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僕の相棒は、ナビのメイドAI アンナちゃん ~車を買ったらメイドがついてきた~  作者: 田波 霞一


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第17話「ナビが頼むものじゃないから!」

 残暑の厳しい午後。

 九月に入ったというのに、真夏日を思わせる気温が続いている。

 アスファルトから立ち上る熱気がじりじりと車体を包む。

 空は夏の青さを残しているが、雲の形がどこか秋めいてきた気もする。


 コンビニで買ったキンキンに冷えたペットボトルを飲み干しながら、車を走らせていた。

 軽自動車「A-BOX」の車内はエアコンで涼しく保たれているが、体の芯にこもるような暑さが抜けきらない。


 ナビ画面のアンナも、車外温度センサーの情報を受けて、額に汗を浮かべるようなリアルな表情で現れた。


《……今日も、暑いですね、ご主人様……》


 妙にリアルなアンナの姿に驚きつつ、額の汗に気づいて少しだけ感心した。

 Ver 1.02のアップデート以降、表情の細かさが増している。


「……なんかキュッとするようなもの食いたいな……」


 そんなことを考えながら、走行中ふと視界の隅に見えたのぼり。


「星見バーガー、期間限定――」


「……あー、これか……」


 季節を感じさせる限定商品に弱く、思わずウインカーを出し、交差点を左折した。

 ほどなくして現れたのは、大手ハンバーガーチェーンのドライブスルー。

 赤と黄色の看板が、午後の日差しを受けて眩しい。

 車列はそれほど長くない。

 前に二台だけだ。


「よし、ここにしよう」


 ドライブスルーレーンに入り、注文口のスピーカー前で停車する。

 スピーカーの横には大きなメニュー看板。

 新商品の写真がでかでかと貼られている。

 確認しようとしたそのとき――


《ドライブスルーですね! ご主人様、メニューの読み上げを開始いたします♡》


「おいおい、勝手にナビが参加すんなよ……」


《本日のおススメは、"とろける星見チーズバーガーセット"です! ご主人様の好物ランキング第3位でもありますので、こちらをご提案しますね♡》


「なんで俺の好物を分析してんだよ!?」


 ツッコミもむなしく、アンナはさらに声を張り上げる。


《お待たせいたしましたぁー! ご注文は"星見チーズバーガーセット"、ドリンクはアイスコーヒー、ポテトはLサイズでお願いしますっ》


「ちょっ、やめろ! まだ決めてないから!」


 スピーカーから、店員の戸惑った声が返ってくる。


「お、お客様……えーと、お一人様ですよね? ……念のため、今お話されていたのは……」


 慌ててマイクに向かって応える。


「あっ、すみません! 今のは、ナビが勝手に……俺ひとりです」


《ええっ!? ご主人様っ、ひとりって……私は……!?》


「物理的に! 車内に! ひとりって意味だよ!!」


《……ひ、ひどい……》


 画面越しに、アンナが頬をプクーッとふくらませて見せた。

 明らかに機嫌を損ねた様子だ。


 注文を終え、車を前に進めながらため息をついた。

 後ろに並んでいた車が、こちらを追い越していく。

 ミラー越しに、運転手がこっちを見ていた気がする。


「ほんと、バレたら変な人だと思われるとこだった……」


《でも、ご主人様。ご希望に応じて、今後は"自動注文連携機能"を正式に搭載しても……》


「それいらないから!!」


 受け取り口で、現金を支払い、ポイントカードを提示する。

 紙袋を受け取ると、ポテトの油の匂いがふわっと車内に広がった。

 店員が対応しながら、気まずそうに笑い一言。


「……あの、先ほど……ナビが……?」


「……ええ、ナビです(棒)」


 店員は笑顔で、首をかしげていた。


 * * *


《それでは……次の目的地をどうぞ、ご主人様♡》


 答えず、車を走らせて駅前の公園の駐車場まで移動した。


 木陰のある場所を選んで停める。

 公園では、ベンチに座って休んでいる人や、犬を散歩させている人がちらほら見える。

 平日の午後だから、人は少ない。


 猛暑のためエンジンは切らず、エアコンを効かせたままにし、紙袋の中から星見バーガーを取り出す。

 包み紙を開くと、チーズとパティの匂いが鼻をくすぐった。


 ナビの画面に映るアンナは、画面の端からじっとこちらを見つめていた。

 目元はわずかに潤み、頬を染め、まるで「食べたいなぁ」と言わんばかりに唇を尖らせていた。


「……お前、なんでそんな顔してんだよ……」


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