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恐怖日和  作者: 黒駒臣
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じいさんに聞いた話

 若い頃じいさんは遊び人だったという。

 山一つ越えた町で遊んだ帰りの山道のこと。

 夜空は晴れ渡り満月が煌々と照っているので、深夜にもかかわらず辺りはぼんやりと明るかった。

 昔は地道で周囲に熊笹など生い茂っていたが、その笹薮が風もないのにがさがさと音を立てた。

 知らぬふりして先を急ぐと今度は青白く発光するものが藪の中をすうっと進んでくる。

 後ろからカンカンという鐘の音も聞こえ始めてきた。

 こんなところにそんな光も音もあるものか。自他ともに認める豪胆なじいさんは狐狸が自分を化かそうとしているに違いない、騙されてなるものかと鼻息も荒く歩を進めた。

 やがて鐘の音が聞こえなくなり、草むらの気配も消えた。

 家に到着すると眠っている家人の邪魔をせぬようそっと部屋に入り、風呂にも浸からずそのまま寝た。

 翌朝、家人に山道での出来事を話すと昨日は雨が降っていてどこにも出掛けなかったじゃないかと笑われた。

 そういえばそうだ、じゃすべて夢だったのかと自分で自分を笑ったが、朝風呂に入ろうと服を脱ぐと体中に歯形がついている。

 家にいながら狐狸に化かされたのかと考えるも、その歯形、どう見ても人のそれにしか見えない。家人の誰かが今でいうドッキリを仕掛けているのかと疑ってはみたが、その後、このことに触れる者は誰もなく、いまだにあれは何だったのかわからないと、当時小さかった俺を膝に乗せじいさんは語ってくれた。

 だが、俺の生まれる前から両親どちらのじいさんもすでに鬼籍に入っていたし、親類にも近所にも該当する人間はおらず、俺にその話をしてくれたのがいったい誰だったのか、今もってわからない。



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