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第2話 困惑した買い物

 転生2日目、とある重大な問題に着面していた。

 この家に今の俺に合う女性用の服や下着等の物が1つもなく、買いに行かなければならないと言う問題だ。


「家にあるもので女の子が着ても問題なさそうな物は無いのか……」

 

 (わら)にもすがる思いで家中のありとあらゆる場所を探し回ったものの、無い物をいくら探しても当然見つかる訳がなかった。

 それに結局、店で服を手に入れるまでは家にある男物の服を来ていかなければならない。

 何にせよ誰かの目につくことは確実、SNSで話題になる可能性だってある。

 覚悟を決め、服を買いに行く為に準備を済ませて出発する。


「今日は晴れか。ここのところ曇りや雨ばっかりだったから太陽の光が心地良いな」


 梅雨の時期だから仕方ないとは言え、1週間も曇りか雨だと流石に参る。

 洗濯物は乾きづらい・蒸し暑い・出掛けた時に服が濡れる等、面倒な事ばかりだからだ。


 久しぶりの快晴を楽しみつつ、大型ショッピングモール内にある服屋へと向かう。

 平日の昼間だけあって道中人を見かけることは少ない。


 30分程歩き、ようやく大型ショッピングモールに到着した。

 普段なら車で来ていた所ではあるが、免許証は転生前の柳原勇斗(やなぎはらゆうと)の姿と名前で通っている。

 今の見た目中学生な上、()()()で車など運転していれば警察のお世話になることは確実。


 それに加えて国籍・戸籍なし人外少女と判明すれば今後どういう扱いをされるのか全く分からない。最悪なんかの実験に使われたり……? いや、流石にそれは無いか。


 そんな事を考えながらモール内に入り、男だった頃よく行っていた服屋の女性物コーナーに入ろうとしたが……


「凄く入りづらい……」


 案の定、男だった頃の罪悪感と言う物が足かせとなり、コーナーに入ることがなかなか出来なかった。

 結局店内をウロウロした挙げ句、踏ん切りつけて入ることが出来たのは20分後の事だった。


 何とか入ることが出来た後も何を買えば良いのか等をスマホで調べ、それでも分からなければ店員に聞いたりしながら3万円分の服を購入した。

 その後も女性にとって必要不可欠な生活用品一式をスマホで調べながら購入し、最後にフードコートでラーメンを1杯注文して食べてから店を出る。


「4万円か……凄い出費になった。気を付けないと、すぐ無くなるな」


 今はまだ使い道がなくて貯金していたお金があるから良いものの、こんな調子で使っていてはすぐになくなってしまうかもしれない。気を付けよう。


 そうして沢山の荷物を持ちながら家への帰路につく。

 そこそこ重たいはずなのに、まるで発泡スチロールを持っているかのような軽さにしか感じない。

 よく考えたら、都合良く容姿が整っていてなおかつ身体能力も底上げされた狐少女として転生したのは運が良かった。

 こうしてくれた存在に感謝しつつ歩いていると、前方から人が2人歩いてきた。


「何だ? この毛が逆立つような気配は……」


 あの2人が近づくにつれて不快な気配がどんどん増して行く。

 もしかしたら何か面倒な事に巻き込まれる予兆なのではないかと直感した俺は、すぐさまこの場を立ち去ろうとするが……


「ぐへへ、嬢ちゃん俺たちと遊ぼうぜ……うっ」

「ったく! オメーは昼間っから酒飲み過ぎなんだよ。それはともかくとして、俺も嬢ちゃんと遊びたいなぁ~」


 今にも吐きそうな位酒を浴びるほど飲んだであろう酔っぱらいと、その人を連れたおっさんに声をかけられてしまった。


 暑いはずなのに寒気がしてくるほどの悪意を持つ気配を感じた。

 何を考えているのか全て分かるわけではないが、どうせロクな事ではないだろう。おっさん2人の言動からも推測できる。

 当然無視して全速力で突っ切る選択を選んだ俺は、それをすぐさま行動に移した。

 しかし、運が悪かったのかそれとも自分の不注意か、走り始めてすぐに転んでしまうと言うミスを犯し、更に荷物をばらまいてしまった。


「おいおい逃げるなよぉ~」

「聞き分けの悪い子にはお仕置きしないとねぇ」


 追い付かれてしまった。

 おっさんたちの息が荒い。


「こ、来ないでぇ!!」


 向けられた悪意に恐怖を感じたその時、無意識に狐耳と尻尾が出現し、襲いかかるおっさん2人の攻撃も無意識に回避した。


「今のを避けた!? それにこの耳と尻尾、まさか……」

「何でも良いからとにかく捕まえるぞぉ」


 何度も繰り返し殴ったり蹴ったりしてきたおっさん。

 しかしその攻撃は鈍く、余裕で避ける事が出来た。

 イラついたおっさん共はとうとう鉄パイプを振りかざして来たが、それも余裕で避ける。

 そうして5分程避け続けた後、頭に浮かんだとある言葉を紡いでおっさん2人に手を向ける。


「『狐術(こじゅつ)妖幻狐火(ようげんのきつねび)』」


 すると、2人が突然発狂し持っていた鉄パイプを誰もいない虚空に向かって振り回し始めた。


「ぎぃゃああ!!」

「来るなぁ、来ないでくれぇ!!」


 一体どんな恐ろしい幻でも見ているのだろうか。

 2人が発狂しているその隙に荷物を集めていると、俺の家方向からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 それを聞いてすぐさま目立つ耳と尻尾を収納しようとしたが、何度やっても出来なかったので仕方なくこのまま自分の家に全速力で走って帰る事にした。

 途中パトカーとすれ違ったものの、何とか無事家に到着することが出来た。


 

ここまで読んで頂き感謝です! 誤字脱字等ありましたらお知らせ頂ければ助かります。

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