第10話 皆と買い物に行ったら、恐喝現場に遭遇した
「ご馳走さま~」
「美味かったよ灼狐ちゃん」
「そう? 皆の口に合って良かった。今回はグラタンだけだったけど、次もし来ることがあればもう少し品数増やすね」
「おお! そりゃあ楽しみだ!」
「そういや、俺たちって会うのわりと久しぶりじゃん。せっかくだからさ、もっと話していかね?」
食事が終わった後、せっかく来たんですぐに帰るのは何かもったいないと言う事で雑談会を開き始めた父さんたち。
その様子を見ながら母さんと一緒に洗い物をしていると、突然何かを思い出したらしく、金髪の男が声を上げた。
「またか岡本! もうちょっと声量抑えて喋れねぇのか?」
「すまん陵夜つい……今回春也の家に着いたら言おうと思ってた事を忘れてて今思い出した」
「なんだよそれ?」
父さんの友人の1人、陵夜と呼ばれる厳つい男が岡本に問いかけると、家族で計画していた3日間東京のとある山でのキャンプに父さんとその友人たちの家族一同で行きたいと言う妻の要望を汲み取り、誘いに来た事らしい。そんなに重要な用事なら何で忘れたんだ。
ちなみに現時点で子供を含めて20人参加が決まっているみたいだ。
「で、春也の家はどうする? 出来れば来て欲しいが、嫌なら無理強いはしない」
そう聞かれた父さんは、母さんと俺にお前たちはどうしたい? と聞いてきた。少し2人で考えた後、貴方に任せると言う結論に達したのでそう伝える。
「了解。と言う訳で俺たちは家族全員で行くことに決めたぞ岡本」
「おし、分かった! そうと決まればキャンプ用品の買い出しだな。その費用は俺と妻の負担だが、キャンプ場借用費用が想像以上の出費でな。後で3000円貰うことになるけど良いか?」
「ああ。勿論だ」
どうやらキャンプの際に使う物については岡本家側の全額負担で、キャンプ場借用の費用でさえも大半負担してくれるらしい。彼の身に付けているブランド物を見ていて確かに金持ちだとは思った。しかし、岡本家の金持ち度については俺の想像を遥かに超えていた。
どっかの企業で夫妻のどちらかが社長をしてるか高額宝くじにでも当選したのだろう。
そんな風に考えていると、いつの間にか他の皆の出発準備が済んでいたので急いで用意を済ませ、岡本さんの運転する大型車に全員乗って出発した。
目的地はここからおよそ1時間行った所にあるらしいアウトドア用品店『アルテマ』だそうだ。
「ずいぶん遠いな」
「まあ、この辺じゃ良いとこ全然ねーしな。品揃えが良い・質の割には低価格・店の雰囲気が良いの三拍子揃ったあそこが一番だ!」
「そう言えば岡本君。確かこの前、ここから3km行ったとこにもアウトドア用品店行ったの覚えてる? ほら、あの糞店主が居た」
ふと岡本さんとメガネを掛けた大人しそうな男との会話が聞こえてきた。この近辺にもアウトドア用品店があったのか。それにしても糞店主呼ばわりとは相当気に障った何かがあったのかな?
「……ああ、『エルバノ』に行った時の事か。あん時は本当腹立ったよな。愛想がないのは良いとしても、バイトの女子高生に仕事を丸投げして自分は偉そうに後ろからグチグチ……」
「うんうん。それにレジに並んだお客さんに対して糞どうでもいい自慢話したりして停滞させたり、面倒なクレーマーの対応を押し付けるたりとかね。あまりにも酷かったから思わず間に入ったけど……」
今時そんな超ブラックなバイト先があるのかと、2人の会話を聞いていて思った。そんな様子だと、その女子高生も含めた店員たちも近いうちに辞めて、客も寄り付かなくなって最終的には閉店することになるだろう。と言うか、そうなって欲しい。
盛り上がる事1時間、目的地であるアウトドア用品店のアルテマに到着した。
夏休みの時期だからか、俺たちのように自然の中でキャンプしようとしたり、家の庭先でテント張って遠出せずにキャンプ気分を堪能する人等、結構人が多かった。
「こりゃあ悪いタイミングで来ちまったな。夕方辺りにしとけば良かったかも」
「まあ時間はたっぷりあることだし、良いんじゃない? それに混んでるって言ってもコミケやゲームショウ程じゃないし」
キャンプをするのに必要なものについて俺たち家族は、それほど知識があるわけでもないのでほぼ岡本さんたちに任せて、自分たちで食べる缶詰を選んでいると……
「……貴様ぁ! 我々はあのヴァノン帝国だぞ! 逆らったら……」
「ええと……仰っている意味が解らないのですが、ヴァノン帝国とは?」
その時突然誰かの怒鳴り声と、それに困惑する人の声が聞こえてきた。
見てみると、黒いローブを着た女が1人とその周りに中世の騎士のような装いをした外国風の男が3人、自分たちはヴァノン帝国の者だと脅し、レジの女性店員に対して何かを要求しているようだった。
店員は怒鳴られている恐怖で震えつつも、彼女らの言っていた『ヴァノン帝国』と言う言葉に首をかしげていた。
まるで幻想世界の侵略国家みたいな発言をしている奴らを見て、確証はないがまさか本当に異世界国家の人間なのかと思った。
「おーい灼狐ちゃん。向こうをじっと見てどうした?」
どうやらレジでのやり取りは岡本さんたちには見えたり聞こえたりしていなかったみたいでこの喧騒の中、人間を遥かに超える聴力と視力を持つ俺だけが捉えていた。
「岡本さん、ちょっと来てくれる? ついでに皆も」
「ん? ああ。お前らちょっと来てくれ」
そう言って岡本さんたちをレジでのやり取りが見えたり聞こえたりする場所まで案内する。野次馬となったお客さんたちも一部集まっていた。
「恐喝かよ……俺が殴ってでも止めると言いたいところだが、店員に危害を加えられたら不味いし、何より人数が多いから警察呼ぶわ」
「じゃあ僕は証拠の動画撮影しとくね」
「しっかしあいつら糞みたいな事ばっかり言ってんなぁ」
自分たち以外の人間は奴隷かつ使い捨ての道具とまで言い切り、店員を選ばれし我々に金を払えと言ったと言う何とも下らない理由で脅しているアイツらを何とかしたいが、
下手に動けば岡本さんの言う通りの事態となってしまう。
なので、何があっても動けるように奴らの近くまでこっそり移動し、思考を張り巡らせていたら何を思ったのか、突然奴らの内の1人が店を出ようとした家族連れの子供を人とは思えない速度で動いて拐い、この場を見ている全ての者に対してとんでもないことを宣言した。
「ヴァノン帝国に逆らうとこうなるんだと言うのを、今から道具共に見せよう」
そうして奴は、隠し持っていた短刀を子供に向けた。
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