5
本家から転送陣でフィールドの庁舎へ。キラキラした陣の輝きが落ち着いて見えるのはがらんどうの転送室。淡いクリーム色を基調とした壁紙。本当は係りの人がいるが私が来ると知って別室に待機してくれているのだろう。どれだけ人嫌いよ!っと言われても幼いときにびっくりした記憶が尾を引いているのでしかただない。
「お久しぶりです」そう挨拶してくれるのは、文官の日野さん。明華さんの代行をしていた有能さん。顔見知りなので怖くない。
「よろしくお願いします」頭を下げ挨拶すると頷かれる。
「最近、代替わりが多くて困っていました。優希さんは書類関係は余り明るくないですがお兄様である博正様だいらっしゃるので」書類関係は兄が担当する通達がすでに行っているのであろう。これで問題なく業務が出来るっと喜んでいる
「文官との顔合わせもありますので」案内された執務室は教室のように広く20人ほどの人間が書類を裁いている。一ヶ所書類が山積している場所がある。
「皆さん。管理官が着きました。一度手を」
「止めなくても良いです。耳だけ拝借致します。初めまして今回から管理官を任命されました石下 優希です。私はフィールドの方しかわからないので、書類関係は先代の兄が担当します。但し、管理官としての決定権は私が持っていますので何かありましたら相談に乗ります」日野さんの台詞を遮りそう挨拶すると「了解した」という声がフロア内に響く
書類が山積した席にいき山の上にある一枚に目を通す。水分量調整の依頼書だ
「ここにあるものすべてが水分量調整の書類ですか?」後ろに控えている日野さんに聞くと頷かれる
「兄。武官と水分量調整の方に挨拶してくるから目を通して分類分けしてもらえる、簡単か難しいかで。メンバーを見て分担してもらうから」書類を兄に押し付けて武官に挨拶するために移動する
広いホールに100人ほどの武官と10人ほどの技術者たち。ほぼ顔見知りです。
「お久しぶりです皆さん。今年度よりお世話になります優希です。時期が時期だけに早々からフルに動いてもらいますので。頑張ってください」そう言うと分かってる等と返事が来た。技術者は皆さん熟練なので難しいものでも任せられるか。弟子がいるみたいだからそこはちょい簡単のを混ぜておけば大丈夫だな。効率的に仕事を回せるようにか考えていると書類を持った明華さんが入ってきた
「先ほど依頼されました書類です」渡してきたのは分類表。相も変わらず仕事早いなそう思いながら仕事始めの腕ならしに良いものと早めに片付けないといけない案件を処理するために指示をだす
「早々ですが、手始めにこれから皆さんにやっていただきたいものがあります。熟練者ばかりでペイペイ私ぐらいだと思いますが、面倒な案件は二人一組でお願いします」
「人使いがあらいな」声も聞こえるが雰囲気は良いので無視気にせず全員に振り分けると武官も護衛につきドアの近くのひとから順番に現場に出ていく。私も自分用に数件ピックアップし現場に向かう。護衛は博昭さんの副官で光明さん。博昭さんは庁舎の守りをお願いした
水田のようになっている畑予定地。調節を希望している人たちの畑には小さな旗を立ててもらって目標としている。パタパタしている旗を確認し農家さんに肥料の種類を聞く。種類によっては水分が少しあった方がいいものとそうでは無いものがあるのでこの確認は意外と大切である。
「少し残してくれればいい。水分を必要とするのを作付するので」農家さんが希望しているので陣を調節して、ちょっと水っぽい?という感じで調節をして発動する。陣発動数分後終了。作付面積がそれほど大きくないから直ぐに終わる。
「終わりました。直ぐに耕すのは・・」陣の効果なのかよくわからないけど直ぐに耕すと畑が駄目になるので注意しておく。
「わかってます。ありがとう」笑っている。
「去年は全然で大変だったけど今年は大丈夫だな。頑張れよ」と声とともに見送ってくれる。苦笑しながらほかの場所に移動する。
次の場所は同じ条件の畑が4個ほど重なっている場所だったので、一個ずつ発動・終了。を繰り返すのが面倒くさいのでいっぺんに終わらせることとした。いわゆる多重発動である。使用する魔力は小スプーンひと匙程なので疲れることはない。ただ、処理能力が追いつくか追いつかないかの問題だ。脳みそを使いすぎて体調不良を起こす人もいるが、2徹で現場に出ていた時もあったので大丈夫だろう。足元に4個の陣を作成。腕を振るモーションで畑にスタンバイ。ちゃんと目標地点に行ったか目視確認してから発動する。
「なあ。すごいことしてないか?」発動中にそんなことを聞かれても答えれませんよ光明さん。普通は。このくらいの負担なら平気だけど
「何が?」視線を離さず聞き返す。
「多重発動と遠距離操作って俺の常識的には難しい部類だったはずだが」そう返された。
「光明さん。難しいのは陣を発動するのではなく。維持することです。普通は足元か頭上に発動するほうが維持・操作がしやすいので。後、複数発動すると脳みそが疲れてしまうので」説明すると納得したようで。
「普通はしない。ということか」
「そうですね。今回は同じ条件だったので多重にしていても脳の負担が少ないしこのくらいの負担量ならいつもの仕事でやっているくらいだから問題ありませんね」光明さんと話をしているうちに全て終わったので農家さんに挨拶して官庁に戻る。回収した水分は、浄化して飲み水として提供できるように細工したうえで水球にしている。ちっちゃい飴玉状のものが5個できました。
ほかの技術者さんたちも帰ってきてから報告をもらうとやはりというか、奥のフィールドが荒れているということでした。今日は時間の関係上近いところのみだったので、本格起動したら隊を編集して奥のフィールドに行かなくてはいけないようです。弟子がいる人を近場の調節要因としてフリーの人たちや自分を奥に派遣したほうがいいだろう。書類関係は兄に任せればいいだろうし。そうそう当主決定が必要な懸案事項なんて出たりしないだろうから。乾季になれば水が足りないところや逆にっというところが出てくるからそこの調節をしていかないといけないので、その分の水を今のうちに確保していたほうが利口的。水球をわざわざ高い値で買う必要がないようにしておかないと。と思いつつ売り損ねた自分の在庫を放出するか?などと考えながら兄のところへ
執務室ですごいスピードで書類をさばいたらしく山積していた書類が小さくなっている。
「そろそろ終わると思っていたよ。こっちも今日の業務は終わったしね。落ち着いてから有力者とか上の役職に挨拶回りをしようと思っていたけど、それは本家のメンツを借りてするから問題ない。ちょっと顔をだしてよろしくでいいから」あいさつ回りの説明をうけてから官庁を後にする。フィールドにはいつも使っている宿があるのでそこで寝泊まりする。宿といっても半年契約のアパートといった感じである。毎回使っているので契約もスムーズに終わる。