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服屋

「なるほど、そんな化け物が……」


 まだ深夜ではあるが、メンバー全員を起こし先ほどの怪物についてローリエは話した。化け物の容姿や言動について、何かを探している様子とどこかへと消えていったことなど、覚えている限りのことを話し、今後どうするかを考えるためだ。


 こんな夜遅くに起こされて不機嫌だったものもいたが、それが命にかかわるものだと理解すると真剣に話を聞いていた。恐ろしい怪物に襲われそうになったところを、間一髪生き延びることができたのだから。


「それで、何かを探している様子だったから、もしかしたらまた戻ってくるかも。それに、次あったら助けるって……」


 ローリエはそこまで言って、顔を真っ青にして体を震わせた。あの怪物に直面した際の恐怖が蘇ったからだ。ちなみに、みんなが起きた時にはなぜか彼女はフランシーヌのローブを着ていた。


「そうですか、すいませんローリエさん」


「……ううん、いいのよ。見張りを買って出たのは私の方だから」


「いえ、そうではなく…… 実は俺、そいつと会ったことがあるかもしれないんです」


 ローリエの話を聞いて、アタルは自分の失態を思い知った。偶々彼女が助かったからよかったものの、もしそうでなければ……


 そんな恐ろしい想像を頭から振り払い、しっかりと情報共有するべきだと考えて話を切り出した。


「あなた達と出会う少し前にその怪物を見かけました。『助けてあげる』と言いながら『腐った歯車』に食らいつくあの怪物を見て、恐怖を感じながら逃げ出しましたが…… そんな奴がいると言うと皆さんをいたずらに怯えさせるだけかと思い話していませんでしたが、むしろ危険にさらしてしまってすいません」


「……いいのよ、私は助かったし、でも次からは教えてもらえると嬉しいわ」


「わかりました、気をつけます」


「よし、それじゃあこの話は終わり! それで、もしかしたらそこらへんをまだうろうろしてるかもしれないから、これからどうしようかって話をしたいの」


 空気が重くなってきたところで、ローリエが明かるく振る舞って話を切り替える。怪物の存在を認識して、これからどうするかを考えなければならない。


「そうだね、さすがにその怪物にこの場所がバレてしまったんだったら、移動した方がいいかもしれないよ?」


「それなら、ちょっと探したいところがあるんですけど、いいですか?」


 そこで、フランシーヌが手を上げて発言する。みんなの視線が集まってから、彼女は話の続きを始まる。


「もし脱出するまでに長い時間がかかるのでしたら、できれば着替えがあったら嬉しいなっておもうんです。なので、どこかで服を見つけられればと……」


「確かにそうですね、替えの服、せめて下着だけでも欲しいところです」


 彼女たちはこの異界に来てからまだ1日目だが、アタルはすでに何日も過ごしている。『失せ物漂着場』ではコンビニのバックヤードに洗濯機があったため選択はすることができたが、ここではそういったものはない。ならせめて下着の替えくらいは欲しいと思っていたのだ。


「確かにのう、動き回るのに向いてない服を着とるものもいるし、その方がよさそうだ」


「ローリエのねぇさんとかはスーツだしな」


「汚れはHPでどうにかできないのかな?」


「試したことはないですね…… でも、気分的にも着替えは欲しいところです」


「なら、次は服屋さんをさがそうか。できれば靴屋さんとかも見つけたいところだね」


 そういってギタリストはみんなの足元を見る。アタルやローリエは革靴だし、少女も学校指定の革靴だ。親方に至っては下駄である。


「それじゃあ次は服屋さんのある場所を探してみるとして、もうすぐに出ますか?」


「正直そんな怪物がいるなら、俺はさっさとどっか行きたいな」


「私も…… ちょっと怖いですし」


「ガキどもがそういってるんなら、さっさと出ちまおう」


 みんなの意見が固まり、この喫茶店からすぐに退出することとなった。


「フランシーヌさん、ありがとうね」


「いえ、どういたしまして」


 ローリエがフランシーヌにこっそり耳打ちしていたのは、誰も気づかなかった。






「……意外とあっさり見つかりましたね」


 広い通路を抜けると、吹き抜けのアーケードのような場所に出た。アタルたちの出てきた通路の近くには、服屋のようなものがあり、シャッターもあいていた。


 かなりの広さはあるものの、少なくともアタルたちの周辺に怪異の姿は見えなかったため、さっそくそこに入っていくアタルたち。入口は親方が見張り、他のメンバーでとりあえず着替えの服を探す。


「わぁ、すごいラインナップね! いろんな服があるわ! しかもお値段もお手頃!」


「うぅ、こんな状況じゃなかったらお財布のひもが緩んでたかも……」


「そんなに持ち運べないですもんね、できれば2着くらいは欲しいですけど……」


 女性陣は服を見ながら嬉しそうだったり、悩ましそうだったりで忙しそうだ。


「うわっ、見てよこれ、ふんどしあるぜ!」


「へぇ、ちょっと興味あるな……」


「でも着方わからないし、別のものを……」


「あぁ、それなら俺が知ってる。知りたかったら教えてやろうか?」


「マジで!? さすが親方だぜ!」


 それに比べ男性陣はしょうもないことで盛り上がっていた。


 親方は見張りをアタルと変わり、フレイムたちにふんどしの着方を教えに行った。


「……あれ、なんだあれ?」


 そこで見張りを変わったアタルは、吹き抜けの下に謎の球体が存在していることに気が付いた。


 アタルの呟きに反応するかのように表示が出るも、遠すぎて良く見えない。


 それを見て怪異と理解し、なんとか目を凝らして名前を確認しようとするアタルだが、そうこうしているうちにその球体はボロボロと崩れていった。


「崩れた……? いや、違う!」


 よく見れば、球体から何かが剥がれるように離れていき、それら一つ一つに画面が表示されている。


「まずいぞ皆、怪異だ!」


 こちらに向かって飛んでくる怪異が近づいてくることでその正体が判明する。


 『衣替え』


 服の形をした怪異がアタルたちに向かって飛び出してきたのだった。






 『レインコート』(雨野 中)


 HP9/23 MP8/14


 術式 『霊術:霊傘』『霊術:雨乞い』『霊術:雨上がり』


 状態 『川の主の寵愛』 繝サ縲手オ、縺?岑縺ョ蜻ェ縺?? 繝サ縲主セ。菴ソ縺?巨縺ョ邏?據縲       


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