第一章 第一話 終われない始まり
閲覧していただきありがとうございます。
そこまで腹黒ではないですが腹黒クライシスです。
この作品はお風呂で思い付きました。
元気なうちに書きます
ドンッ...と鈍い音がした。その後間髪入れずに、ゴオオン...と何かが落ちた音がした。
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(「雨の音が聞こえる...というか雨の音しか聞こえない。体内時計には自信がある...大体15分気を失っていたか.....痛ぇ........痛いというのは感じる。いや痛いのか?痛いというのはどんな感覚だったっけか?……いや痛くない……というか痛いとかそういう次元をとうに超えてる気がするぞ。」)
今感じているのは自分の体から恐らく血液と思われる液体がダラダラと流れ出ている不思議な感覚と、自分がもうすぐ死ぬのだろうという恐怖を超えた諦めだ。痛いと感じていた時は恐怖もあったが、痛みを感じなくなった今では自分でも不気味なほどに落ち着いている。
この後死んだとしてどんな感じなのであろうか、また、死後の世界はあるのだろうか。助からないと自覚してしまうがゆえどうせ無駄だが気になってしまう。
(「いや待て、何呑気に死を受け入れてるんだ。せめて少しは抗え。仮に助からなくとも俺を死に追いやった奴を呪え。 クソっ、顔を拝んでみたいものだ。
『ありんこ一匹はおろか、蚊一匹の命を奪ったことのない』この私の命を奪ったんだ。呪ってやる…。どうせ俺はこのまま死ぬだろうし...そうだ、俺が死ぬってんなら逆に一生死ねない呪いってのも面白くねえか?まあ呪いも神も信じちゃいねえが、最後くらい笑って逝くことはできなくてもほくそ笑んで逝ってやる。」)
と皮肉や文句を垂らしているが彼はかなり悲惨な状態になっている。
彼の目の前には自身の鍛え抜かれた右脚が見える。それは右脚がもげて目の前に転がっているということ。左脚はひしゃげ、両手はかろうじてましなものの後頭部は陥没しそこから血液が流れている。そんな状態になってもなお、彼がかろうじて生きている(もう助からないが)理由は彼の育ってきた環境のせいだろう。
彼の祖父は晴間神社という神社の6代目神主であり、そんな祖父を持つ彼は晴間優生といって大学を卒業したら7代目の神主になる予定だった、そんな男だ。
彼は5歳になった時から神主に必要な知識や技術を徹底的に教えられ礼法や祝詞、お祓いまでしっかりと体に染みついている。
それとは別に祖父がかなりの武闘派で毎朝4時に起きそこから数十キロに及ぶランニングをし、その後は祖父によって数多の武術や剣術、さらにはバレエなどの芸術とリズム感と体幹などを合わせたものやほぼ全てのスポーツといった神主と関係ないものもあるが毎日これらでみっちりしごかれていた。
時には祖父が忍者が登場するアニメか何かを観たと言うだけで忍び足のマスターから壁や天井に張り付く、または壁や天井を走るなど他にも様々なことをやらされ続けていた。
やっとのことでそれを終えると寝る前には腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、体幹トレーニング30分をこなさないと寝ることが許されないという環境で育った。
二十歳を迎えるための試練と言って祖父と祖父の友人である『“何か”』の博士が共謀し『謎解き力』と『力』を試すリアル脱出ゲームをするなど肉体と頭脳、そして精神力や忍耐力までも鍛える『究極のクソゲー』をやらされた。
とはいうものの彼は神社を継ぐつもりはなく、大学を卒業し就職も決まり、それを理由に神主にはならないと伝えるべく帰路についていた時、事は起こった。
体は前述した通りかなり丈夫であり精神面も常に極限状態であったが故にかなり落ち着いており『“何か”』のトリガーが引かれて『臨戦態勢』にならない限り普通の人間として生きてきた。
その『臨戦態勢』にならなくてもヒグマに勝てるほどには強い。が流石に受け身も防御もせず豪雨によって近づいてくる音すら聞こえないトラックが頭上に降ってきたら『死なない』だけでも十分強さの証明が可能だ。
