仲間
入塾式の翌日、夕斗と桃が塾の教室に入ると、すでに黒板には昨日言われた班編成が貼られていた。
もう大半の塾生が来ており、すでに班のメンバーと挨拶や会話を交わしている。そんな中
「お、来たな。ユウト、モモ。こっちだこっち」
と教室の後ろで夕斗たちを手招きしている塾生がいたので、夕斗達はそこへと向かった。
「おう、来たな。オレは千道明。これから、同じ班のメンバーだ。よろしく」
「あれ?千道さんって僕の隣の席でしたよね?」
「ん?あ、あー。この今オレが腰かけている席の奴も班員でアユミっていうんだ。昔からの知り合い。そして今トイレに行ってる。それと、オレのことはアキラでいいぜ」
「わかった。明」
「よろしくね!明くん!」
「おう。あ、戻って来た。おーい」
明が教室の入り口に向かって声を掛けるとそこにいた1人の男子塾生がコチラにやって来た。
「こんばんは。夕斗くん。桃ちゃん」
「こんばんは。若里さん」
「こんばんは。歩ちゃん」
「桃ちゃん。ボクはあゆみじゃなくてあゆむって呼んで欲しいとお願いしたハズなんだけど・・・。聞いて無かった?」
「ん?ちゃんと聞いてたよ。歩ちゃん!」
そうは言いながらも、桃はまた彼のことをアユミと呼んだ。
「ごめん。こうゆう奴だから気にしないで。かまってたら切りないから」
それに対し、夕斗が言うと
「えー!ひ、酷いよ夕斗くん」
と桃は講義するが
「だってそうでしょう?僕に対する態度を考えると」
「う・・・ご、ごめん・・・。反論が思いつかない・・・」
と反論ができずに落ち込んだ。
それを見ていた明が
「で、決着ついた?」
「はい」「うん」
「それは良かった。あと他に2人班員がいるんだけど ・・・彼女達はいないな。もうそろそろ始業の時間だからそれぞれの席につくことにして挨拶は諦めるか。じゃあ、またあとでな」
そう言い明は席に戻っていった。夕斗達もそれに倣い席に戻った。
その間に何人かの塾生が教室に入ってきて、黒板を確認していた。
それからほどなくして始業の鐘がなり、クラスの皆が席についた。
そこにHRの担任が入ってきて、教壇にあがった。
「みなさん。こんばんは。まず初めに、黒板に貼ってあるメンバー表を確認しましたか?これが、これから2年間グループ行動をする際の班となっていますのでまだ確認していない人は後で確認をお願いします。みなさんにはこれから2年間をかけて、魔法の知識と歴史についての勉強をしてもらいます。最初の半年はほとんど講義となります。そこで、その講義の担当教員を紹介したいと思います。みなさん、教室の入り口を注視してみてください」
と彼は促した。それに習い、皆入り口を見る。すると
「あれ、誰かいるぞ!?」
「え、うそ。ただ入り口があるだけでしょ?」
「あ!」
「え?なになに?」
と塾生達が口々に騒ぎはじめた。何もない空間から女性が姿を現した様に何人かの目に映る。それを体験した彼らが声を上げたからだ。
この現象を夕斗は以前体験している。クリアースに保護された時に見た赤根の登場である。
したがって、夕斗は比較的速く彼女を認識することができた。そして
「え・・・!?藤崎さん!?」
と驚き、つぶやいた。それに対し
「ん?あの人と知り合いか?」
と隣に座っている明が聞いてきた。
「え?あ、うん。僕がココに通うための手続きとかしてくれた人だよ」
「ふーん。そうか。今の担任の口ぶりからだとあの人が講義の担当らしいぞ」
「そうみたいだね・・・。というか、明はあんまり驚いてないね」
「だって、最初からあそこにいただろあの人。何で、しゃべらないでずっと立っているのかな?とは感じたけどさ」
「ん?最初からみえてたの?」
「あー。だから、みんながあんなに驚いていることに驚いてる」
「へー。僕はこれをやられたの2回目だったけど今回も全く分からなかったよ」
