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【第7話】旅立ちの支度

「スキルってのはね〜、みんなが生まれつきひとつ持っている固有の特殊能力!特定の条件下で足が速くなったり、魔力が増えたりするの」


「分かりやすく言えば、ポケモンの特性のようなもの?」


「ぽけもん?」


(ワンチャン分かるかなと思ったけど、そりゃ無理か)


「な、なんでもないよ。続けて?」


「スキルはその人の個性や特徴を表してることが多いって言われてるわね」


 個性や特徴。僕にそんなものがあるとは思えないけど。捻くれてるのに個性がないって、なんのために僕は捻くれてるんだろう、なんてことを考える。


「ふぅん......じゃ、リズのスキルは?」


 さっきまでの教員気取りな様子と裏腹に、リズはギクッとよろめいて動揺を見せた。


「そ、それが......分かんないのよねぇ、私のスキル」


リズは頭をかいて困り笑いした。


「教会に行けばスキル鑑定ができるんだけど、この辺は教会もないしさ」


(スキル鑑定、個性や特徴......)


「行こうよ、教会」


リズは目を丸くして驚いた。


「さ、流石に無理よ?一番近くの教会だと"ディオス"って街だけど......ここからだと3日はかかるの」


「げっ」


思ったより遠くて面食らった。


「で、でもそれなら3日かければいい。どのみち、これから行く宛てもないでしょ?」


 この世界をもっと知りたい。魔法とか面白そうだし。なにより、自分のスキルなんてそりゃ知りたいに決まってる。こんな好奇心は僕らしくもないけれど。

 あのパンチの、拳の痛みは引きつつも残っていて、もしもこの力を自由に使えたらなんて、高揚感に浸っていたのかもしれない。

 リズは何かを言おうとしたあと、嬉しそうにぱっと微笑んだ。


「うん。そうしよっか!」


「......なんかタカハシ、変わったね」


リズに小声でそう言われて、返事に困った。


◆夕方頃/リズの別荘◆


「......よし、こんなところかな」


 寝袋と缶詰、水筒と、それから懐中電灯とかその他諸々。リュックサックパンパンに詰めたから、これだけあれば3日くらいはもつだろう。この屋敷やけにデカイから色々探すのに苦労した。


「リズは準備できた?」


「もちろん!」


 リズは親指を立て、ドヤ顔でリュックを見せてきた。


 お人形とクマのぬいぐるみ、図鑑と、それから綺麗なドレスとかその他諸々。リュックサックパンパンに詰めてある。こいつやる気あるのか?


「はぁ......まぁいいや、ご飯と水はこっちのリュックにある分で足りるはずだし、それでいいよ」


 ある意味リズらしくて、笑ってしまった。さっきまでトカゲに襲われて死にかけてたのに、お気楽なお嬢様だ。


「今はもうお嬢様じゃないんだからね?私もついに冒険者よ!ぼーうけーんしゃー♪」


そう呑気に歌いながらリズは嬉しそうだった。


「出発は明日だから、早めに寝るんだよ?」


「分かってるって!あ、そうだタカハシ?」


 リズはタンスを楽しげに漁って、小さなぬいぐるみを取り出した。


「なにこれ?」


「ヴィーヴル教の御守りだよ。えっと、この辺の人はみんな信仰してるかな」


絶妙に可愛くないゆるキャラみたいなデザイン......


「ふふ、ありがと。受け取っとく」


「いい?辛い時はね、スペーロって言うの。そうしたら、きっと神様が見てくれるから」


(当たり前だけど、この世界にも宗教はあるよな。前世では、神様なんていないと思ってたけど)


「......神様、いるかもね」


その日の夜は、リズの歌が頭から離れなかった。

【異世界豆知識】

"宗教"

この世界では大まかに3つの宗教が存在する。


・ヴィーヴル教

絶対神"ラ・ヴィル"を主とする。

生命への感謝、慈愛の心を大切とするのが特徴。

独特な御守りや伝統芸能のダンスで有名。

祈り言葉"スペーロ"はヴィーヴル教の希望の象徴。


・ミデュン教

信者それぞれが自分の神を持つことで知られている。

お互いを尊重し合い、知恵や道理を重んじる。

絵画や彫刻など芸術的な文化の発展が顕著。

祈り言葉"トゥートゥイ"は神への愛を表している。


・ムリール教

神が存在しないことを前提とした無神論宗教。

多くの知名人が入信することで知られる。

世の中への絶望や無力感を謳っているのが特徴。

祈り言葉"ウォジャック"は救いと理解を求める代名詞。

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