と、ここで雨音とは別にいくつかの足音が聞こえてきた。
顔を上げて見てみると、見覚えのある...見たくもない気色の悪い顔が並んでいた。彼ら彼女らは優生と同じ大学に通う同級生であり、優生の幼馴染である時雨恋をいじめていた連中だ。
優生は『いじめ』という行為が心の底から嫌いなためいじめの対象が仮に幼馴染でなくともお灸をすえるつもりだったが、幼馴染でありそして優生の片思い中の人であったため少し懲らしめ過ぎてしまい逆にいじめの標的になった。
今まで殺しにくることは流石になかったが嫌がらせは受けてきた。優生に喧嘩では勝てないため姑息なことを幾度となくしてきた。
しかしいじめっ子どもがトラックで殺しにくるなどと思い立った理由はいじめグループのリーダーの就職先にいじめの証拠を流し内定を取り消させたことだ。
というのもいじめグループのリーダーが就職しようとしていたところは晴間優生の実の父親である晴間勝御が社長を務める大企業であった。
優生は楽観的で特に抱え込まない性格なのでいつも面倒くさそうに学校でのことを話しており恋を庇った日の夜、普通に
「学校で恋のこと助けたらいじめのターゲット俺になったわw」
などと月1の家族団欒の場で話しいた。
両親も優生が強いと言うのは知っているので心配はしていないがどこかでいじめっ子どもに落とし前をつけようと考えていた。それがこのタイミングだったのである。
勝御の会社はかなり大きく、メジャーな企業を辿っていくと勝御の会社の子会社であったり仲が良い会社であったりと系列会社も幅広くあるためそれら全てから拒絶されグループが違う会社にも噂が広まりほぼ全ての企業で就職はできなくなった。
いじめグループのリーダーは情報を流したのは優生だと考え、人生を壊された腹いせに今回のことを計画した。
優生はもう体を動かすこともできないし声も出せない。ただ目の前にいる有象無象どもを睨みつけることしかできなかった。
ゆっくりといじめグループのリーダーが寄ってくる。何かを言いながら近づいてくるが耳も潰れ雨音しか聞こえなかった。
そしてバールのようなものを取り出し大きく振り下ろす。優生は反射的に手に力を込め殴り掛かろうとする。それでも、もうこの体は動かなかった。
ゴンッ………グチュッ……振り下ろされたバールを頭から引き抜いたその男はニヤリと笑う。しかしそれと同時に体に異変が起きる。しかし男はその異変には気づかない。まだ気づくことができない。……それは病気でも怪我でもない。
優生からの、『呪い』だ。
「えぇーまじかー嘘でしょ〜。もうマジかよ〜。7代目候補死んじゃったんだけど〜早いって〜。目を離した隙に死ぬとか蝉かお前は!蝉の一生か!」
そう一人でぼやいているのは晴間神社が代々祀ってきた神である、晴天様だ。つまりここは神たちが呑気に暮らす天界だ。
「晴間神社オワッター。もう後継げるやついねぇ〜。どうすんだよ。私の影響力カスみたいになるって…。えぐいって…。」
晴天様がおっしゃっているのは自身の『力』がなくなるかもということ。信者が多ければその分力が増すがその前に自身を強く信仰し祀り上げてくれている神主という存在がいなくなればまず神として存在できなくなる可能性がある。その時、
「あーそういえば異世界行きのチケット、何枚か余ってたっけな?どこだっけな〜。ここか?ビンゴ!あったあった。期限も切れてないね。よし!じゃあ異世界で7代目候補に信仰してもらおう!我ながら天才ですなぁ。異世界だとお告げも難しいだろうし、7代目候補に加護を与えて、向こうで生きてるだけで、勝手に信仰した判定になるシステムにしよう。うんそうしよう!その分ちょっと与える加護が強くなるけど…まいっか。」
晴天様はこちら側の世界の神であり異世界の方に『力』を出すことはできない。しかし加護という形で異世界行きの対象者を選ぶ事と、その対象者に選別を与えることはできる。
ただ、今晴天様がつけようとしている加護はもはや加護の域を軽く超えているものつけようとしている。そのため異世界の方で祀らなくても晴天様の神としての『力』は失われない。が、優生が異世界に転生した際見た目こそ普通の人間とそこまで変わらないが強さと影響力、そして存在力があまりにも人間からかけ離れたことになる。
