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【第11話】星空は闇の中で輝く

◆夕暮れ前/ディオスへの道中◆


「──それでね、タカハシがそのオオドラゴンをすぱー!って倒しちゃったの!」


「なっ、オオドラゴンを素手でござるか!?」


 小林くんは目を丸くして驚いてから、僕の身体をまじまじと見つめた。


「ま、まさかぁ......。こやつが?」


 小林くんの疑いの目に対して、ただ申し訳なさそうに笑うことしかできなかった。


「ほんとだよ!そのときのタカハシ、めーっちゃカッコよかったんだから!」


 リズは高揚的にそう語った。そんな風に太鼓判を押されると、余計申し訳なくなる。そういえば、中二のパソコンの授業のときもこうやって囃し立てられたんだっけ。


「ね、ねぇ。そんな話はいいからさ、そろそろご飯にしない?」


「さんせーい!」


リズが大きく頷く。


◆────────────◆


 日が暮れて、少し寒くもなってきた。生き物の姿も減ってきて、地図を見てもディオスまで3分の1ちょっとは進んでいる。


「順調だね。この調子なら予定より早く着きそう」


「やっぱりケンコバと会えたのが大きいね。大抵の敵は倒してくれるし!」


「べ、別に大したことは......」


 リズは無邪気に小林くんの手を握って、照れてる姿を楽しそうに見つめている。そういうとこ、ずるいなと思う。


 リズがフレイムで焚き火をつけてくれて、屋敷から持ってきた中で期限の早い食べ物を選んでそこにいれる。


「ねぇリズ、大丈夫なの?寝てる間に魔獣とかに襲われたら......」


 リズは心配する僕をよそに、僕のリュックを物色する。


「ちょっとタカハシ、御守り借りるね」


 (ヴィーヴル教の御守り、出発前夜にくれたやつか)


 リズは慣れた手つきで御守りを両手で包み、膝を地につけ目を閉じて、小さく呪文を唱え出した。


「我が主ラ・ヴィル様。どうか我らの魂に聖なる抱擁をお譲りください......」


 その瞬間、リズを中心とした半径4mほどにドーム状の結界が浮き出る。


「こ、これは......?」


「驚いた?この御守り、魔具になってるの。魔力を込めて祈ると結界が現れる。でも、そう簡単にできることじゃないのよ?」


 リズは数分前とは一変した神秘なオーラを纏い、髪をかきあげると少し微笑んで答えた。


「こ、これが噂に聞くヴィーヴル伝統の結界魔具.......。初めてご覧に入れたでござる」


 小林くんは、驚きと敬意の眼差しでそう言った。まじまじと何かを考え込んで、少し悔しそうにも見えた。

 小林くんや僕以外の生き物は結界内に入れないらしく、地面に生えている野草が結界に潰されている。


「さぁ、もう焼けましたわ。いただきましょう?お二人とも」


 ヴィーヴル教が関わっているからだろうか。リズが初めて貴族らしく見えて、置いてかれた気分になった。


◆深夜/テント内◆


「はぁ、はぁ......」


 額に手を当てると、大粒の汗をかいているのを感じる。


(り、リズは!?)


 隣で熟睡しているリズを見て、胸を撫で下ろした。結界を開いている間は体力の消費が激しいらしく、ご飯を食べたらすぐに寝てしまっていた。ひとまず安心してため息をつく。


 酷い悪夢だった。元の世界に戻って、またあの日々を送る夢。離れた笑い声が怖くて、学校にも家にも、居場所なんてなかったあの日々。


(今では、ここが居場所だ......)


 狭いけど暖かい、テントの中でそう思う。


(もしリズや小林くんと別れたら、僕はまた......)


 そんなはずない。悪夢のせいで少し気が滅入っちゃったみたいだ。

 真っ暗だけど、綺麗な星空。気分転換がしたくて、テントから顔を覗かせた。

【異世界豆知識】

"魔具"

魔力が込められた物体。

使用者の魔力と共鳴することでその効果を発する。

祈りや勇気などの深い感情と重なることで、無意識的に魔具となることも多い。

魔具を意識的に作れる技術者は少なく、その多くは王族直属の魔具工芸人として雇われている。

宗教的な意味合いも強く、ヴィーヴル教は魔具が有名で多くの祭典で魔具が用いられる。

魔具は使用者にもそれなりの技術が必要である。


※現存するニヒリスター家で魔具を使用することができるのはリズとおばさまだけである。

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