそうにこれらの味の感想を語りながら完食し、この場を後にすることとなった。






「……やっぱり」


「どうしたの、フレイムくん?」


 狭い路地を通っている際に、ぽつりとフレイムが呟く。


 それに反応して少女が問いかけると、フレイムは意を決したように口を開いた。


「やっぱり俺、変な奴に付けられているような気がするんだ」


 フレイムが気にしているのは、以前から時折感じる獣の気配。視界の端に毛むくじゃらのナニカが動くような気配を感じるも、直接それを目にすることはできず確信を持てなかった。


 しかし、何度も同じことが起こることから、もしかしたら付け狙われているかもしれないと感じるようになったのだ。


「さっきも、背後の曲がり角から変な毛むくじゃらのナニカがこっちを覗いていたように見えたんだ。本当は前から感じてたけど、ずっと気のせいかもって思ってたけど、たぶん気のせいじゃないって!」


「後ろか、お前さんは何か感じたか?」


「ううん、とくには」


 その話を聞いて、一番背後を歩く親方とギタリストが確認を取りあうも、どちらも思い当たるところはないようだ。


 その反応を見て、ローリエがからかうようにフレイムに話しかける。


「どうしたの? ちょっと怖くなって過敏になりすぎちゃった? 安心できるようにヨシヨシしてあげよっか?」


「ばっ!? 違えって!! 本当なんだって!」


「またまたぁそんなこと言っちゃって……」


「いや、本当かもしれません」


 フレイムの話を聞いて、アタルは考えながら口を開く。頭の中に思い浮かべるのは、あの『失せ物漂着場』で拠点となった建物に誘ってきた幽霊のことだ。


「今までに前例はありませんけど、俺もここにきてそこまで長いわけではありませんし、自分に気づいてほしくて呼び寄せるような奴もいました。気を付けて損はないと思いますよ」


「そうだね、こういうのは冗談として流すよりは、しっかりと警戒した方がよさそうだ」


 アタルとギタリストの話を聞いて、ローリエはフレイムをからかったことを恥じたのか顔を真っ赤にしていた。


「そ、その、ごめんなさいね。茶化しちゃって……」


「いや、俺もちゃんと信じてもらえるかわからなかったから、仕方ないって……」


「あんた、いい男ね。私が同い年だったら惚れてたかも」


「うっ、うるせー! 結局からかってんじゃねぇか!」


「からかってないわよ~、本当よ~」


 二人が再び漫才を始めたのを見て呆れ始める他メンバー。アタルは緊張感がないなぁと思いながらも、重苦しいよりはいいかと思って正面を剥こうとしたその時、突如フレイムが顔を背後に向けた。


「誰だ!」


「ひゃっ!? ど、どうしたのよ……」


「い、今見えたんだって! はっきりと、サルの見た目をしてた!」


 フレイムが後ろの曲がり角の方を指さすが、そこには何も見えなかった。そこで、ギタリストが角の方を注視しながらフレイムに問いかける。


「フレイム君、本当にいたの? どんな感じだった?」


「本当だって! なんていうか、売れない遊園地のマスコットキャラみたいな、ボロボロの着ぐるみみたいな見た目の面長のサルで……」






「『夢猿』って、表記が出たんだ!」






「なっ!」


 アタルがその名前を聞いた瞬間に、前方から視線を感じてそちらに目を向けると、目が合った。


 それは、出来損ないのオモチャのような、マスコットキャラクターのような、目がガン開きの不気味なサルだった。遠くから見ただけでも、毛皮のない顔部分の質感は血の通った皮膚と言うよりも布のようなものであるとわかる。


 目の前の通路の角から体の半分を出してこちらを見つめ、黄ばんだ汚らわしい歯をむき出しにして笑っている。


「あれは……」


 アタルがそうつぶやくと、その頭上に『夢猿』という表記が現れる。


 そして、それと同時に『夢猿』が飛び出してきた。


「ウキキーウキウキウキ キーウキウキキーウキ ウキウキキーウキ キーウキ ウキウキ!! ウキキーウキウキウキ キーウキウキキーウキ ウキウキキーウキ キーウキ ウキウキ!!」


「キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーウキウキ ウキウキ!! キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーウキウキ ウキウキ!!」


 全体像があらわになったその姿は、お世辞にも友好的とは言えないものであった。


 彼らが手に持つのは、おもちゃのシンバルでもなければ、ドラムでもない。赤黒く血肉のついたノコギリや巨大なハサミ、肉切り包丁などであった。


「まずい、正面からくるぞ!」


「ダメだ! 後ろからも来てる!!」


「全員、戦闘準備だ!」


 狭い通路で挟み撃ち。突如現れた『夢猿』たちとの、突発的な戦闘が始まる。






 『レインコート』(雨野 中)


 HP18/28 MP16/17


 術式 『霊術:霊傘』『霊術:雨乞い』『霊術:雨上がり』


 状態 『川の主の寵愛』『救済対象』 繝サ縲手オ、縺?岑縺ョ蜻ェ縺?? 繝サ縲主セ。菴ソ縺?巨縺ョ邏?據縲       


『夢猿』


 キーウキウキ ウキウキ ウキウキウキキー キーウキ ウキウキキーウキ ウキキーウキウキウキ キーウキキーウキキー キーウキキーキーウキ 


 キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーキーウキウキ ウキウキ ウキウキキーキー キーウキ ウキウキ ウキキー キーキーキーウキキー キーウキキーウキウキ 


 ウキキー キーキーウキキーウキ キーウキキーウキ キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーウキウキ ウキウキ 


 ウキキー ウキキーキーウキ キーウキウキキー ウキキーウキキーキー ウキウキ キーウキウキキーウキ 


 キーキーウキキーキー ウキキーウキ キーウキ キーウキウキウキ ウキキーウキウキウキ キーウキウキキーウキ ウキウキキーウキ ウキキーウキキーキー ウキウキ 


 キーウキウキ ウキウキ ウキウキウキキー ウキウキウキ ウキキーウキウキ ウキウキ キーキーウキキーキー キーキーキーウキ キーキーウキウキ ウキウキ ウキウキキーキー 


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