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幻想異聞録ムーンデーヴァ  作者: 天槻悠奈
二章 週末ブレイク!
32/71

30話 見上げた先、赤き凶星が満ちる頃

 ――遡ること少し前。

 龍神市は中心部に近付くにつれ道が入り組み、複雑になる。

 狭いスペースに無理矢理施設を詰め込んだ弊害だ。

 たった一本道を外れただけで風景が様変わりするし、華やかな高級住宅地から川を一本隔てた先に治安の悪い路地があったり。

 中心部に程近く、治安が良いとされている商業地区も例外ではない。

 大通りから道を一本隔てた裏路地は、そこだけ世界が死んでしまっているかのように静かだった。

 昼間にも関わらず陽の光が差し込まず、薄暗い裏路地の風景に埋没するようにひっそりと建つ廃ビルの屋上に、二つの人影があった。


挿絵(By みてみん)


 二つの影の内、小さい方……飛行帽を被った少年は到着するなりボストンバッグを開き、複雑な模様の魔法陣が描かれた羊皮紙を広げている。

 対して少年の右隣。

 初夏に着るには暑そうな黒いタンクトップの上から袖なしジャンパーを羽織り、ショッキングピンクのホットパンツとピンヒールで脚線美を惜しげもなく晒している、色んな意味で主張の激しい女は不満げな態度を隠そうともせず、つんと顎を上げてフェンスにもたれかかっていた。


「まったくもってあり得ませんわ。どうしてわたくしが見張りなんて地味な仕事をしなければならないんですの? あのいけ好かない銀色は一桁台(・・・)というだけで大役を任されているのに。私だって元幹部の妹なんですのよ?」


 黙々と荷物を設置している少年だったが、手伝いもせず、取ってつけたようなお嬢様言葉で延々と愚痴を漏らすだけの女を見かねてか、作業する手はそのままに口を挟む。


「おい馬鹿女、仮にも年頃の女が個人情報を軽率にバラ撒くな。その軽い口を縫い止められたくなければ今すぐに黙れ。もしくは去れ」


 女子供であれば泣き出されてもおかしくない辛辣な言葉だが、女は何故か口元を綻ばせる。


「あら、心配してくれますの? 目玉焼きくんは優しいですわね。でもごめんなさいね? わたくしは最低でも身長百八十センチ以上、年収は一千万以上の男性としか結婚するつもりはありませんですのよ。十年経ってから出直してくださいまし」

「なんで告白してもいないのにフラれる流れになってるんだ……?」

「あら、わたくしがゴージャスでビューティフォーなエリートだからって照れる必要はないのよ。子供であろうと男は男。わたくしに見惚れるのは自然の摂理。わたくしの美しさこそが罪なのですわ!」

「おかしいな、どっちも同じ国の言語で話してるのに会話が全く成立しないなんてことがあるのか?」

「オーッホッホッホッ!」


 女はすっかり自分の世界に入ってしまったようで、芝居がかった動きで高笑いし始める。

 少年は宇宙の真理を見た猫のような顔で呆けていたが、まともに取り合うだけ時間と気力の無駄だと判断したのか、すぐに話題を変える。

 彼も彼で、中々の胆力の持ち主である。


「話を戻すが、うちは年功序列なんだから仕方ないだろう。本気で出世する気があるのなら、文句を垂れる前に仕事をしろ」

「雑用は小間使いの役目でしてよ」

「君も同じ下っ端だろう。それに君の兄が()幹部だからと言って、君自身が偉いわけではない」

「ぐぬ……」


 痛い所を突かれたとばかりに女が呻くが、少年は鋭い声で『ユノ』と女の名を呼び、畳みかける。


「常日頃から思っていたが、君の態度は目に余る。能力はそこそこあっても、集中力皆無で上司の話すらロクに聞かない。朝礼や定例会議も何かと理由をつけて欠席したがる。自分より先に出世した同期や後輩を妬んで陰口を叩く一方で、上司には猫撫で声で擦り寄る。そんなザマで出世できると――……」