と会話をしていると藤崎が声を出した。
「皆さん。こんばんは」
この一言により、藤崎のことが見えていなかった人も彼女を認識した。それを確認してから彼女は教壇に移動した。
「これから半年間皆さんの講義を担当することになった藤崎鏡花といいます。よろしくね。何か質問があるときは何でも受け付けているわ」
「はい。先生」
と塾生の1人が手を上げた
「何かしら?」
「今の登場はなんだったんですか?」
「今のは擬態の魔法を使った演出よ。これからいろいろと学んでいくとあなた達もできるようになるわ。そのためにもみんなで半年間がんばろうと思ってるわ」
その説明を聞き、明が頷いているのを夕斗は見た。後ろを振りかれると他にも何人か頷いている塾生がいた。
それを見て藤崎は
「うん。今年は有能そうな子が多いわね。先生うれしいわ」
と、微笑んだ。
それから、藤崎は講義を始めた。
魔法塾初日の3時間が終わった。
内容はというと、初日だということもあり、藤崎の登場時に使った魔法の仕組みの解説や、担当教員(藤崎とHR担任)による、魔法の実演とそれに対する感想や意見の交換だった。
ちなみに、藤崎の解説によると、先ほどの魔法は<擬態魔法>という固有名があり、割とポピュラーな魔法らしい。
名前の通り、自分を周りと同化させ相手の目や認識をごまかす魔法である。虫や動物が使う擬態と同じくすぐに気づく人は気づくし、注意深く観察されると相手に認識されやすくなる。これが最初の塾生たちの反応の差となっている。
また、明や他の何人かの塾生が、藤崎が登場についての質問に対して答えたことに対して頷いていたのは、彼女が自身の魔法のことを擬態だと言ったことに対してだったようだ。
講義も終わり、昨日と同様周りがざわめきだしていた。
そんな中、夕斗と桃が荷物を整理していると
「よし、ユウト、モモ。あと2人の班員にも挨拶しとこうぜ」
と明と彼と談笑していた歩に呼び止められた。
「うん、いいよ。後の二人って初穂さんと家本さんだっけ?」
「そうそう、班員同士顔合わせしとこうぜ」
と、首を動かし明は彼女たちを探し始め
「お、いたいた。おーい。ヤモト、ハツミこっちだこっち」
と講義前に夕斗と桃にやったように彼女たちを呼んだ。
彼女たちも夕斗たちを探していたらしく、周りをキョロキョロとしていた。
「ん?あなたたちが私たちと同じグループの人?わたし昨日入塾式だったのに休んじゃったから自己紹介聞いてなかったのよ。だから誰が誰だかわかんなくて困ってたの。ありがと」
そう言いながら、髪をショートにしていかにも活発そうな女子が近づいてきた。その後ろを彼女とは対照的な長髪で物静かな女子がついてきて
「・・・」
彼女は何も言わずに頭だけ下げた。
「おう、どういたしまして。オレは千道明。アキラって呼んでくれ」
「ボクは若里歩。女の子の名前みたいだから、あゆむって読んでくれるとうれしいな」
「僕は秋雨夕斗と言います。年は14歳です。よろしくお願いします」
「私は花見桃って言います。で、私も14歳。よろしくー」
「アキラに、アユムに、ユウトくんに、モモちゃんね。よろしく―。私は家本茜。茜って呼んで欲しいなー」
と茜は明るく振舞い
「・・・。初穂百合。よろしく・・・」
と百合は短く自己紹介をする。
「この娘こんな感じだから、あなたたちのことを聞いても全然わからなかったのよ。だから、ホントさっきは助かった」
「・・・。ごめん・・・」
「いや、別に謝んなくてもいいよ。ユリ。これからみんなで2年間乗り切っていこー」
「うん。みんなで楽しく、仲良くいこー!」
と桃が賛同した。
こうして、夕斗達は互いに自己紹介を終え、話しながら帰路に向かった。
これから魔法塾の2年間が始まるということに希望と不安を抱えながら。




