まずはスレたて
某巨大掲示板をモデルとした部分がございます。苦手な方はご注意ください。
1 :勇者の名無しさん
神様「私の世界を救ってください勇者よ」
↓
勇者「夢にまで見た展開きたああああああああ」
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召喚
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勇者「俺が着たからにはもう安心です! さぁ! 共に魔王と戦いましょう!」
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王様「そんなよくわからない人に国の命運とか任せらんないし……そもそも一人とか無理だろ、常識的に考えて」
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大神官「え? 勇者って存在したの? 確かに精霊達の加護をありえない程受けてるみたいだけど、それって勇者の証になるの? むしろこれは危険人物として国が監視するべき人物なんじゃないの? うけるんですけど。勇者とか超うけるんですけど」
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国民「勇者とか……なにそれこわい」
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勇者「あれ? 俺が想像してた展開と違う……」←今ココ
2 :ニートな名無しさん
おっさん馬鹿言ってないで働けよ。
3 :会社員の名無しさん
妄想乙。
4 :自営業の名無しさん
妄想乙。
5 :大学生の名無しさん
今日のおっさんの「ぼくがかんがえたさいこうのトリップもの」スレはここですか。
6 :職人の名無しさん
お前等あんまりおっさんに冷たくするなよ。おっさん泣いちゃうだろ。
『レスサイド~会社員の名無しさん~』
「なに言ってんだコイツ」
画面に映る妄想に、俺は小さく失笑した。
ネットに長くいると、こういう輩はたまにいる。
その多くは自分が練りに練った妄想をぶちまけるだけの自己満足野朗だが、極たまに面白い神スレを誕生させる事がある。
今日は丁度暇をしていたところだ。特に面白いスレも無かった事だし、今日はコイツを煽って遊んで見るかな。
俺はそう考え、だらしなくしていた姿勢を正した。
『勇者サイド』
「これ絶対ネタスレ扱いされてるよなー……」
まぁ仕方がない。俺ももし向こうの世界でこんなスレを見つけたら、絶対に「妄想乙」とレスする自信がある。
異世界物はもう1000年も前から続く人気カテゴリーだ。しかもその中でも『トリップ物』ともなれば、一種の伝統芸能と言える。根深い支持を持つこのカテゴリーはしかし、扱うにはあまりにも難しいジャンルだ。
何故なら異世界物……特にトリップ勇者物は創作物の中でもタブー視されるご都合主義を多々用いるジャンルだからだ。これらは異世界召喚した後、ありえない程の召喚特典をその身に受ける事が多い。
ちなみに、俺もその内の一人だ。なんでも神様が精霊の加護を人間ではありえないくらいつけてくれたらしんだけど、前述にあるように、それのせいでなんだか危険視されている気がする……。
そもそもこの世界にトリップした場所も良くなかった。どうせなら大聖堂とかに神々しくトリップさせてくれればいいのに、あの神は何を思ったか、俺を城下町の外れに落としやがった。
そのせいで城まで自分の足で行く事になり、さらに門番に自分から「勇者です」と言う羽目になった。
門番、すごい不審そうな目で俺の事見てたなぁ……。むしろ門前払いされなかったのが不思議なくらいだったよな……。
あの後お情けのように連れて来てくれた神官さんが俺についてる『ありえないくらいの加護』を見て、大急ぎで大神官に掛け合ったんだよな……俺、あの門番さんと神官さんいなかったらただの頭のおかしい奴でしかなかったな……。
いや、勇者らしく精霊の加護MAX持ちだって分かった後でもあんまり扱いは変わってないか……精々変な奴から危ない奴にジョブチェンジしたくらいか。
はぁ……俺、どうなっちゃうんだろうなー……。
ゆっくり続ける予定です。完結までお付き合いいただければ幸いです。