「う……うるさいわね! 手伝えばいいんでしょ!?」


 抑揚のない声で淡々と、現実逃避のしようもないほど徹底的に正論を突きつけられ続け、顔を真っ赤にして俯いていた(ユノ)は、とうとう逆ギレした。

 説教を遮るように大声を上げ、乱暴な手つきで少年の手にある荷物を奪い取ると、目にも留まらぬ速さで設置してゆく。

 もう一度言う、完全なる逆ギレである。


「あまり大きな声を出すな。人に気付かれたらどうする」

「ふん、バレやしませんわよ。今の時間警備員は居ないし、外から見られる心配もない。あなたも分かってますでしょう?」


 注意されてもユノは反省するどころか、開き直った態度で堂々と屁理屈を主張してくる。

 だが、彼女の指摘通り、この路地は商業地区の中でも低所得者が集う場所だ。

 治安が悪いというほどでもないが、皆自分の生活だけで手一杯だから、他人に構うだけの暇も、空を見上げて景色を楽しむ精神的余裕すらも持ち合わせていない。


「うーん……それもそうか。まぁ、万一に備えて隠蔽魔術もかけているし、大丈夫か」


 少年はまだ物言いたそうにユノを見つめていたが、何を言っても今みたいにのらりくらり返されそうだと判断し、口をつぐむ。

 仕事をしてくれるならなんでもいい、と半ば脱力するようにその場に座り込んだ。

 少年がユノのワガママに負けた瞬間だった。


     *   *   *


 数分後。

 吹っ切れたユノの手によって、簡易祭壇は予定よりも早く設置された。


「普段やる気ないくせに、スイッチ入ると早いんだよなぁ……」

「グダグダ言ってないでさっさと起動してくださいまし。目玉焼きくんはわたくしの努力を無駄にするおつもりなんですの?」

「その呼び方マジでやめろ、シバくぞ」


 はたから見れば夫婦漫才にしか見えないやり取りを交わしつつも、少年は簡易祭壇の前に立ち、呪文を呟く。

 そして懐にしまっていたナイフで自分の指先を傷つけ、魔法陣に血を数滴垂らした瞬間、魔法陣を中心として屋上全体が赤い光を放ち始める。


「ひっ、ひぁぁぁああぁああああぁああぁぁあああぁぁ!? 眩しいんですの〜〜〜〜〜!?」

「マジでうるさい」


 光に驚いたユノは反射的に悲鳴を上げ、キツく目蓋を閉じる。

 少年は毒を吐きつつも慣れた手つきでハンカチを巻いて止血を済ませると、再び詠唱を始める。

 光が収まり、乱れていた魔力の流れが安定した頃、少年は溜めていた息を吐き、袖口で額の汗を拭った。

 風に乱れた金髪を鬱陶しそうに掻き分けながら、ユノが少年の肩越しに祭壇を覗き込む。


「終わりましたの?」

「ああ。他の奴らが失敗してなければ、時間通りに起動するはずだ」

「ふぅん……ところでコレって何の魔法陣なんですの?」

「おまっ……天咲(アマサキ)様の話を聞いていなかったのか? まさかこれから何をするかも知らないでここまできたんじゃないだろうな?」

「オーッホッホッホッ! 蟻のように働くのは小間使いの役目でしてよ!」

「自慢げに言うことじゃないし、君も下っ端だからな?」


 完全に瞳からも声色からも温度を失くした少年が今一度諭すが、ユノは聞こえていないのか、それとも敢えて聞こえないフリを決め込んでいるのか、ふんぞり返って高笑いを続けていた。


