入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント
3限目の魔法学が終わりの鐘が鳴ると藤崎が教室を去り、代わりにHR担任の橘が教室に入ってきた。
「皆さん、お揃いのようですね。それでは、配布物を配ります。はい、秋雨くん。これを、皆さんに回してください」
と言い、橘は緑色の冊子を夕斗に手渡してきた。
夕斗は言われた通りに、1冊自分の分を取り、4冊後ろに、残りを明に回した。
表紙を見ると『入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント』と書かれている。
「皆さん、いきわたりましたか?今回、皆さんにはこの『入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント』の本戦トーナメントの見学をしてもらいます。日程は冊子にも書いていますが、今から約1ヶ月後の1月24日土曜日から予選が始まるため、2月14日土曜日、15日日曜日が本戦となります。場所はこの校舎の地下と屋上競技上に計三試合場用意していますので、好きな所で見学をお願いします」
冊子を開くと表紙の裏に日程と開催場所が書かれていた。その次のページからルールや注意事項が事細かに記載されている。また、対戦の組み合わせも載っていた。トーナメントと言いつつも、予選はリーグ戦のようだった。
「なお、今回の見学に基づき課題を提出してもらいます。皆さん冊子の一番後ろを開いてください」
言われた通りに塾生達は冊子の後ろを開く。そこには一枚の紙が折りたたまれ入っていた。
「そちらの紙に書いてあることをレポートにまとめ提出してください」
その紙には次のことが書かれていた。
・2回生が魔法を発動する前にとっている行動を観察しまとめよ。
・<四大元素魔法>、<規模変換魔法>、<上級魔法>の差を見てどのように感じたか答えよ。
塾生達が内容を確認し終えるのを待ってから、橘は
「今回の見学の目的は魔法を実際に扱う前にどのようなものか把握し実感していただくこととなっています。話は以上ですが何か質問はありますか?」
と言った。
「本戦の見学とさっき言っていましたが、予選の見学もできますか?」
と1人の塾生が質問した。
「はい、可能です。1月24日から、土曜日と日曜日を使い計5日間が予選となっています。なお、6日目の2月8日は本戦の組み合わせの抽選となっておりますので試合は致しません。また、予選は試合時間が本戦の半分であるため、本戦より動きがあるのが特徴ですね。ほかに質問はありますか?・・・・・・。無いようですね。では、これで連絡事項はこれで終了です。皆さんお疲れ様でした」
帰り道、電車の中で夕斗と桃は『入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント』の冊子のルール欄を眺めていた。ちなみに他の班メンバーともさっきまでこの『トーナメント』について話していたが、みんな途中で降りてしまった。
「ふーん、3人1組で30チームということは、午後の部の塾生だけでなく午前と深夜の部も参加するんだね」
「だから予選の1週間前から参加するクラスは休講なんだろう。これは、試合が昼間だから各部にばらつきが出ないようにするための処置なんじゃないかな?僕達も本戦1週間前から休講だから、他の部の1回生も見学を実施するのかもしれないね」
「楽しみー!他の分校の塾生達にも会えるかな?」
「うーん。この『トーナメント』の参加者はこの塾舎の塾生だけっぽいね。だから会う機会はないんじゃないかな?」
「そっか・・・。残念。最年少の子に会いたかったなー」
「確かに、会ってみたいな・・・。そういえば、最初桃ちゃんが最年少だと思ったんだよなー、僕。お、そろそろ駅に着くね。聞きたいこともまとまったし、赤根さん辺りに聞いてみる?」
「そうだね。明くんと茜ちゃんの疑問も解消してあげないとね」
と2人で考えることをやめ、直接知っている人に聞こうと結論付けるとちょうど富川駅に電車が着きドアが開くところだったので、慌てて2人は電車を降り、並木荘に向かった。
「たっだいまー!うー、寒い寒い・・・」
と声を上げ並木荘に桃は入って行った。
「ただいま」
と夕斗も彼女に続いて入った。すると
「仁さーん!いるー?ちょっと聞きたいことがあるんだけどー」
と2階に向かって桃が声を上げていた。
