魔法戦闘 見学(1試合目) 前編
ここからの2話は主人公であるユウト達の出番はありません。
彼らの物語以外興味がない方は読み飛ばしてください。
ピッ、ピッ、ピッ、ピー!!
試合開始のブザーがフィールドに鳴り響いた。
しかし、すぐに選手たちは動かずに互いに相手チームの出方をうかがっている。
黒い防具をつけている北側のチームは3人で何かを話し合っているのがスクリーンに映っている映像からわかる。彼らは南側のチームに目を向けながらも口を動かしているのが見て取れた。
「ハルカ、ハルアキ、いつも通りに行くぞ!」
と寛太はメンバーに声をかけた。
「任せて!私とアキで一人を抑えればいいんでしょ?」
「任せたからな。いつも通り相手の要の選手を狙え。今回は真ん中にいる女だ。彼女は予選を見る限り、魔法が多彩でこっちを錯乱する能力にたけていた。それに、彼女は他の2人を前衛にして後衛として少し離れたところから援護することが多いからな。セオリー通りなら、狙い易いだろう」
「ん。オッケー。じゃあ。僕は姉ちゃんと2人で彼女の援護を無効化するように動けばいいんだね?」
「そうだ。その間に俺は2人をきっちりと倒してやる」
「頼りにしているよ。カンタ。お前が得意な戦法は1対2向けだからな」
「また、相手が3人固まって動いてきたときはプランBに変更ってことで良い?」
「そーだな。向こうも俺らの試合を見ているだろうしな」
一方、赤い防具をつけた南側のチームは北側と同じく相手に注意を向けながら会話をしているが、その数は北側よりも少なく見える。
「あっちはいつもの試合の通りに来るだろう。その場合は1人を3人で抑え込むと見せかけて2人の方のポイントを取りに行く。それでいいか?」
と真ん中にいる沙紀が佐奈と未来に尋ねた。
「うん。それがいいかな?だって、彼の魔法多人数に対して強そうに見えたし・・・。でも、そのためには相手が動かないことには何も始まらないよね?」
「そうだね。作戦を変えてくる可能性だってあるし」
「その場合は、こっちがいつもの手を使う番だね」
「ああ、そうだ。どっちにしろ相手の出方を見てから動くぞ」
先に沈黙を破ったのは黒の防具をつけた3人だった。ゲーム開始から2分ほどたった頃である。時間経過はスクリーンの右上に映し出されている。
春香と春明が瓶に入った何かを握り目を瞑ると彼らの体が宙に浮いた。そしてそのまま沼を越えていく。
寛太は自身から見て右側を通り沼を迂回するために動き出した。
それを見て赤の防具をつけた3人も動き出す。寛太にあわせ、沼の右側を沿って走りだした。
「やっぱり、まとまって来るか。2人相手ならいいが、3人だと辛いんだよなー。精度の問題とかあるしなー・・・」
と寛太はぼやいた。
春香と春明姉弟は3人が固まって動くのを見て、一人を抑えるのは難しいと判断して次プランのために進路を左に変えて寛太との合流を目指した。
それを見て沙紀が真ん中にあるH型の沼へ瓶の中の液体を投げ入れ左手を沼に突っ込み何かを呟く。すると沼がの水が隆起し姉弟に襲いかかった。
少し緑がかった沼の水は姉弟を拘束しようと蠢いている。
「チッ!これじゃ近づけないじゃない!」
と2人は水隗から距離を取り後退した。
ちょうどその時、残りの3人の戦いの火蓋が切られた。
寛太が腰に下げているキーホルダーを右手で握り何か呟く。
すると右手に剣が現れる。
一方、佐奈と未来もキーホルダーを握りしめ一瞬目を瞑る。
すると、やはり彼女らの手にも剣が現れた。
「おっりゃーー!」
と叫び寛太が剣を横に振った。
一方、姉弟はスタート地点まで下がり、作戦を練り直していた。
沙紀が追撃してくる様子はない。沼を挟んで2人のことを冷静に観察しているようだ。