「やれやれ。なんでこんな馬鹿とペアになっちゃったんだろう」

『まったくその通りだな』


 ユノの耳障りな甲高い声とは異なる、腹の底に染み渡るような低音に、少年はハッとして退け反った。

 薄汚れた建物には不釣り合いな、よく晴れた日の雲から生まれたような真っ白な毛並みを逆立てる仔猫の姿に、ユノの淡紫色の瞳が見開かれる。


「なっ、あんたは……!」

『久しいな小娘。私は会いたくなどなかったが』


 白猫が牙を剥き出し、獰猛に笑う。

 表面上は冷静に振る舞っているかに思えるが、月成の前では決して見せない厳しい表情と口調が、炎のように暴れ狂う魔力の帯が、彼女の怒りの激しさを現している。


『許さぬ……二人きりで外に出るのは今日が初めてだったというのに…… それも鍛錬ではなく、遊行(デート)だというのに……!  ホオヅキは胡散臭くて気に食わないが、粋な計らいもできるのだと多少評価を改めたのに……! わざわざ藍に新しい服だって用意してもらったのに……! 決して許さぬ……!』

「何を言っているのか分からないが、激おこぷんぷん丸なのは分かった」

「それ死語ですわよ」


 ギリギリと音が鳴るほど奥歯を噛み締めながら、呪詛を吐く白猫に、流石の少年も青ざめている。

 アレは、あの殺気は、間違っても小動物から出ていていいものではない。

 突然の出来事に混乱していたユノだったが、すぐに元の余裕綽々な表情に戻る。


「ふん。強制発症薬ファントムを打たれて生きていたとは、悪運が強いですわね。それとも天咲の(せがれ)がしくじったのかしら」

『ああ、確かに私は運が良いだろう。身の危険も顧みず助けにくる大馬鹿者がいたのだからな』


 白猫はそっと紫の瞳を伏せる。

 自分の意思に関わらず幻界ラビリンスを生み出してしまった時。

 なるべく人を傷つけないよう、強く気を保とうとしていたが、はっきり言って無駄な抵抗だった。

 幻想と現実の狭間を彷徨い続ける意識の中で、無意識に助けを求めていたが、心の何処かではもう手遅れだろうと諦めていた。

 せめて誰かを傷つけてしまう前に殺してほしいと願っていたら……突然自分を包んでいた殻が弾けて、気付けば泣きたくなるくらい優しい色の焔に包まれていた。

 終わりの見えない絶望の海からあっさりと彼女を引き上げたのは、自分よりもずっと小さな男の子だった。

 あんなに小さくて華奢なのに、磨き上げられた宝石みたいに煌めく金色から目が逸らせなくて。

 多分、その瞬間だったと思う。

 もう一度だけ、誰かを信じてみようと思ったのは。

 月成との出会いを思い出し、多少冷静さを取り戻した白猫は、改めて状況を整理する。

 彼らと出会うのは二度目。

 一度目は心身共に弱っていたせいで太刀打ちできなかったが、万全を期した今なら大して苦戦する相手でもないだろう。


『さて……聞くまでもないが、コレはおまえたちの仕業だな?』


 白猫は首輪に引っかけていた注射器を外し、見せつけるように転がす。

 薄く赤みがかったグロテスクな色合いの液体が注射器の中で揺れる様を見て、何の薬品か気が付いた彼らの表情が険しくなる。


『当然見覚えがあるだろう? おまえ達の十八番なのだからな』

強制発症薬ファントム……! どうしてあなたがそれを……!?」

『お仲間から押収させてもらった』


 歯噛みするユノを、面白い見世物でも見るように白猫が見下ろす。

 白猫が強制発症薬ファントムを手に入れたのは、偶然の産物だ。

 月成が店を出て間もなく、精神操作魔術をかけられた男が移動を始めたので、自身も店を出て、男を追った。

 人型ではどうにも人目を集めてしまい、自由に動き回れないので猫の姿に化けて男の行き先を探った所、なんとアニマコンテストの会場近くの路地に辿り着いた。


『アレは傑作だったな。精神操作魔術をかけられたニンゲン達がぞろぞろと集まって、子供一人を囲んでいたのだから。見ず知らずの子供を助ける義理はないが、おまえ達には借りがあるからな。遠慮なく奴らの急所に全力の蹴りを叩き込んで、色んな意味で再起不能にしてやった』

