魔法戦闘 見学(1試合目) 後編
バトル回一旦終了です。
春香、春明姉弟の目の前に辿りついた沙紀は腰に下げている剣をもとの大きさに戻し、それを相手に向けた。
「っ!」
春香と春明は意表を突かれ反応ができないでいる。
「うおおー!」
と掛け声とともに沙紀は春明の頭を剣で狙った。
その一発が春明に中る。
その流れで春香にも攻撃を中てようと試みるが春香が例の不可視の鉄片を出してそれを防いだ。
「っち。やっぱりうまくいかないか。だがあまい!」
沙紀は聖水で濡れた左手でその鉄片に触れた。
「元の大きさに戻れ」
そう呟くと春香が操っていた鉄片が5㎝×5㎝の大きさになり沙紀の手中に収まった。
春香は鉄片に<規模変換魔法>、<上級魔法>である<飛翔魔法>、<擬態魔法>と、3つもの魔法を重ねがけしていた。そこに沙紀の魔法が入り春香の魔法の集中と魔法のバランスが崩れたためだ。
それから沙紀は一発、剣で春香に追い打ちをかけた。
それを春香は銃身で防ぎ
「ッ!やられた!これが目的だったのか!春明!!」
と叫んだ。
それを聞いた春明が慌てて鉄片を懐から取り出そうとしたが、すかさず沙紀は翻り手を伸ばした。
沙紀の攻撃が緩んだのを見逃さず春香が攻撃を仕掛ける。それが何発か中るが沙紀は気にせずに春明の鉄片を取り上げ後ろに駆け抜け2人から距離を取った。
「しまった。距離を取られた!!」
沙紀はそのチャンスを逃さず剣をキーホルダーの形にし、銃に持ち替え攻撃を仕掛けた。
それに対して春香、春明姉弟も魔法と銃で応戦する。
しかし、先ほどと同じように沙紀は魔法で風に乗り葉の様に舞うのでとらえきれない。
しばらくこの攻防が続いていると
「ちっくしょー!!」
「キャー」
と寛太、佐奈、未来、が攻防を展開している方から叫び声が聞こえてきた。
「水よ我に纏い、従え」
寛太は沼に聖水を投げ入れ右手を突っ込みそう唱えた。すると沼の水が蠢き何本もの束となり彼の周りを蛇のように纏わりついた。
そして立ち上がり佐奈、未来の方を向く。
(どうせ、今の詠唱でばれただろ)
それに合わせたように佐奈と未来がこっちを向いた。
「間に合わなかったか」
「どーする?逃げたほうがいいよね?」
「たぶん無駄だな・・・。あの位置取り、やってくれる、応戦するしかないみたいだな、行くぞ!」
「あいあーい」
そう言い2人は寛太に向けて走り出した。
一方、寛太は落ち着いた様子でもう一本の剣をもとの大きさに戻し、2本の剣を彼に纏わりついて宙を蠢いている水蛇達にのせ、目を瞑った。すると、水蛇は水を得た魚のように動きだした。
それはまるで剣舞だった。水蛇により、2本の剣が宙を舞う。見る角度によっては沼の水が光ったり、見えなくなったりとして、見る者を魅了する。
そこに、佐奈と未来が駆けつけ攻撃を寛太に与えようとするが剣舞に阻まれる。そして、逆にダメージを負った。
「チッ!間に合わなかったか」
と佐奈が焦る。
そこにまた水蛇の咢が襲い掛かる。
「しまっ!」
水蛇に噛みつかれ動きが制限され、そこにさらに剣舞が襲いかかる。
「うわっ!」
それを見て未来が今助けるから!と水蛇を切りにかかるが、その剣は水蛇をすり抜けていく。その間にも佐奈はダメージを受けている。また、別の水蛇が未来に襲い掛かる。
「ダメっぽいなー。じゃあ今度は」
と聖水で左手を濡らし水蛇に突っ込み目を瞑る。すると、佐奈に噛みついていた水蛇が弾ける。
それにより佐奈は水蛇の拘束から逃れたが、今度は未来が水蛇につかまり動けなくなる。そこに剣舞による攻撃が襲い掛かる。
この時に佐奈は寛太が呻いたのを見逃さなかった。
「よし、魔法妨害は効くらしいな。しかも、相当集中を魔法に割いてると見た!しかもシンクロ率が高い」
「そのようだねー。シンクロが高すぎて今の一撃だけでも相当堪えてるみたいだね」