しかし、2階からは返事が返ってこなかった。まだ、帰っていないようだ。
代わりにリビングへの扉が開き唯が顔を出してきた。
「うるさい。桃。赤根に用なのか?あいつ、今日帰ってくるの遅いぞ」
「そっか。それじゃあ唯さんでいいや。質問したいことがあるんだけど」
と桃は唯にお願いすることにしたが
「やだ。めんどくさい。奏に頼め」
と言い、彼女はリビングへ戻ってしまった。
それを追いかけリビングに入ると、彼女は炬燵に潜りこむように横になるところだった。その隣にはいつものように奏が座って本を読んでいた。
「おかえりー。夕斗くん。桃ちゃん。聞きたいことって何かな?」
「ただいまー。あ、聞こえてました?」「ただいま。奏さん」
「そりゃ、あれだけうるさければね・・・」
「ごめんなさい」
と素直に桃が謝った。夕斗にとっては驚きである。
「いいよ。気にしてないから」
「私には謝らなかった。惰眠邪魔したのに」
「はいはい、そう拗ねないの」
と奏が唯の頭を撫でた。すると、彼女は満足したようにまた眠りについた。幸せそうである。
対照的にそれを見ていた桃は一瞬だが少しさびしそうな顔をしていた。
「それで、改めて、聞きたいことって何かな?」
「『入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント』についてです」
と夕斗が答えた。
「あー。もうそんな時期か・・・。それで具体的に何が聞きたいの?ルールとかはもらった冊子に書いてあったでしょ?」
「ルールについては、見て学ぶこともあるから別に質問することはないですね。それで、質問なんですが帰る前に場所の確認をと思って地下と屋上の競技場を見てきたんですよ、でもいわゆる広い体育館みたいで、どう考えてもあそこが草原や森林になることはないと思うんですけど、どうするんですか?」
『入塾期別夏期第二回魔法サバイバルゲームトーナメント』のは四方100メートルのフィールドで行われる。そのフィールドは4種類あり、草原、砂漠、森林、沼地、となっている。夕斗達は競技場に森や砂地があるものだと思ってそこを訪れた。しかしそこで見たのは少し大きい一般の体育館内だった。これを見れば誰でも疑問に思うだろう。
「そうだねー。君たちはもう<規模変換魔法>について座学で習っているよね?」
「うん!」「はい」
「それの応用をつかっているんだよ。具体的にいうと、小さく作ったフィールドを<規模変換魔法>で大きくするんだよ。その維持に1フィールド魔法師が2人必要だね。ちなみに使う砂や木は本物を小さくしてからフィールドを作るんだ。だから、サイズを大きくしても砂粒が大きくなるわけではないんだよ」
「へー。そんな使い方もあるんですね」
「実際さ、今の世の中、魔法は秘匿性が高いから、UFMとの戦闘や要人の護衛以外にあまり使わないからね。仕方ないよ」
「あと、この持ち物に書いてある処理済って何?」
と桃が冊子の文字を指して奏に尋ねた。
そこにはこう書かれている。
持ち物について
選手は次のものを持って参加することができる。
・武器(刀型、槍型、銃型)いずれもこちらで指定したもので処理済みの物。
最大2つ持つことを許可する。
・水、ライター、砂、鉄片(すべて処理済みの物)
・空き瓶、聖水、ナイフ
・その他魔法に用いる物
「それは魔法を使うための処理のことを指すんだ。たとえば、このライターなんかいい例だね。ライターの油に聖水を加えたものを持ってきていいってことだね。ほかに何か質問は?」
「んー。あとは『トーナメント』を見るにあたり、何かコツのようなものはありますか?」
「ない。今回の見学は感じることが大切だ」
と急にさっきまで眠っていたはずの唯が答えてきた。
「唯さん・・・。眠ってなかったんですね?聞いてるんだったら答えてくれればよかったのに」
「私よりも奏のほうがいいと思っただけだ。しかし、今の質問には私が答えたほうがいい。奏は優しいからな」
と唯は優しく笑った。彼女ではレアな表情である。
「?」「?」
2人は頭に疑問符を浮かべ首を傾げた。
一方奏は苦笑いしていた。
「私は部屋に戻る。寝る」
そう言って彼女はリビングを去って行った。
「ははは、唯には敵わないな」
とぼやき、奏もリビングを出て行った。
「よし、大体聞きたいことは聞けたね。僕達も寝よう。桃ちゃん」
「うん・・・。そうだね」
と桃は浮かない顔をして頷いてリビングを後にした。