「なんて恐ろしい真似を……」


 分かりやすく顔を真っ赤にして戦慄いているユノとは違い、殆ど表情の変化を見せなかった少年が、ここに来て初めて顔面蒼白になりながら自分の股間をそっと庇う。

 恐らく、この場に月成やバーンがいたとしても全く同じ反応をしたことだろう。

 玉を持たざる者には決して分からない恐怖である。


『で、助けた少年にも手伝わせて街全体の魔力を探って怪しげなポイントをしらみ潰しに当たっていたらおまえ達がいたわけだ。覚悟はできてるだろうな』

「よしユノ逃げよう、今すぐに」

「はぁ!? 命令はどうするんですの!?」

「命が最優先に決まってるだろ! 僕のボールは二個しかないんだぞ!」

「二個……? 何の話ですの?」


 少年はユノの背中を押して退却させようとするが、白猫が全身に魔力を纏わせ、飛び出してくる方が速かった。


一撃必殺プリンセス竜姫玉蹴ジャッジメント――……!』

「……ッ、鏡の魔眼(シュピーゲル・アイ)!」


 真っ白な毛に覆われた脚が二人を射抜いたその瞬間、衝撃波と共に白猫が弾き飛ばされる。

 紙のように軽い体は容易く空中に投げ出され、三回転した後優雅に屋上のフェンスへ着地する。


『……魔眼持ちか』


 吹き飛ばされる直前、殆ど黒に近い赤錆色だった少年の瞳が真っ赤に光っていたのを見た白猫は苦々しげに呟く。

 鏡の魔眼という名前、そして渾身の一撃を跳ね返されたことから、恐らく攻撃反射系の効果を持つ魔眼だろう。


(ハッキリ言って、面倒だな)


 仮に反射できるのが物理攻撃のみならば、肉弾戦を主体とする白猫とは相性が悪いが、遠距離魔術もできなくはない。

 むしろ魔術は教養の一環として勉強してきたので、付け焼き刃で自己流が目立つ月成よりも練度が高い自信はある。

 最悪なのは、物理のみならず、魔術も反射可能な場合。

 そうなれば、どちらが先に倒れるかの消耗戦だ。

 とにかく、相手が体勢を立て直す前に畳み掛けるしかない。


『――炎弾フレイム!』

「――散弾ショット!」


 特大の火球を三つ生み出し、投げつけるが、相手に届くよりも早く撃ち落とされる。

 見れば、ユノの手には魔煌石が握られている。

 考えるまでもなく理解する。

 この数週間、嫌になるほど見てきた魔術だったから。


『……なんで皆して鉱石魔術を使いたがるんだ。コスパ最悪なのに』

「わたくしはセレブでリッチですのよ! 宝石に糸目はつけませんわ!」

「厳密に言えば魔煌石エーテルクリスタルは宝石じゃないぞ、お馬鹿」

「オーッホッホッホッ! 次はわたくしの番よ! あなたにこのゴージャスでエキサイティンな弾幕が避けられるかしら!? 五色合成(クインテット)散弾ショット!」


 少年のツッコミを高笑いで華麗に無視(スルー)し、魔煌石をばら撒く。

 極彩色に輝きながら放たれる散弾を、白猫は危なげなく回避するが、予想よりも攻撃範囲が広い。

 月成は近距離から中距離の一点狙いの射撃しかしないから、つい反応が遅れてしまうわた。


「まだまだ魔煌石はありましてよ! 五色合成(クインテット)追撃弾ホーミングミサイル! 五色合成(クインテット)爆弾ボム! 更にダメ押しの五色合成(クインテット)砲撃ランチャー! ですわ!」