だがそんなことつゆ知らずの晴天様は呑気にゲームのキャラクリをするかのように
「さて〜どんな加護にしよっかな〜。異世界に送ってもまた死なれたら困るしな〜。なんか『殺さない代わりに邪魔するな』みたいなことよく言ってたし『死なない代わりに殺せない』とかそんな感じのやつでいいか。今のをベースに色んなやつ付けて...なんか面白くなってきたな...。よし!これで行こう!行く先の異世界はどんなとこか分からないし、強過ぎるくらいが丁度良いかも知れないしね!うん!...てか本当に死なれたら困るしとりあえず絶対に死なないようにしよう。」
そんな調子でパネルのようなものを操作して数分。
「完成!これで心置きなく送り出せるね!それでは7代目候補よ!達者でな!精進するのだ!ハーハッハ!」
晴天様がパネルのボタンを押した瞬間世界の理が少し歪んだ。そして
優生は振り下ろされたバールに対して反射的に手に力を込め殴り掛かろうとした。(「クソッ体が動かねぇ。チッ。クソッ。ここまでか。」) 優生は死んだ。
しかし何故だか意識がある。動かなかった腕が、最後まで殴り掛かろうとしていたその手が動いた気がした。
(「あれ?動く?なら何も見えねぇがとりあえず真っ直ぐ殴る!」)
すると殴れた。しかしそれはバールでもない、人間でもない感触だった。
「あ?めっちゃ弾力がある...ってか声が出せるし怪我もねぇ!?脚もついてる...。どこだここ?……てか、な...何だよ...こいつ...」
目の前に広がる光景は見慣れない空、さっきまで血まみれでボロボロだった自身の肉体が元通りの逞しい肉体、そして、『かなりの巨体に大きな角。さらには派手で毒々しい体色に冠を被っている悍しい蛙のような生き物』が目の前で伸びている異様な光景だった。
「ここはどこだ?運ばれたとしても10分も経ってない...雨は降ってないし近所でもないな...。考えられるのは、幻覚か夢を見ている、死後の世界、そして異世界転生...か。前二つならそのまま放置でいい。幻覚か夢を見ているだけならいつか終わる。死後の世界ならもうどうでもいい。諦めて寝てやる。が、万が一異世界転生だとしたら放置してたらまた死ぬかもしれん...か。なら行動は起こした方がいいな。異世界転生なんてアニメかゲームでしか見たことなかったしこれが本当に異世界転生ってやつなら思いっきり楽しんでやるか。」
見慣れない光景に戸惑いつつも状況を整理し前向きに考えていたその時
「まずはここが何ていう世界なのかとここはどこなのか、あと人が居たとして言葉が通じるのかも知りたいな。それにパッと見だと特に変化はないが異世界にも色んな異世界があるだろうし自分のことを一旦確認したいな。」
………「?:…マスターの接続を確認しました。応答を開始します。」
「優生:あ?誰だ?どこだ?」
「?:ではまずそちらからお答え致します。私は神スキル『神脳』に含まれる『知能型音声案内』です。」
「優生:『知能型音声案内』? 知能ってことは分からないこととか聞くと教えてくれるのか? はえーそりゃあ便利だなぁ。ちなみに『知能型音声案内』って名前なのか?」
「知能型音声案内:いえ、名前ではなく私の機能を分かりやすく並べただけです。なので私には名前がありません。」
「優生:名前ないと呼びにくいしな〜俺らの世界で言うとこのAIっぽいし『アイ』って呼んでいいか?」
すると返事が返ってくる前に優生は謎の疲れを感じた後、声色が少し明るくなったというか感情がこもったように
「アイ:承知致しました!これから私は『アイ』です!ご主人様、これからもよろしくお願い致しますね!」
「優生:えっ、よっよろしくねアイちゃん。」
名前をつけただけでいきなり別人のように変わり『名前をつける』ということが絶大な効果があると分かった。
そしてこの世界において『神脳』というスキルがとんでもない強さを秘めているとわかるのは時間の問題だった。
不定期ですが更新頻度は結構早いと思います。
次回は優生くんの能力確認とこの世界の説明をアイに任せます。そして放置してた蛙もしっかり出てきます。
ヒロインも登場させたいですがまあ追々調整します。
お腹が痛いので失礼します。