「どうする?姉ちゃん」
「うまく1対2に分かれてくれたんだから、このままこの子を抑えてもいいんじゃない?」
「そうだよね。そうしよう。じゃあ、いつも通り魔法の担当は僕が攻撃で姉ちゃんが防御。そして、ポイントを取るのは捕まえてからってことで」
と言い彼は聖水を右手に振り掛けるて目を閉じた。すると右手の周りに空気が渦を巻き集まってくる。
それを見た沙紀は彼に水隗をぶつけ魔法の完成を邪魔しようとした。
彼から見て右から水隗が襲い掛かってくる。しかし、彼は魔法を完成へと導くのをやめない。
そして、彼に水隗が触れる瞬間どこからともなく現れた鉄片が彼を守ったのだ。
「ッ!!」
「へへーん。気づかなかったでしょ」
と驚いている沙紀に春香が自慢げに笑う。
その間に春明の魔法が完成し空気の塊が沙紀に襲いかかった。
彼女はそれを左に避ける。しかし、隣で空気の爆ぜる音がし、次の瞬間すごい風圧が彼女を吹き飛ばした。
とっさに彼女はポケットから葉っぱを取り出し「風に流され舞え」と呟く。
すると彼女はまるで風に舞う葉のようにゆらゆらと風の中を舞い、ゆっくりと地面に落ちた。
そして、立ち上がるとそのまま佐奈達が戦っている方とは逆の方向に走り出した。
寛太は攻撃をしつつも後退しながらスタート地点の沼の方を目指していた。H型の沼に近づこうとしても二人に阻まれ近づくことができなかったからだ。この間に左手に2撃、右足に3撃、頭に2撃、胸に1撃くらい計43pを失っていた。
実際、攻撃が中ったとしても痛みなどの現実的なダメージはない。防具により、それらが軽減されている。しかし、それは指定された武器に限ってのことである。だから足にダメージをくらっても問題なく歩けている。なので魔法での攻撃が意味を持ってくるのである。
(やっぱり、沼に近づかせようとはしないか。俺の魔法、やっぱばれてるなー。どうしよう、スタート地点の沼まで下がったとして、彼女たちがついて来てくれるかどうか・・・)
と考えながら、彼は左右から来る剣をしゃがんで躱し、佐奈の足に向けて剣を振るった。
寛太の攻撃が佐奈の右足に中る。
「イッ!魔法がなくても十分強いじゃない」
今の攻撃で、佐奈は計26pのHPを失った。未来もすでに21p失っている。
「これはほっといたら脅威になるねー。どうする?」
「沼に近づく前に倒し切るしかないでしょ!もっと上げてくよ!」
「りょーかーい」
と2人は作戦を変更し寛太のリタイアを目指すことにした。
魔法による攻撃から逃げた沙紀は焦っていた。本来の作戦では沼を挟んで見える2人を3人で襲うはずだったのにいつまでたっても援軍としてやってこないからである。
(あれか?思った以上にアイツは危険だと2人が判断したのか?それとも・・・。いや、考えるのはよそう。助けに来ないなら来ないでここで2人を仕留める)
彼女は先ほどから続いている爆風をかわしながら姉弟を倒す作戦を考え始めた。
「うーん。なかなか中らない。近くで爆発してもひらひらとかわされちゃうし・・・」
「そうね。でも作戦通りなんだからいいんじゃない?別に倒せって命令じゃないんだし」
「でも姉ちゃん。こっから見る限り、カンタの奴、沼に近づけなくて結構押されているよ?大丈夫?」
「それもそうね・・・。でも、少しずつだけど後退しながら沼に近づいてるから大丈夫じゃない?」
と姉弟は沙紀への攻撃は緩めずにこのまま彼女を抑えておくことに決めた。
ここまでの試合のポイントの推移(試合開始20分現在)
黒チーム 赤チーム
寛太 -43p 沙紀 -0p
春香 -0p 佐奈 ―26p
春明 -0p 未来 -21p
得点 47p 得点 43p
また、いくつか改稿があったので、活動報告の確認をお願いします。