『くっ……』


 威力自体は大したことはないのだが、攻撃範囲が広すぎて回避が難しい。

 どうにか身体能力と勘で避けられてはいるが、連射性が高く、避けても避けても次の弾が襲いかかってくる。

 更に追尾機能付きの弾も放てるようで、回避したと思っても追いかけてくるのが面倒臭い。

 この屋上だけで戦うには狭すぎるので、近くのビルからビルへと飛び移り、立体的に空間を扱うことで相手の裏を掻くのが精一杯だった。


『ああも質の高い魔煌石を湯水のようになんて……使う先にあの女から潰しておかないと迂闊に近付けませんね……』


 大量の魔煌石を消耗品にする魔術なんてコストが最悪だし、ハズレだと思っていたが、資金力に裏打ちされた鉱石魔術は中々厄介だ。

 技のレパートリーも月成の比ではない。

 何故この馬鹿な女があの組織(・・・)でやっていけているのかと不思議に思っていたが、自らをエリートと宣うだけあって、魔術の腕だけは確かなようだ。


『……私の勘も鈍ったものだ。どうやらおまえ達を見くびりすぎていたようだな』


 さて、どう出るか。

 魔弾が尽きるまで待つ? いや、その前にこちらの魔力が尽きそうだ。

 人型に化ければステータスが引き上げられるが、そもそも詠唱する隙を与えてくれそうにない。


『自爆覚悟で特攻する他ないな。やはりツキナリをこの場に連れてこなくて正解だったな……』


 月成を遠ざけたのは万が一に備え、危険から遠ざける為でもあったが、この様子ではその判断は当たっていたらしい。

 そんな予感は外れてくれていた方がよかったが。

 決心した白猫はわざと鉱石弾をギリギリで回避すると、爆炎に身を隠す。


「隠れても無駄ですわよ!」

「ッ、おい馬鹿女、やめろ!」


 白猫を見失ったユノは手当たり次第めちゃくちゃに魔術を放つが、一瞬遅れて白猫の狙いに気が付いた少年が悲鳴にも近い声を上げる。


『対処する隙など与えるものか』


 白猫は脚力強化の魔術を限界まで引き上げた。

 筋や関節が悲鳴を上げるが、このくらい月成ならいつもやっている、少しの辛抱だと言い聞かせて耐える。

 煙から煙へと素早く移動し、身を隠しながら距離を詰めてゆく。


(もう少し――……あとちょっとで……来た!)


 射程圏内に入った瞬間、ありったけの魔力を注ぎ込んで特大の炎弾を練り上げる。


『ゼロ距離炎弾(フレイム)!』

「しまっ……!?」


 至近距離から炎弾を叩き込む。

 勝利を確信した一撃だったが、意外にもユノは即座に魔術を練り、迎え撃とうとした。

 その反応速度は悪くないが、急拵えの術式で打ち消せるわけもなく、あっという間に屋上が爆炎に包み込まれる。

 白猫は仮にも炎の加護を受ける種族なので、生半可な炎で傷つくことはない。

 彼女の炎で傷付くのは、周りだけだ。

 視界を覆う煙が晴れると、すっかりひしゃげて形の変わったビルが露わになる。

 人間など跡形もなく吹き飛んでしまったかに思われたが、白猫の警戒が緩むことはなかった。

 屋上は足場のコンクリートが崩れ、柱がひしゃげ、未だそこら中が火の手が上がっているなど、見るも無惨な有様に変わり果てていたが、ユノ達の佇む祭壇の周辺数メートルは傷ひとつなく、爆発の前と何ら変わっていない。

 呆然と固まっているユノを背中に庇いながら赤い瞳を光らせる少年の顎を、滝のような汗が滴り落ちる。


「……初級魔術の威力じゃないだろ。バケモノかよ」

『その言葉、そっくりそのままお返ししますよ』


 どうやら、最悪の可能性を引いてしまったと察した白猫は、心の中で溜息をついた。

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