とダメージを受けている未来が佐奈に答えもう一度目を瞑る。すると今度は佐奈を抑えていた水蛇が弾けた。
「ッぐ!」
と寛太が呻いた。今度は誰の目から見ても明らかだった。
しかし、その苦痛を感じさせない動きで水蛇は次から次へと彼女たちに襲い掛かる。
佐奈と未来はそれらを躱しながら、また時には手を突っ込み破壊しながら寛太に近づいていく。
寛太の前に2人は辿り着き、剣で寛太に襲い掛かる。
そこで初めて寛太が目を開けた。そして
「蛇の毒を浴びすぎたな。俺の勝ちだ」
と笑った。
「へ?」
と2人して間抜けな声を出す。剣は寛太に中る直前で止まった。その上、体が動かない。
そこに水蛇の咢と剣舞が襲い掛かる。
何もできずに2人は水蛇の餌食となった。
「ちっくしょー!!」
「キャー!」
寛太は彼女たちのHPが0となったことを確認しその場に膝をついた。
(くそっ!頭痛ー。動けね・・・。やっぱ、10分近く使うとこうなるか・・・。実戦では使えないな。後は頼んだぞ、春香、春明・・・)
と考えたところで力尽き地面に倒れた。
3人は彼女らの声を聞きHPの確認を急いだ。
ゲームの残り時間12分
黒 赤
寛太 HP194(気絶) 沙紀 HP164
春明 HP 86 未来 HP0(リタイア)
春香 HP 97 佐奈 HP0(リタイア)
得点 739 得点 523
「うそでしょ!?残り12分でこの姉弟を倒しても追いつかない・・・?」
と沙紀は呟き呆然とした。
そこに春香と春明の銃弾が襲い掛かる。
それを剣ではじき、盾で守り、風に乗り躱す。
(これは、戦線離脱して、気絶してる彼をリタイアに追い込むしか手がない・・・!でも、それだけでも・・・)
沙紀に攻撃を仕掛けながら二人は話し合う。魔法も使い、相手に反撃の余地を与えない。だいぶ沙紀の動きにも慣れてきた。
「姉ちゃん。これってこのまま12分踏ん張れば僕たちの勝ちだよね」
「そうなるね。でも、位置的にこれはまずいよ」
「そうだね。逃げれば勝ちってわけではないんだよね。ここで畳掛けないと」
「でも、鉄片も奪われ、銃による攻撃も中らない。どうしたらいい?」
「そーだねー。だけど、カンタをリタイアに持ち込んでも、彼女勝てないよ?どう頑張っても13p足りない。つまり、こっちに攻撃を中ててからじゃないと離脱しないんじゃないかな?」
「つまり、攻撃を12分間当たらなければいいわけ?」
「そういうこと、正確には12分より、短いね。だって、カンタのところに行って彼をリタイアに持ち込むためにも時間を食うからね」
「そのためには」
「これだな」
春香と春明はキーホルダーの大きさの剣を左手に握り目を瞑った。さらにイメージを正確にするために呟く
「剣よ壁になれ」
すると、剣がどんどん巨大化していく。
その過程で手から剣を落とし横に2人して突き刺した。そのまま剣が大きくなり、フィールドの端と沼に両端がぶつかる。高さはあまり高くないが、かがめばすっぽりと2人を隠すことができる。
後は、この影から魔法や攻撃を繰り出すという算段だ。
この時点ですでにあれから3分が経過していた。
沙紀はまた、彼女たちに近づく算段を練っていた。
(あのように影に隠れられてしまっては攻撃が中てられない。さっきのようにあの剣をもとに戻すしか・・・)
しかし、姉弟は沙紀が近づくことを警戒しているため、魔法と攻撃に予断がない。しかも、銃撃でさえも沙紀の誘導に用いている。2人はこれ以上沙紀がダメージを受けるのを嫌っているのを把握しているからだ。
(だが、さっきのような強硬手段は使えない。どうすれば・・・!)
刻一刻と制限時間が近づいてくる。
そして、沙紀は何もできないままタイムアップとなり、ゲーム終了のブザーが競技場に鳴り響いた。




