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乙女ゲームで追放されたヒロインの私、国王と大魔導師になって気づけば逆ハーレム!?  作者: 星川海
⚜️ 第1章 ⚜️ 乙女ゲームを超え、オープンワールドへ――
3/20

第3話 ⚔

 目の前には、幅10メートルほどの川がゆったりと流れる。その川岸には緑が生い茂る。清涼な空気が漂い、せせらぎの音が静かに耳をくすぐる。


 アスタリアはオーダーメイドの空色のフード付き衣装を身にまとい、背中に荷物を詰めたリュックを背負い、輝く瞳で前を見据えていた。


 足元には『魔法の乗り物』――金色の光を放つ円と六芒星の形が広がり。


 地図に従って水路沿いに移動する。大通りを避け、『魔法の乗り物』を使っているところを人に見られないようにするためだ。


 水源周辺にはまだ人が出入りする可能性がある。

 速く飛べるガーネットに頼み、上空から道に人がいないか確認してもらう。


 ガーネットは白金色の羽を持ち、外見はアルバトロスや鷲のような鳥。


 『光魔法』は思いのままに「光」を召喚することができる。


 職人に依頼して、金属線を巻尺のように巻いたコイルを作らせた。


 その金属線に光魔法を注ぐと、光魔法のエネルギーが金属を動かす力に変わり、金属線が動き出す。光の特定周波数が金属内の自由電子と共鳴し、これが金属線を動かす原動力となる。


  金属線で円を描き、その中に六芒星の形を描き、水平を保ち、光魔法で作った『魔法の盾』で身を守り、その上に立つ。


 進みたい方向を選び、反対側にエネルギーを放つと、魔法で移動できる仕組みになっている。


 魔法の乗り物と光の魔法盾を併用すれば、『光盾』で気流を遮断しながら高速移動が可能だ。


 ほうき型の魔法の乗り物も作れるが、私はこの丸いスケートボードのような形の魔法の乗り物を気に入っている。


 この世界の民間には魔法や精霊に関する情報はほとんどなく、『モンスター』と戦う話など聞いたこともない。


 目にするのは、だいたい現実的で論理的に成り立っている世界だ。


 光の魔法を使えば、魔法を光らせることも、光らせないこともできる。

 普段は光盾を光らせず、魔法の乗り物は人目に付かない時だけ光らせる。今は人目を避けて、魔法を光らせると楽しいから、光らせておこう。


 アスタリアは魔法の乗り物で川沿いを進むと、青や黄色の草木、茂み、田畑、平原が風に乗り、絶え間なく風景が流れていく。


  2日後、アスタリアは国境近くの小さな町に到着する。


 この辺境の小さな町では、石造りの家々が立ち並び、町の中心には広場が広がっている。

 広場には日差しを浴びて人々が集う市場が賑わっており、その中には少し珍しいものとして、近くの鉱山で使うための道具も数多く並んでいる。


 アスタリアは町で少し食料を買う。


 その時、誰かがアスタリアのすぐ横を素早く通り過ぎ、アスタリアは一瞬目を凝らした。すると、後ろから叫び声が聞こえた。


「泥棒!誰か助けてー!」


 視線を追った先で、灰色の服を着た痩せた泥棒らしき男が遠くへ走り去っていく。途中で二人にぶつかって倒していった。


 アスタリアの胸に挑戦心が芽生え、興奮の笑みを浮かべながら「私が手伝おう」と思った。


 その時、白金色の鷲のような鳥が一羽、空を横切りながら、鋭い目で盗賊を追っていた。


 振り返ると、焦った様子の少女が目に入る。深い青色の古びた布のスカートを履き、蜂蜜色の髪を二本の短い三つ編みに結び、この辺りの平民の少女らしい装いをしている。


 人混みの中から、黒髪で細目の若い筋肉質の男が言った。


「ああ、あの飛び泥棒は常習犯だ。近くの山賊団の一員だよ。」


 周囲の人々は彼女を心配していたが、盗賊の逃げ足はあまりにも速く、さらに山賊団の者たちは武器を持ち歩いているため、単なる盗賊とは訳が違う。だから、誰も手を出せなかった。


 周りの人々が口々に言っていた。


「山賊団の連中が武器を持っているから、厄介だな。」


 道端の木製の屋台で、年配の女性商人が心配そうに尋ねた。


「お嬢さん、大丈夫? 怪我はしてない?持っていかれた包みの中には何が入ってたの?」


 少女はやや茫然と答えた。


「あ、大丈夫……包みの中には、母さんの脚のけがを治す薬が入ってて……近くの町でしか手に入らないんです……」


「そんな大事な薬を!あいつら本当に最低ね!」


 その時、道端の屋根に淡い桜色とピンク色の小鳥がとまっている。


 人混みの中の誰かが、さらに続けた。


「あの山賊共が国境で略奪を働いているせいで、往来する人々がどんどん減ってきてる。今では店の商売も前ほどはよくないんだ。」


 どこか苛立った女の声が、不満げに響いた。


「騎士団は国境の治安を守るはずなのに、山賊がそこで略奪を続けて好き放題しているなんて、一体どうなっているんだ?」


「聞いた話じゃ、山賊たちは山中に隠れていて、追い詰めるのが難しいんだ。」


 人々はざわざわと話し合っていたが、アスタリアは十分な情報を得ると、心の中で方向を定め、静かに歩き出した。


 町外れの袋小路の壁際で、二人の男が今日得た「戦利品」の包みを漁っていた。

 一人の若い黒髪細目の男が、盗んだ包みの中身をごそごそと取り出しながら、口を歪めてぼやいた。


「母さんの薬だとか言ってたくせに、中には一銭も入ってねぇじゃねぇか!」


「国境近くは山賊が牛耳ってるし、通行人の方が金を持ってるさ。」


 その時、二人の頭上に声が響く。


「つまり、あなたたちは山賊とは別の一味なんだ。さっきは通りすがりを装って、山賊団の一員だって嘘を広めて怖がらせてたってわけね。」


 二人の男が驚いて頭を上げると、アスタリアが壁の上に立っており、彼らを見下ろしている。

 陽光がアスタリアを包み込んで金色に輝く。ピンク色の長い髪は低く結ばれたポニーテールが、風に揺れている。


 目の前に現れたのが若い少女だと分かると、二人は一瞬落ち着きを取り戻し、すぐに凶悪な表情でアスタリアを脅そうとする。


「ガキが来る場所じゃねえぞ。」


 だが、アスタリアは動じない。


「これから私がお前たちの首領だ。だから、今日の戦利品は私のものだ。お前たちは鉱山で仕事を探せ。二度と悪いことをするな。」


 アスタリアは自信満々の表情で命令を下した。


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