回復
薄暗いベッドの上で目を覚ます。
確かガンドルヴァルガさんの部屋に行って、部屋に戻ってきて、薬を飲んで。
やっぱり眠たくなる成分でも入ってるんだろうか。
「あら、失礼いたしましたナズナさん。おはようございます」
ゆっくり静かに扉が開いてアリシアさんと目が合う。
「おはようございますアリシアさん」
「まだ眠ってらっしゃるかと思いまして」
「えと今は朝ですか?」
「はい。まだ少し早い時間なので他の皆さんは眠ってらっしゃるかと」
「そうですか」
「身体の痛みはどうですか?」
「そういえばいま起き上がっても背中痛くなかったです」
「もう大丈夫そうですね。包帯を取りましょう」
そう言うとアリシアさんがベッドに腰掛け私の腕の包帯をほどく。
白い包帯の内側には薬草だろうか。乾燥した細かい緑色のものがびっしりと付いている。
左手から始まり、右手、右の太もも、左のすねと続く。
「少し明るくしますね」
アリシアさんが両手で輝く玉を作って、エルメルト、というと眩しい程に輝く玉が宙に浮いて天井まで飛んでいって止まる。
上から降り注ぐ光で部屋全体が明るくなる。
「では残りも取りますね」
胸部に巻かれた包帯がほどかれ、後ろを剥くように言われ、壁を向いてアリシアさんに背を向ける。
ぺりぺりと背中に貼られた何かが剥がされて、すーすーする。
「後もないし大丈夫そうですね」
「あの、そういえば私って昨日包帯だけで外を歩き回ってました?」
「そういえばそうですね」
やってしまった。けど誰も気にしてなかったような気もする。
「城には女性しかいませんから。誰も気にしていませんよ」
「ガンドルヴァルガさんがいるじゃないですか」
「あー。小さな子供の裸なんて見慣れたものですよ。何も気にしてなかったでしょう?」
「それは…はい」
「朝食の前にお風呂に入りましょう」
私は青いケープを羽織って、手袋をはめ、アリシアさんに連れられて部屋を出る。
左に歩いていくと、トイレの手前辺りにお風呂があるようだ。水回りはまとめてあるのかな?
「こちらが浴場です。この脱衣室で服を脱いで籠に入れて、あちらの扉が浴場です。どうぞ」
「わかりました…あの、アリシアさん、は入らないんですか?」
「すみません。お風呂は苦手で。それとミトンを取ると危ないのです」
申し訳なさそうな顔でアリシアさんは扉のところに立っている。私の身長じゃ浴槽がギリギリじゃないかと思って質問する。
「あの私の背丈で浴槽の深さは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。段々になっているので浴槽の中心は深くなっていますが縁の方なら背の低い方でも問題なく浸かれます」
「湯船の中で身体を濯げばいいですか?」
「大きなお風呂は初めてですか?」
「はい。その、それで一緒に入っていただけないのかなと」
「少々お待ちください」
どこからか鱗みたいなものを取り出すと扉を開ける。鱗みたいなものが手のひらから宙に浮いて通路に飛んでいってしまう。
少しすると、ボサボサの頭を掻きながらフィシェルさんが入ってくる。
手にはさっきの鱗みたいなものを持っている。
「んだよ。起こしやがって」
「おはようございます。ナズナさんにお風呂の使い方を教えてあげてくれませんか。私はこれなので」
アリシアさんがフィシェルさんにがおーって感じに肘を曲げて大きなミトンの両手を上げる。
「はぁ、しゃーねーか。ほらいくぞ」
下着とブラっぽいものをぽぽいと脱いで私の手を引いてくれる。
中に入ってすぐの壁は噴水の様になっていてお湯が流れ続けている。その壁に沿って椅子が並んでいる。その椅子の上には桶が置いてある。
「まずここで身体を先に洗うんだ。あんなでっけー風呂に石鹸入れたらもったいねーからな」
フィシェルさんが私を椅子に座らせて石鹸を泡立てて私の髪の毛を洗ってくれる。
目に泡が入らないようにぎゅっと目を瞑る。
「あの石鹸はどこに?」
「あー全員自分の好きなやつを使ってるからな。後でアリシアにもらっとけ」
「わかりました」
全身が甘い香りに包まれいく。お菓子の香りなんだろうか。
そして上からのバシャっとお湯がかけられる。
そして頭をタオルでぐるぐるにされる。
ちょっと頭が重い。タオルどこから取ったんだろう。
「髪の毛まとめてやったから。風呂に入ってこい。ウチも洗ったらいくからよ」
「はい」
奥に進むと大きな大きな浴槽がある。四つの竜のような頭からお湯が浴槽へと流れている。
恐る恐る足を入れて降りてみるとお湯は腰くらいの高さだ。足が熱で少しじーんとする。
これなら溺れずに浸かれそう。ゆっくりと腰を降ろして湯に浸かる。
暖かくて気持ちいい。
「よっと。ふー」
フィシェルさんも湯に入ってくる。
すらっとしてるけど出るとこは出てる。モデル体型とでもいうんだろうか。
そういえばレイゼリアさんも似た感じだったろうか。
レーシャさんはでかかったなぁ。アリシアさんもレーシャさん程ではないけど大きかった。
メイドさんはみんな大きいんだろうか。
「んだよ。どーかしたか?」
「いえ、なんでもないです」
じろじろ見てたら失礼だと思い、視線をそらす。
すーと水滴が頬から顎に伝ってぽたっと湯に落ちる。




